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執筆 押味貴之
Lesson31 健康診断・検診に関する英語表現

日本に住んでいれば、1年に1回は受けることが当たり前の健康診断ですが、これはある意味日本固有の文化と言えます。と言うのも、海外ではこのような健康診断は、誰でも受けられるものではないからです。また、胃癌が多い日本では、「バリウム」や「胃カメラ」などの検診は身近なものですが、それらもまた、海外では特殊な検査です。このような「健康診断」や「検診」に関する表現を英訳するときには、日本と英語圏での文化の違いを知っておかなければ思わぬ誤訳につながります。そこで今回は、「健康診断/検診」に関する英語表現を紹介します。

「人間ドック」は“Ningen Dock”?
日本では、事業主が労働安全衛生法に基づき、その従業員に年に1回以上の「健康診断(general checkup)」を行なうことが義務付けられています。また、雇用されていない人には住民健康診断も整備されています。このため、日本における「健診」は国民にとってとても身近なものとなっています。しかし、このような「年に一度の健康診断は当たり前」という状況は、海外には当てはまりません。 アメリカを例にすると、general checkup は民間の健康保険によって行なわれます。従って、国民のおよそ15%と言われる健康保険未加入者は、当然この general checkup を受けることはできませんし、加入者であってもその内容は、加入している健康保険によって大きな違いがあります。「健康診断」の英訳は確かに general checkup ですが、日本と同じような「健康診断」というものは海外には存在しないので、日本語の「健康診断」という言葉が持つ「誰もが受けている」というイメージは、general checkup という単語には含まれていないということを、まず意識してください。

このほか日本には、自覚症状の有無に関わらず精密検査を受けるという「人間ドック」という「文化」もありますが、これはどう英語にしたら良いのでしょう? そもそも「ドック」という表現は、「船がドックに入って修理を受けるように、人間もドックのようなものに入って総点検を受ける」というニュアンスから生まれた和製英語です。ですから、それをそのまま英語にした human dock や human dry dock(船は通常水を抜いた状態のドックで修理を受けます。だから“dry”dockなのです)という表現では通じません。確かに、「日本人間ドック学会」の英語名は Japan Society of Ningen Dock となっているように、Ningen Dock という用語が固有名詞として使われていますが、よほどの日本通の方以外には complete medical checkup という英語でなければ通じませんので注意してください。


「子宮癌検診」の英訳は?
「健康診断/健診」が幅広く健康状態を調べる検査であるのに対し、「検診(screening test)」は特定の疾患のスクリーニングが目的の検査です。一般に「〜検診」というものを英訳する際には、“「疾患名」+ screening”という表現となります。従って、「前立腺癌検診」は prostate cancer screening となるわけです。 しかし、この「検診」に関しても、それぞれの国で普及度が異なります。胃癌の多い日本では「胃癌検診(gastric cancer screening)」である「バリウム検査(upper GI series)」や「胃カメラ(gastroendoscopy)」は、検診の項目として一般的ですが、英語圏ではこれらの検査は専門医に紹介された後にしか行なわれません。また、結核や肺癌の早期発見として行なわれている「胸部レントゲン(chest X-ray)」も、海外では毎年行なう一次スクリーニングとしては、一般的ではありません。

逆に、日本では受診率があまり高くない「子宮癌検診」や「乳癌検診」は、アメリカやカナダ、オーストラリアでは受診率が高く、非常に一般的な検診となっています。子宮癌には 、子宮体癌と子宮頸癌がありますが、英語では前者を uterine cancer、後者を cervix cancer と呼び、子宮体癌のことを、そのまま uterine cancer と呼ぶ傾向があります。子宮癌検診は後者の cervix cancer を対象にした検査ですが、これは cervix cancer screening ではなく、pap smear という表現が使われますので覚えておいてください。

また、乳癌検診も breast cancer screening のほかに、マンモグラフィ(mammography)や、自分で乳房のチェックを行なう Brest Self-Exam (BSE) という表現がよく使われるので、これも覚えておきましょう。



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