さまざまな日本企業で社員研修を手掛けてきた田中宏昌先生に、日本で英語教育を受けてきた人たちが、グローバルな環境で英語を使っていく重要性について伺った。
文 石渡淳元

今までなんとか苦手な英語にかかわらずに済んでいた人が、突然、英語で仕事をしなければならなくなる。そんな事例が増えている。自社が販路を新興国に広げた、取引先が海外の企業と業務提携したなど、その原因はさまざま。仕事のできる中堅社員ほど、英語から逃れられなくなりつつある。苦手な英語を克服するには、どうしたらいいのだろうか。大手企業の現場で、ビジネス英語力向上に長年取り組んでいる田中宏昌先生は、学習法の180度の転換を提案している。
「『英語が苦手』という方々は、過去、何度か英語の勉強に挑戦し、挫折を経験しているはずです。同じ方法ではうまくいく可能性は低いので、今までとはまったく違う勉強法を試してみてはどうでしょうか」
「具体的には、英語を使ってみることから始めるのがお薦めです。例えば、会社に外国人社員がいるのなら、その環境を生かしましょう。外国人社員となるべく目を合わせないようにするのではなく、まずは勇気を出して目を合わせ、笑顔で挨拶をしてみてください。相手は好感を持ってくれるはずです。そうなると、向こうから話しかけてもくれますし、自分の英語が分かりにくくても、熱心に聞いてもくれます。そして、自分が手にしている語彙や表現だけでも気持ちが通じ合い、『ああ、これでいいんだ』と実感する瞬間が、誰にでも訪れるはずです。この実感こそが、英語を学ぶための大きな第一歩になるのです」
身近に外国人がいない人でも、方法はいろいろあると、田中先生は言う。
「プレゼンテーションを英語でやってみる、というのもとても効果があります。テキストを丸暗記するインプットだけでは、飽きてしまう人が多いはずです。けれども、アウトプットをすることで、自分は何が英語で表現できないかが分かってきます。すると『そうか、ここはこんな言い方をすればいいのか』と表現の定着度が高まるのです。そのほか、海外旅行をするときに手続きをすべて自分でする、eBayで売買をしてみるなど、できることはたくさんあります。ぜひ試してみてください」

では、その次には何をすればいいのか、田中先生は2つの段階を示してくれた。
「第2段階の目標は、『話が通じる』存在になることです。言い換えると、好感の持てる『いい人』になることです。そのためにはちょっとした「小技」が必要です。相手の発言内容を復唱して確認したり、相づちを打ったり、多少理解できなくても重要でないことにはこだわらず会話の流れを尊重した反応をしたりといった、いくつかのテクニックを身に付けましょう。これは、ほとんどの英語学習書や教科書には載っていませんが、仕事で英語を使う場合、不可欠なテクニックです。同時に、日本語の発想のままそれを英語に置き換えると、相手は「何かへんだ」と感じることがある、ということを踏まえておくことも大切です」
「ただし、仕事ではさらにもう一つ上、第3段階を目指す必要があります。それは『いい人』で終わらず、言うべきときには適切にNOと言えるという段階です。とはいえ、一気にここまで行くのは難しいですから、まずは1段階ずつ登って行くのがよいでしょう」


『グローバルビジネス英会話
Basic』
田中宏昌、佐藤洋一著
ビジネス英語は「使ってナンボ」の世界。1)今の「手持ちの英語」を最大限生かす方法、2)英語の非ネイティブスピーカー同士がうまく仕事をしていくコツ、3)よく使う英語表現、を紹介しています。
