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ジョニー・デップの出世作
「レス・ザン・ゼロ」「アメリカン・サイコ」も映画化された人気作家ブレット・イーストン・エリスが描いたこの映画の原作は、「ドラッグ、セックス、ロックンロール」がキーワードの80年代若者風俗。
しかし、映画では時代設定が少々違うようです。セリフの中の時代を匂わせるキーワードから推測してみましょう。
まずはヒットドラマが生んだ言葉を検証します。
ドラッグの売人をやっている大学生ショーンは、ドラッグを買いたいという友人のミッチをつれて、仲介をしているルパートの家に赴きます。しかしルパートはミッチを信用できない様子です。
SEAN: Mitch.
RUPERT: Mitch. Are you a cop, Mitch?
MITCHELL: No...
SEAN: Does he really look like a cop to you, Rupert?
RUPERT: How the fuck do I know? Unless he has a crack pipe hangin' out of his mouth I have to assume he's fuckin' 21 Jump Street.
MITCHELL: I’m not...21 Jump Street. Whatever that is.
RUPERT: It's where Johnny Depp and Richard Grieco got their start. Where the fuck have you been?
(ミッチだ
ミッチか、お前はサツか? ミッチ
いや…
ルパート、こいつがほんとにサツに見えるのか?
どうやって見分けろってんだよ
クラックのパイプをくわえてねえ限り、こいつが「21ジャンプ・ストリート」だって疑わなきゃならねえのは当然だろ?
それが何であれ、僕は「21ジャンプ・ストリート」…じゃないよ
ジョニー・デップとリチャード・グリエコの出発点はここだろうが。どこにいってやがったんだ?)
<字幕>
ミッチだ
ミッチ お前はサツか
いいや
サツに見えるか?
分かるわけない
コカインのパイプがなきゃ/“ロックド・アウト”だ
何か知らないけど/それじゃない ※「それ」に傍点
ジョニー・デップの原点だろ/知ってるくせに
これはジョニー・デップの若かりしころを知っていればニヤリとできるセリフです。
“21 Jump Street”は、87年から92年にアメリカで放送された人気テレビドラマ。数人の若手警官が生徒として(!)高校に潜入、学内外の腐敗を暴くというシリアスな青春アクションです。このドラマの放送以来、若者の間では「学校への潜入捜査官」=“21 Jump Street”という引用が成り立つようになりました。
そしてこのシリーズの初期に主演していたのが、今やトップ映画スターのジョニー・デップ。このドラマは彼のキャリアの出発点である作品としても有名です。字幕では省略されたリチャード・グリエコも、日本では公開作が少なく知名度が低いですが、このドラマで人気を得たスターです。
日本では最近、「21ジャンプ・ストリート」と改題したDVDがリリースされましたが、それまでは「ハイスクール・コップ」、「ロックド・アウト」のタイトルで一部ビデオ発売になっていました。訳語の出典はここにあります。
セリフは「デップの原点だった」としているので、舞台はすでに彼が大物スターになってからと考えられますね。
つぎに何気なく使われた人名から考えてみましょう。
ショーンの友人ヴィクターが「超」早口でヨーロッパ旅行を語るナレーションには、3人の有名人の名前が登場しています。あまりにも早口のセリフのために、字幕ではどの人名も省略されていますが、ここには時代を感じ取れるヒントが隠されています。
We get stoned while listening to a Michael Jackson record and the next morning I wake up talking to myself.
(俺たちはラリってマイケル・ジャクソンのレコードを聞き、そして翌朝は独り言で目覚めた)
<字幕>
次の日 目が覚めると/独り言を言ってた
現在は幼児虐待疑惑で話題になっている、ご存知「ポップ・キング」マイケル・ジャクソン。ソロになった80年代から90年代にかけて数々のヒットソングを世に送り出しました。が、このセリフでは80年以降らしいということしか分かりません。
Hung out there for four or five days, met the world's biggest DJ, Paul Oakenfold,
(4、5日そこでぶらぶらして、世界的なスゴ腕DJのポール・オークンホールドに会った)
<字幕>
世界的なDJに会った
ポール・オークンホールドは、80年代後半からダンス・ミュージックやロックの世界の第一線で活躍している大御所DJです。このセリフは、先ほどのジョニー・デップ引用と考え合わせると、90年以降の可能性を強くしていますね。
ところが、次の人物からは時代設定がもっと現在に近いことが分かります。
EuroPass into Italy and ended up in Venice, where I meet a hot girl who looks like Rachael Leigh Cook and speaks better English than I do.
(ユーロパスでイタリアに入り、ベニスで終点。そこではレイチェル・リー・クック似の、俺より英語が上手なかわい娘ちゃんに会った)
<字幕>
ベニスで 英語のうまい/魅力的な娘に会った
レイチェル・リー・クックはモデル出身、99年に映画『シーズ・オール・ザット』でブレイクした若手女優です。日本では整髪料のCMに出演していましたね。
彼女の人気が上向いてきたのは銀幕デビューした95年ころ。ということは、時代は比較的今に近いと考えるのが自然です。
エリスによる原作の登場人物が抱える苦悩や狂気は、今の世代の若者にも共感を与える普遍的なものと評価されています。それを考慮した監督は、原作発表から15年後の映画化となった本作の時代設定を、原作よりも現在に近くしたそうです。 |