[Goth Chic--A Connoisseur's Guide to Dark Culture]
by Gavin Baddeley
ゴスロリ少女のルーツもわかる まじめなゴス研究書
サブカルチャーを語るのは難しい。どう論じても、それはアウトサイダーの理屈でしかなく、結局は本質から外れてしまう。
日本には「おたく」というサブカルチャーがあって、その実体について議論が盛んだが、結局、おたく文化とは、「おたくがそのときどきに興味を持っているものの総体」と定義するしかないものだ。「饅頭とは饅頭的なものの総体である」といっているのと同じで、じゃあ何が饅頭なんだよ、と突っ込まれるのは必至だが、ほかには表現のしようがないと思う。
欧米の「ゴス」というサブカルチャーにも似たようなところがある。ゴスはロックのジャンルでもあるが、イギリスのゴス専門レーベル、ナイトブリードの主催者、トレヴァー・ブラムフォードは、「ゴスとはゴス野郎がそのときどきに(at any given moment)興味を持っているもののことさ」といっているそうだ。
ホラー小説の研究をしていると(まあ、研究というほどおおげさなものではないが)、1980年代に登場したこの「ゴス」を避けて通ることはできない。そんなわけで、前から興味があったのだが、たまたま本屋に行ったら、ゴスの研究書が出ていた。それが、Gavin
Baddeley(ギャビン・バッドリー)という人のGoth Chic (『ゴス・シック』)である。
題名は、もちろん、「ゴシック」と、「ゴス」と、「シックな装い」というときの「シック」とを合成したもの。ゴスは、ヨーロッパ中世のゴシック様式に由来する言葉で、そのゴシックの20世紀末的な表現と考えることができる。平凡社の世界大百科事典を引用すれば、本来のゴシックとは次のようなものである。
「元来〈ゴート人の〉を意味する語。ゲルマン人の未洗練な流儀に対する蔑称の語調をもつ。当初、特定の教会建築様式を指すものであったが、のちに美術様式全般に拡張して用いられた。さらに、たんに美術ばかりか、文学、音楽、思想など多様な文化領域においても〈ゴシック的〉なる概念の使用が提唱され、精神史的文脈における定義と解明とが求められるようになった」
イギリスでは18世紀から「ゴシック・リバイバル」と呼ばれるゴシック復活運動が起こって、ゴシック小説(今のホラーの先祖)がベストセラーになり、ゴシック様式の建物が建てられたが(現存の国会議事堂がその代表)、そのころから今のゴスに通じる感性が芽生えた。陽光を浴びる緑の草原を美しいと感じるのは普通だが、それとは正反対の、嵐の夜の墓地に荘厳(sublime)な美を感じる美意識がゴシックなのだという。
西洋ではその後ロマン主義が興り、19世紀末にはロマン主義の堕落した形態であるデカダンが流行したが、その移り変わりのあいだにゴシックは変質し、今の「ゴス」になった、というのがバッドリーさんの主張である。現代のゴシックを要約して、バッドリーさんは次のように述べている。
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