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特集:理論天文学者 小久保英一郎先生に聞く
“理系的”英語学習法のススメ

自分に必要な英語から逆算して学ぶ
ESP(English for Specific purposes)とは?
 

「自分の好きなこと、やりたいことのために英語が必要となれば、一所懸命、楽しみながらできる」。小久保先生がこう言っていたように、ただ漠然と日常会話を勉強するよりも、特定の目的があれば英語は学びやすい。

そこで、「英語が苦手だ」と悩む人に、ESP(English for Specific Purposes)という考え方を知ってもらいたい。直訳すると「特定の目的のための英語」で、科学英語、医学英語などがこれに当たる。こう聞くと、「自分には無縁」と感じる人も多いかもしれないが、もっと身近なpurposeもESPに当てはめて考えることができそうだ。ゆえに、目的から必要な事項を絞って学ぶESPの学習方法は、あらゆる英語学習のヒントになる。ここでは、ESP教育の専門家、武庫川女子大学教授の野口ジュディー先生に、ESPの学習方法や魅力について聞いた。

 
取材・文:足立恵子 写真:マガジンアルク編集部
編集・構成:SPACE ALC「英語特集」編集部

野口ジュディー(のぐちじゅでぃー)
ハワイ大学卒業。テンプル大学大学院、バーミンガム大学大学院を修了。ESPおよびJSP(Japanese for Specific Purposes)の研究、ESP教材の開発、ESP教育を専門とする。 現在、武庫川女子大学薬学部教授、JACET(大学英語教育学会)関西支部副支部長。主な著書に『理系英語のライティング』『理系英語のプレゼンテーション』(ともに共著、アルク)など。


言葉を使うときには、必ず「目的」が存在する
新聞記事、教科書、スポーツ誌の記事…使われている英語はそれぞれ特徴が異なります。
「例えば、切手を収集している人たちのコミュニティーがあるとします。そこで使われる言葉は、切手に関心のない人にはほとんどわからない可能性がありますが、そのコミュニティーに所属する人には、すぐにピンとくるはずです。この切手収集家のコミュニティーは一つの Discourse Community(共通の目的を持った集団)であり、そこで使われる英語の特徴を調べることで、一つのESPが明らかになるのです」。

つまり、映画好きが集まって最近見た作品や俳優について語ったり、料理好きが自分のレシピを披露し合ったりするときも、そこで使われている英語には、ESPとしての特徴があるはずなのである。

「言葉とは本来、必ず何らかの目的を持って使用されるものなので、あらゆる言語活動に、ESPの考え方が当てはまります」。

科学技術や経済など、専門性の高い分野ほど、コミュニティーの中での英語の特徴をとらえやすく、学びやすい。これといった目的のない、漠然とした日常会話のほうが、特徴を定めるのが難しく、内容を把握しづらいため、むしろ難易度が高いそうだ。
 
ESP的な発想で言葉を効率よく習得
野口先生もおすすめの、科学情報誌『Nature』による Nature Podcast。登録は無料で、一流サイエンティストへのインタビューなどを聞くことができる。
→「Nature Podcast 」のウェブサイトはこちら
「ある程度英語の知識のある人は、まず目的、つまりどんなジャンルで英語を使うかをはっきりさせ、そこから逆算して、そのジャンルに特徴的な英語を身につければ、比較的短期間で実践に結びつけることができるのです」。

つまり、高校を出るまでに英語の基礎を身につけている日本の学生には、このESPの考え方を取り入れた英語教育が、非常に有効ということだろう。

例えば、自然科学の世界に進むのであれば、「自然科学の研究者が日常的に使っている英語」に触れることが重要だ。そうすることで、特定のジャンルの実践、例えば、論文を書いたりプレゼンテーションを行ったりといったことが、短期間にできるようになる。

理系の学生は、一般に英語に対して苦手意識を持っていることが多く、英語の授業も「いやいや取っている」状態ということも。「そういう学生はたいてい、英語の勉強とはやみくもに単語を覚えたり文法を勉強したりすることだと思っているので、このESPの考え方に触れると、目からウロコが落ちた思いがするようです。英語習得に役立つだけでなく、物事への取り組み方、研究の進め方を考えるうえで、非常に参考になるという声もありましたね」。
 
「コーパス」を利用してさらに効果的に
理工系の専門家を目指す学生のための「理系たまごシリーズ」全5タイトル中、『ライティング』『プレゼンテーション』を野口先生が監修、執筆。ESP学習の初歩から丁寧に解説しており、理工系英語の入門書として最適(書籍についての詳細はこちら)。

コーパスとは、実際に使われている言葉のデータベースのこと。自身の専門分野のコーパスがあれば、その Discourse Community のメンバーがどのような言葉を使っているかを知ることができる。

「人々が現実に使っている言葉のデータベースがあり、そこから辞書を作ることができる。その存在を初めて知ったときには本当に驚きました。特定のコミュニティーの中で使用される言葉の特徴を調べるESPの研究も、コーパスを利用することで進歩したのです。私が本格的にESPに取り組むようになったのも、コーパスとの出合いによるところが大きいですね」。

さらに、コーパスを利用するうえで役に立つのがデータの中から語句を見つけ出すことができる「コンコーダンス・プログラム」というソフトウエア。まずは、研究分野に関連した信頼のおける論文を集める(これがコーパスとなる)。そしてこのプログラムでそのコーパスを検索すれば、使いたい言葉の使用例を簡単に見つけることができるという優れもの。野口先生監修の『理系英語のライティング』にも収録されているので、ぜひとも使ってみてほしい。理系学生にとっては、論文を書くための必須アイテムとなるはずだ。

   
※この記事は、アルクの会員向け情報誌『マガジンアルク』2008年4月号「ゴガクのツボ」に掲載された記事を再構成したものです。

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