大企業の悪事を暴いたドキュメンタリー
The Corporation は、大企業がいかに平然と悪事をはたらいているかをわかりやすく描いたドキュメンタリーです。都心部のほんの一部のアートハウス系の小さな劇場でしか公開されなかったにもかかわらず、200万ドル近い興業収益を得ることができ理由は二つ。
一つは、マイケル・ムーア氏のおかげで、ドキュメンタリーを見たいと思う人の数が増えたから。もう一つは、インターネットやEメールでこの作品の素晴らしさターゲット・オーディエンスに確実にPRできたからです。
ムーア氏の功績に関しては、Fog
of War でも説明したので、今回はインターネットによるPRがどれほど功を奏したかについてお話しましょう。
このページの読者のなかにはネットがなかった時代を「知らない」というお若い方も多いと思いますが、ほんの10年前までは映画の宣伝はテレビ、ラジオ、新聞、雑誌などの“通常のメディア”に頼っていたのです。
ですから、PRをするには莫大な広告料がかかるため、ヒットが期待できない作品は映画館での公開を見合わせて最初からビデオとして販売していました。でも、インターネットが同じ趣味や思想を有する人たちが意見を交換できる空間を作ってくれたことで、そうしたサイトやニュースレターを通じて、地味な作品も効率よくターゲット・オーディエンスにPRできるようになったので、低予算のドキュメンタリーも小さな劇場での公開が可能になったのです。
そもそも、The Corporation のように大企業を“犯罪者”として描いているドキュメンタリーは、配給会社に万が一広告料を払えるだけの予算があったとしても、大企業からの広告費で成り立っている通常のメディアが広告を載せてくれるとは限らないので、この作品がリリースにこぎ着けられたのはまさにネットのおかげと言えるでしょう。
PRに特に貢献したのは、クリントン前大統領の弾劾裁判に反対するために創設されたMoveOn.Org(2004年の大統領選でハワード・ディーン民主党候補への多額のオンライン募金を集めたことでも有名です)や、環境保護、平和運動の支持者たちのニュース・ソースとなっている BuzzFlash.com などのインテリ層や大学生の visitors が多いサイト。
これらのサイトへの常連たちが、それぞれのニュースレターやブログでこの映画を推薦し、ダイレクト・メールよりも確実に、しかもただでこの作品のPRが可能になった、というわけなのです。
残念ながらアメリカではインターネットの取り締まりが日を追うごとに厳しくなっていて、プロバイダーが提供するコンテンツを制限する権限を得る日も近いと言われているので、大企業の悪事を暴く作品を映画館で見られるのはこれが最後になってしまうかもしれませんね。
|