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執筆 押味貴之
Lesson8 医療通訳について説明する

皆さんは「医療通訳(Health Care Interpreting)」について知っていますか? これは医療現場におけるさまざまなシチュエーションで必要とされる通訳のことで、主に医療従事者とその地域の言葉を十分に話せない患者さんとの会話において必要とされます。日本ではまだ認知が高くないこともあり、皆さんの中にも「英語が話せる」ということで、知識や経験が不十分にもかかわらず無理やり(?)医療通訳を体験された方も多いのではないでしょうか? そこで今回は、実際にこの「医療通訳」をするにあたって、事前に患者さんに医療通訳について説明するための英語表現を紹介します。

自己紹介
当然ですが、まずは自己紹介が必要です。ただ、ここで大切なのは、あなたが看護師やその他の医療者であるにかかわらず、「この場面では通訳の役割を担う」ということをしっかりと説明するということです。あなたの話すことは、通訳をする「患者さん」や「医療者」の言葉であって、看護師としてのあなたの意見や考えではないということを伝えるためです。

“Hello, are you Mr. Jego? I'm Takayuki Oshimi and I'll be interpreting for you today. Before the doctor arrives, there are a few things that would help me do a better interpretation for you.”

「こんにちは。ジェーゴさんですね。私の名前は押味貴之です。本日あなたの通訳をさせていただきます。医師が来る前に、この通訳をよりよいものにするためにいくつかご説明させていただきます。」


Direct Communicationの促進
「医療通訳」が目指すべきは、患者さんが医療者と同じ言語を話しているかのように自然にコミュニケーションを取れることです。そのためにも、患者さんは通訳者にではなく、話をする医療者に向かって話しかける必要があります。

“First of all, please speak directly to the doctor.”

「第一に、医師に直接話してください」

そして、この Direct Communication を促進するために、通訳者は「患者さんの斜め後ろ」に座ります(医師の斜め後ろではありません。そうなると、患者さんと医療側のパワーバランスが著しく崩れるからです)。また、視線を床に落として、医師や患者さんとアイコンタクトを「取らない」ことも重要です。人間はアイコンタクトが取れる者とコミュニケーションを取ろうとしますから。


Message Converter の役割説明
通訳の基本的な役割は、「話されたことをそのまま通訳する」ということです。この“Message Converter”としての役割を果たすために、通訳者は患者の話す内容だけでなく、表情や語気なども再現しなければなりません。

“I will interpret everything you say exactly as you say it. I’ll do the same for the doctor.”

「あなたが話されることすべてを話された通り通訳します。医師に対しても同じように行います。」


逐次通訳の説明と協力要請
医療通訳では基本的に「同時通訳(simultaneous interpreting)」を行いません。医療の現場では「正確性」が何よりも重要ですので、話者が話し終わってから通訳をするという「逐次通訳(consecutive interpreting)」 を行います。よりよい逐次通訳をするためには、一度にたくさん話さないように要請しておくことが重要です。

“Please speak in relatively short segments so that I can interpret accurately. If I make a hand gesture like this, please pause so that I can interpret.”

「比較的短く区切って話すようにしてください。その方が正確に通訳できますので。また、このように手で合図しましたら、私が通訳できるように、話すのを止めてください。」

そして、この Direct Communication を促進するために、通訳者は「患者さんの斜め後ろ」に座ります(医師の斜め後ろではありません。そうなると、患者さんと医療側のパワーバランスが著しく崩れるからです)。また、視線を床に落として、医師や患者さんとアイコンタクトを「取らない」ことも重要です。人間はアイコンタクトが取れる者とコミュニケーションを取ろうとしますから。


守秘義務の説明
読者の皆さんの多くは看護師でしょうから、皆さんが通訳を行う際には守秘義務に関して問題はないでしょう。ですが、一般の人が医療通訳をする際には、この「守秘義務を守る」ということを明確に伝える必要があります。そうしないと、患者さんは本当のことを伝えてくれない可能性があります。

“I will keep everything confidential, so please feel free to say anything you want to the doctor.”

「通訳する内容がほかに知られることはありませんので、どうぞ安心して話したいことすべてを医師にお話しください。」


これらの“Pre-session”の説明は、患者さんだけでなく、通訳をする医療者にも同様に行う必要があります。どんな場面の医療通訳でもこれらの“Pre-session”の説明は同じですから、何度も練習してスムーズに言えるようになっておくとよいでしょう。



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