個人と集団の関係

執筆 ロッシェル・カップ

世界を相手にビジネスを行うためには、英語力だけでなく、多様な文化を受け入れるためのグローバルマインドセット、つまり視野の広いもののとらえ方が必要となります。本コラムでは、経営コンサルタントのロッシェル・カップさんにグローバルマインドセット獲得のヒントを教えていただきます。

第14回 個人と集団の関係

個人の評価とチームの評価

あなたは日系企業の中国子会社で働いています。あなたの部下の馬さんは突然に会社を辞めることにしました。あなたは馬さんに「皆で力を合わせてここまで頑張ってきたのに、なぜ辞めるのですか。とても残念です」と理由を尋ねました。馬さんは少し考えてから、「私のアイデアを製品化して会社は成功を収めたのに、私自身が評価されなかったからです」と答えました。あなたは、「アイデアは確かに馬さんのものですが、皆の協力があってこそ製品化が成功したのだと思います」と答えました。それに対する馬さんの返答は次のようなものでした。「それこそが辞める理由ですよ。いくら自分が頑張っても、結局はチーム全員の成果になってしまう。自分の貢献が評価されなければ、仕事にやりがいが持てません」。

このような状況に直面したとき、あなたならどのように対応しますか?

a)
中国人はわがままでジョブホッピング(転職を繰り返すこと)が多いので、離職も仕方が無いと諦める
b)
馬さんはチームプレヤーではないので、今後、現地採用をする時はもっとチーム意識のある人材を探す
c)
チーム全体の努力を認めながら、個人の貢献をもっと報奨する方法を探す

日本人からすると、馬さんのように急に仕事を辞めることは理解しがたいことです。チームや会社に迷惑をかけてまで自分の利益を優先する人は、日本では冷やかな目で見られてしまいます。日本人はa)のように、馬さん個人に非があると解釈する傾向が強いでしょう。しかし違う見方もあります。それは、文化的背景を考慮したものです。

文化的背景を考慮して効果的な組織運営を

このチャートで左の方にある文化は個人主義です。個人主義の文化では、自主性、独立独歩、個人の自由、個人の選択が重視されます。 そのような文化に属する人は目立つことをいとわず、自分の上げた実績で個人として認められることを好みます。対照的に、右の方にある文化は集団主義です。集団主義の文化に属する人は、自分優先ではなく、他の人にとって何が良いかをまず考えます。個人として突出しないように心がけ、グループで仕事をすることが大切だと思っています。また、グループ内の和を重視します。

このチャートでは、日本は右寄りに位置しています。一方中国は、欧米ほどではありませんが、日本より左です。そのため、中国人が日本人より個人として認識されることを重視するのは驚くべきことではありません。したがって、a)のように個人主義的な行動に対して「悪い」というレッテルを貼るのは、あまり効果的ではありません。b)も一つの方法ですが、そうすることで採用の候補者が限られてしまうだけでなく、中国の文化的特徴を否定することになりかねません。そのため、中国で事業を行う日系企業にとって、持続的な解決法にはなりません。

最も適切な対処法はc)です。中国人にとって、自分個人の貢献が評価されていると感じることは非常に大切なことなので、それを積極的に生かすのが効果的な管理法です。チーム全体の努力を評価しつつ、個人の貢献に対して十分な評価や報酬を与えることをおすすめします。このように相手の文化に合った管理方法を取り入れることは、文化的ギャップの克服だけではなく、ビジネスでのより良い結果を収めることにつながるでしょう。



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