執筆 まつだあいこ

マイノリティ・リポート マイノリティ・リポート
Minority Report
発売元・販売元:20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント
DVD ¥3,980 (税抜)

犯罪を予知し、犯罪者を未然に逮捕する。2054年のワシントンD.C.は犯罪予防局が設立されて以来、殺人事件ゼロ、世界で最も「安全な」都市でした。局の精鋭、ジョン・アンダートン (トム・クルーズ) は、このシステムを全米に拡大させることを夢見ます。その矢先、アンダートンが凶悪な殺人事件を起こす、という予知が……。予知は必ず現実になるのか? 潔白を証明するためアンダートンは、犯罪予知の真実を探ります。


“赤球”が出る

 この近未来アクションの時代設定は、今から約50年先の2054年。監督のスピルバーグ氏はこの物語を作るのに、さまざまな点から未来の様子を検討したそうです。
 その結果生まれたのが、数々の未来的でユニークな小道具や用語。今回は、この映画のセリフ (字幕) に出てくる未来やSF関連の単語を集めてみました。

●pre で始まる
Precrime 予知犯罪
crime (犯罪) と接頭語の pre (以前の、あらかじめ) を合成してできた語。犯罪の予知が可能になった、という前提からこの未来の物語は始まる

Precog 予知能力者 ※ルビ「プリコグ」
 precognitive の略。pre と cognition (認識) から成る「予知」という語を人称形らしく変形させた語。中盤の字幕からは「プリコグ」で統一

Prevision 予知イメージ
プリコグに見える、犯罪を予知した映像のこと。字幕では字数制限の関係もあり、中盤からは「イメージ」や「映像」といった省略も


●簡単な語の応用
Echo こだま ※「エコー」とルビ
プリコグが見る予知イメージの繰り返し再生映像。字幕では初回だけ「エコー」とルビが利用され、その後は“こだま”とダブルクォーテーションだけ流用

Red ball “赤球” ※「レッドボール」とルビ
プリコグが犯罪を予知したとき、被害者と加害者の名前データが機械に取り込まれ、色のついた木目の玉に刻まれる仕組みになっている。字幕では2回目以降から、字数を節約できる“赤球”で統一。
赤い球は、悪質で、ごく近い未来に起こる犯罪を表すもの。赤は危険を表す色、こうした犯罪を防止するには緊急を要することを考えると納得がいく。危険度はこれに次ぐ、計画殺人などのときには Brown ball“茶球”が出る

Minority report 少数報告 ※「マイノリティ・リポート」とルビ
この映画のタイトルでもあるこのことばは、3人いるプリコグの予知した映像が一致していなかった場合、多数決で「少数派の意見」を削除するというウラのシステムからできた語

future murder 未来殺人 ※「未来」に傍点
犯罪予知局は実際の殺人が起きる前に、対象者を「未来殺人」の容疑で逮捕する権限を持っている

Eyescan 網膜走査
本作では、個人認識のため、地下鉄でもデパートでもいたるところに網膜をスキャンする機械が設置されている。Scan は日本語にすると「走査」


●未来警察のおもしろ携帯武器
Sickstick 嘔吐棒
おなじみの警察の武器のひとつである警棒。未来は、この警棒で触れることにより、追跡している人の気分を悪くさせ、吐かせることで足止めをする。Sick は病気

Spider スパイダー
その名のとおり「クモ」の形に似た、網膜チェックシステムを搭載した手のひらサイズの機械。自ら人間を感知し、網膜チェックを行う。機能よりも、外見からその呼称が派生しているとわかる例

Bind foam 捕獲泡 ※“泡”に「フォーム」とルビ
実際に劇中で利用されてはいないが、騒音や刺激を抑えた捕獲作戦に使う、泡状の捕獲用武器


●セリフには登場しない設定上の単語
Hole of containment
Precrime によって逮捕された犯罪者が収容されている場所。直訳すると「封じ込め」のホール

Hovercraft
犯罪予防局が利用している「ホバークラフト」は、船体を浮上させて水の抵抗なしに走る船のこと。アメリカでは hydroskimmer ともいわれており、総称は air-cushion vehicle。しかし、ウォークマン (walkman。小型ヘッドホンステレオ) と同じく世界的に有名な商標名が一般名詞として使われている。Hover (空中に漂う) craft (小型船舶)。『スター・ウォーズ』ほか、未来モノに出てくる戦闘機は進化型ホバークラフトが多い

Maglev
リニアモーターカーに似た Magnetic levitation (磁気浮力) を利用した車。本作ではトム・クルーズ演じる主人公のアンダートンがマグ=レブ交通システムの中を逃げるシーンがある。『フィフス・エレメント』などにも近い車が登場


●おまけ:予知や未来モノによく出る単語
Paradox パラドックス
逆説・矛盾。未来を扱う映画には矛盾がつきもの。
たとえば、未来に機械と人間の戦争が起きるという設定の『ターミネーター』。物語では、人間のリーダーとなる自分がいるから、存在を消そうとターミネーターが過去に来るわけだが、そのターミネーターを倒すために未来から送られてきた人間がいなければ、自分は生まれない。
この映画でのパラドックスは、「予知をされたからといって、まだ起きていない罪で人を捕まえれば、予知した犯罪はハズレにならないか」ということ

Dejavu 既視感 ※「デジャヴ」とルビ
既視感。見たものが、すでに体験したことのように感じてしまうできごと。予知能力の一種といわれている。『マトリックス』のセリフにも登場。本作では「既視感覚」に「デジャヴ」とルビ

alternate future 別の未来
本来あるべき姿からは「入れ替わった」未来。映画のジャンルとしても使われている単語で、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』などが代表的


 いかがでしたか?
 たくさんの自由な発想が作品の中に取り入れられている未来モノは造語の宝庫です。
 こういった造語を扱う場合は、字幕では意味を伝えつつ、ネーミングもできるだけ出すため、通常ならば難しい漢字のよみがなに使うルビを活用します。

 未来ロボットが活躍する人気アニメ「ドラえもん」。この作品が流行してからは「どこかへ行きたい」と表現するのに、ドラえもんの最も有名でわかりやすい小道具を引用して、「“どこでもドア”がほしいね」なんていいますよね。
 『マイノリティ・リポート』もかなりの大作。さらに、視聴者が初めて聞いてもわかりやすいシンプルな語が工夫されています。ということは、だれかの会話で、あるいは他の映画のセリフで、引用されることがあるかもしれませんよ。

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