監修 日向清人
英文作成・校正 Robin E Sowden

定冠詞 definite article


1 定冠詞の役割

 そもそも定冠詞のあとにくる名詞は、人、土地、物体、観念、感情といった事物を指し示すものですが、それだけでは、そこに示されている事物のうち、特定のものを指しているのか、それともその事物一般、すなわち「不特定」のものを指しているのかがはっきりしません。定冠詞 the または不定冠詞 a/an というラベルが張られて初めて、読み手や聞き手は、そこで取り上げられている名詞が特定のものを指しているのか、あるいは、その名詞が指すもの一般を表しているのかが、わかるのです。


2 定冠詞が使われる場面

 1で説明したように、その名詞が指す事物を一般的に取り上げるのではなく、個別の具体的なものとして取り上げている場合、すなわち、「特定している」ときに、冠詞を付けます。では、どのような場合を指して「特定」しているとされるのでしょうか。「特定している」とされるのは以下の6つのケースです。

(1)特殊な形容詞が付いて、特定しているケース

  tallest、fastest、heaviest など、形容詞の最上級は、それが「一番」である性質をもつ以上、ほかに比類するものがないという点で、何かを「特定」していることになります。そこで、the tallest tower、 the fastest plane、 the heaviest material というように、定冠詞が付けられることになります。

 このほか、序数が付いているときも、1つしかない「一定順位」が与えられている以上、「特定」していることになります。したがって、the last attempt、 the first investigation、 the fifth grade、 the 20th century のように定冠詞が付けられます。

 同じように、following、last、 next、 preceding、previous、subsequent など、順番を示す形容詞が付けられているときも、定冠詞を付けます。

[注] 次のような一定のイディオムでは、逆に定冠詞は使われませんので注意が必要です。

The picture seems at first glance to look good.

 同様に、only、 sole、 current、 present といった形容詞も、それが付くことで、ほかに類するものがなく、したがって「特定」しているといえるようになります。

(2)名詞が特殊であるケース

 その名詞が表しているもの自体、最初から「どれであるか」が決まっており、その意味で「特定」しているものがあります。例えば the past、 the present、 the future、 the 1960s、the early 1990s、 the world、 the north、 the east、 the earth、 the south などです。

「たった1つしかない」 という意味では、特定の機関なども同じです。

the police 、the army、 the Patent Office、 the Civil Service

 略称で通っている国際機関そのほかの団体については、それがアルファベットを読み上げる形式の略称であれば、定冠詞が付きます。

the YMCA、 the WTO、 the UN

 これに対して、その略称を音に従って1つの単語であるかのように扱うケースでは、定冠詞を付けません。

NASA、 JETRO、 JIC

(3)そのタイプに属しているものを総称するケース

 定冠詞プラス可算名詞(あるいは名詞の役割を果たすフレーズ)で、あるタイプのものを総称しようとする場合があります。

The Macintosh SE 30 is a computer that processes data at unbelievable speeds and in staggering quantities.

 ここで取り上げられている the Macintosh SE 30 は、特定のコンピュータを指しているのではなく、Macintosh SE30 と称される機種を総称しているものです。その機種に属するコンピュータの数は具体的に多数あるでしょうが、機種としては1つであり、その意味で「特定している」と言えます。同じように、機種あるいはモデルとしては1種類しかなく、特定していると言えるものに、the Ford Pinto、the IBM 360、the Polaroid One-Step、the Honda CVCC などがあります。

 このようにあるタイプを総称しようとする場合、冠詞なしでその名詞の複数形、または不定冠詞プラスその名詞という形もあり得ます。つまり、the Macintosh SE 30 に代えて、Macintosh SE 30s または、a Macintosh SE 30 といった書き方、言い方でも総称することができます。

表現の使い分け方

A:定冠詞プラス名詞 = The Macintosh SE 30

B:不定冠詞プラス名詞 = a Macintosh SE 30

C:冠詞なしの複数形 = Macintosh SE 30s

 A がもっとも「堅い」言い方で、文書では使われても、話し言葉で使われることはあまりありません。B、C はいずれも、代表例として、そのタイプに属するものを1つまたは多数取り上げながら、代表しているそのタイプ全体の話をしています。この場合、最もよく耳にするのは、C の「冠詞なしの複数形」です。

(4)すでに話の中に出てきているとき

 話の中で一度登場した事柄を再度取り上げる際は、定冠詞を付けて、すでに出てきた(したがって「特定している」)ものであることを示します。

We were sorry to receive your letter of May 5, 1993, informing us of an error in our carriage charges.
The error was due to an incorrect entry in our records which has now been rectified.

 あとから出てくる名詞が、先行している名詞と密接な関係があり、その意味で「すでに話の中に出てきているのも同然」という場合も、やはり定冠詞を使います。

We tried to get out of the meeting room, but the door was locked.
(We tried to get out of the meeting room, but the door of the room was locked. という意味ですが、実際にはこういう言い方はくどいので、of the room に当たる部分は省略されます)

He stopped and lit a match. The wind almost blew out the flame.

(5)修飾句などが続き、名詞の指す範囲が絞られているとき

 名詞のあとに、それがどのようなものであるかを表す形容詞や、ほかの修飾句が続いており、絞りがかかっている(言い換えれば「特定している」)ケースでは、その名詞に定冠詞を付けます。

I have no idea about the geography of China.
The book that I recommend now costs over five pounds.
Newborn babies need the comfort of their mother's arms.

(6)当事者の間で特定のものとわかっているとき

 その名詞自体、すでに当事者同士では具体的に何を指しているかがわかっており、その意味で「特定している」ときも、定冠詞を付けます。

Thank you for your order of June 3, 1999. Please find enclosed the pro-forma invoice you requested.
It takes 60 minutes to get to the museum from downtown.

(7)慣用で the を付ける場合

 こういったケースは、次に取り上げる主な例のほかにも無数にあるので、個別に確認しておく必要があります。

主要運河、河川、海洋名

the Hudson River, the Shinanogawa, the Donau River, the Atlantic Ocean

複数形の固有名詞

the Beatles, the Solomon Islands, the Philippines

ホテルなどの名前

the Hilton Hotel, the Holiday Inn, the Hotel Nikko


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