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ビジネス関係の時間軸――離職への対処

執筆 ロッシェル・カップ

世界を相手にビジネスを行うためには、英語力だけでなく、多様な文化を受け入れるためのグローバルマインドセット、つまり視野の広いもののとらえ方が必要となります。本コラムでは、経営コンサルタントのロッシェル・カップさんにグローバルマインドセット獲得のヒントを教えていただきます。

第13回 ビジネス関係の時間軸――離職への対処

技術移転についての考え方

あなたは、イギリスにある日系企業の子会社で、エンジニアリング担当の駐在マネージャーとして働いています。最近あなたは、現地採用された技術者のアンディーが会社を辞めるということを知らされました。アンディーに技術を伝えていくように会社から命じられていた日本人の技術者たちは、とてもがっかりしています。この1年間日本人技術者たちは、設計プロセスについて自分たちが知っていることをすべてアンディーに教えようと努めてきました。しかし彼の辞職によって、その努力と時間がすべて無駄になったと感じています。そして、なぜイギリス人はこんなにも簡単に会社を辞めてしまうのか、といぶかしく思っています。今回のことを踏まえ、今後どのように現地採用者を活用していけばよいでしょうか。

a)
現地採用者は簡単に辞めるので、彼らに技術移転はせず、技術を必要とするポストに日本人駐在員を入れる
b)
現地採用者の定着を推進するための対策を導入する
c)
現地採用者が辞める可能性があるということを理解した上で、技術移転の方法を変える

日本の労働市場は変わりつつありますが、いまだに同じ会社で長く働き続ける人が多くいます。日本社会には「終身雇用」の伝統がまだある程度残っているので、労働市場はあまり流動的でありません。一方、諸外国では労働市場の流動性が高く、同じ会社で長く働かないのが一般的な国も多くあります。

こういった違いは構造的なものですが、文化の反映だとも言えるでしょう。例えば、ビジネス関係の在り方には、文化によって大きな違いが見られます。下記のチャートで左側に位置している文化ほど、必要に応じてビジネス関係を頻繁に変える傾向があります。これらの文化的背景を持つ人は、仕事やサプライヤーを次々に変えること多いのです。このような文化では長いビジネス関係を持つことが想定されていないので、交渉方法は競争的(自分が勝てば、相手が負ける)で、ビジネス取引では経済的合理性が重視されます。

一方、右側に位置する文化は、安定した長期的ビジネス関係を好みます。これらの文化的背景を持つ人は、同じ会社で長い間働く傾向があり、サプライヤーを変えることに抵抗を感じます。相手と長期的に付き合うことを想定しているので、交渉方法は協力的(自分が勝ち、相手も勝つ)であり、「相手との関係全体」という広いコンテクストでビジネス取引を捉えがちです。

社員の離職に備えて

このようなビジネス関係における文化の違いは、前述のケースにも反映されています。日本人技術者はチャートの右側に位置するのに対し、イギリス人であるアンディーは左の方に位置するからです。もしこの日系子会社が、このチャートでさらに左側のアメリカにあるとしたら、現地採用者の入れ替わりはさらに激しいことが予測されます。このような状況において、雇用主はどのような対応をすればよいのでしょうか。多くの日系企業はa)を選ぶでしょう。しかしながら、それはあまりお勧めできる対策ではありません。現地採用者の離職がさらに加速してしまう可能性が高いからです。現地採用者に技術を教えないと彼らは仕事の中心から疎外されてしまい、やりがいのある仕事ができなかったり、貢献する余地が限られてしまったりします。そのため、職場や仕事に不満を感じ、すぐに他の仕事を探すことになるでしょう。また、多くの日本企業では技術者スタッフの数が限られているのが現状であるため、技術のポジションに絶えず駐在員を送るのは、会社にとって大きな負担になりかねません。駐在員のコストは高いのでなおさらです。

私が勧める対処法は、b)とc)です。労働市場の流動性が高い文化であっても、誰もが簡単に辞めるわけではありません。辞めるにはそれなりの理由があるはずです。その理由を理解して適切な対策を導入すれば、離職率を抑えることができるでしょう。マネージャーは会社の人事担当者に相談し、その土地に合った効果的な定着率の高め方を教わるのが望ましいのです。

技術移転のやり方に関しても、文化の違いを考慮して調整する必要があるでしょう。日本国内の企業であれば、社員は簡単に辞めないという前提があるため、上記のケースのように1人の個人に集中的に技術移転を行うことが多いのですが、このようなやり方は、労働市場の流動性が高い文化には適しません。辞めるかもしれないことを想定した上で、より多くの社員を同時に教育することがより望ましいのです。そうすることで、1人が辞めても同じ情報や技術を持った社員が他にもいることになります。さらに、マニュアル作成や徹底的な研修など、「見習い」よりも体系的な教育が必要です。

このような対策を打つことによって、労働市場の流動性が高い文化においても、技術移転を成功させることができるでしょう。



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