ビジネスで成功するための グローバルマインド養成講座
執筆 ロッシェル・カップ

世界を相手にビジネスを行うためには、英語力だけでなく、多様な文化を受け入れるためのグローバルマインドセット、つまり視野の広いもののとらえ方が必要となります。本コラムでは、経営コンサルタントのロッシェル・カップさんにグローバルマインドセット獲得のヒントを教えていただきます。 5/10 Up 月1回更新

第9回 ワーク・ライフ・バランスについて

1カ月間の休暇要求についてどう対応するか

ドミニク・トゥールヌーは在フランス日系企業のマネジャーです。彼女は、日本人の同僚が設定した締め切りや速い仕事のペースに対応しようと、努力を重ねています。しかし、彼女は8月に1カ月間、南フランスで家族や友達と過ごすために休暇を取ることを主張しています。1年を通して他の時期にそれほど休暇を取っているわけではないので、彼女には1カ月間の休暇を取る権利があります。また、フランスでは8月はバケーションモードでビジネスなど進まないのだから、とドミニクは説明しました。あなたが彼女の上司だったら、どのように対応しますか?

a)
最長でも2週間の休暇しか取らないように、とドミニクにプレッシャーを掛ける。
b)
1カ月間の休暇を許可する。
c)
今後こういった要望を拒絶できるように、2週間以上の休暇を取らないよう会社の規定を変更する。

多くの日本人マネジャーは、部下から1カ月間の休暇の依頼があれば、a) またはb)のように反応します。日本の価値観では、各社員はグループに対する責任があるので、長く休むのはグループの他のメンバーに対して非常に失礼ということになります。そして、1週間以上は「長い」と定義されます。長く休みたい人はわがままだと思われ、責任感が薄いのではないかと見られています。

日本人にとってそのようなことは当然ですが、実はそれは日本人の価値観であって、世界では別の価値観が存在します。この価値観を説明するのは、私生活と仕事のバランスに関する考え方です。

社員の流出を防ぐために

上記のチャートを見ると、右の方にいる文化は、人生の中で仕事が第一に優先されるものだと思っています。自分のアイデンティティーを確立するために、仕事のことをまず考えます。仕事のために、生活の他の局面を犠牲にすることもあります。仕事上で必要なら、休暇を短くする、あるいは取らないこともあります。要するに、日本語でいう「仕事中毒」や「会社人間」です。

一方、このチャートで左の方にある文化は、人生の中で私生活を第一に優先します。レジャーの時間を大切にしています。自分のアイデンティティーを確立するためには、仕事以外のことを第一に考えています。残業を好まないし、長い休暇を取ります。チャートで見られるように、フランス人は典型的な私生活優先文化です。実はこれはフランスの文化の特徴で、フランス人のアイデンティティーの一つだと言えます。

フランスでは8月の長い休暇はとても大切にされ、それに対してじゃまをしてはいけません。そのため、フランスでa)やc)のように対応すれば、フランス人にとってはあまりにもひどい行動に映るため、結果として社員の流出につながってしまいます。ある文化における重要な価値観を尊重しないと、社員の流出やそれに類することは確実に起こります。そのため、相手の文化における最も重要な価値は何なのかを理解して、侵害しないように気をつけてください。特にこのケースの場合、ドミニクは仕事もできるし、全体として多く休んでいるわけではないので、現地の習慣に従った方が望ましいと言えます。

プロフィール

ロッシェル・カップ

ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社(www.japanintercultural.com)社長。
異文化コミュニケーションと人事管理を専門とする経営コンサルタントとして、日本の多国籍企業の海外進出とグローバル人材育成を支援している。イェール大学歴史学部卒業、シガゴ大学経営学院卒業。『反省しないアメリカ人をあつかう方法・増補改訂版』(アルク)、『新ビジネスミーティングの英語表現』(ジャパンタイムス)や『外国人と交渉に成功するビジネス英語』(語研)をはじめ、著書は多数。朝日新聞等にコラムも連載している。

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