| 海外の大学院で翻訳・通訳を教えるプロフェッショナルに、各国の教育事情やプログラムの特徴を聞きました。
オーストラリアではコミュニティ通訳(医療、警察、法廷などの現場で活躍する)の需要が高く、また、今後日本でもこのような形態の通訳に対する需要が拡大することが見込まれます。Macquarie
Universityの通訳・翻訳プログラムのように、カリキュラムの一環としてコミュニティ通訳を学ぶ機会が提供されるプログラムで学ぶ意義は大変大きいでしょう。さらに、日本とは異なり、オーストラリアには翻訳・通訳の国家資格(NAATI)が存在し、同プログラムで学べばこの資格を取得することも可能です。通訳・翻訳者として第一線で活躍している方々も多く輩出しています。
Macquarie Universityの言語学部に属する翻訳・通訳プログラムは、言語学機関としてはオーストラリアでも最大規模を誇り、大学院課程だけでも科目履修主体のプログラムに900人以上、研究主体のプログラムに約100人の学生を抱えています。辞書編集・コーパス言語学、音声・音韻学、コミュニケーション障害などの研究に定評があり、近年は体系機能言語学、発話・聴覚・言語教育などに力を注いでいます。通訳・翻訳は経験のみならず、いかに理論的知識に基づき実践においてフレキシブルに応用できるかがカギであるため、言語学における本学部の経験と蓄積が果たす役割は大きいでしょう。また、本プログラムの通訳・翻訳教育者の大半が通訳・翻訳分野などの研究にも携わっていることから、学習者のニーズを的確にとらえた指導を実現することが可能です。カリキュラムにおいては、従来型にありがちな教師側がある限られたコンテクストにおける答えを学習者に与える形式ではなく、各言語のニーズに見合ったイノベーティブな教授法(インターンシップやプロジェクトなどを用いた学習者主体型アプローチ)を採用しています。
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Monterey Institute of International Studies(MIIS) Graduate
School of Translation and Interpretation(GSTI) http://translate.miis.edu/
助教授
武田珂代子さん | |
アメリカの大学院で、英日・日英翻訳と通訳両方のプログラムを提供しているのはMIISのみです。他に大学院レベルのプログラムを提供しているところがありますが、日英方向の翻訳に特化しています。したがって「なぜ通訳・翻訳をアメリカで学ぶのか」という問いは「なぜMIISか」と言い換えることができるでしょう。まず、英語環境ですので、言語面だけでなく文化面での知識が日常的に吸収できます。環境政策やマーケティングなど他学部の授業も選択科目として学べます。日英方向の翻訳・通訳は英語ネイティブの教師が英語で授業を行い、英日方向は日本語ネイティブの教師が日本語で授業を行います。学習はアメリカ人学生とペアを組んでのもの。アメリカでは、日英・英日の翻訳・通訳者に対する需要は非常に高く、就職率は毎年100パーセントです。特に、IT、自動車関連で継続的な実績があります。インターンシップの機会も豊富で、スタンフォード大学病院、アメリカ政府(国務省、国防総省)、IT・自動車会社、翻訳・通訳エージェンシーなどで毎夏、多くの学生が実際の翻訳・通訳現場を体験しています。
MIISは、1955年の創立以来、言語と文化の学習を通じた国際理解の促進に焦点を当ててきた大学です。2005年、米東部の名門ミドルベリー大学(Middlebury
College)の系列校となりました。国際政策、翻訳・通訳、言語教育法、国際経営管理の4分野の大学院教育に特化し、約800人の大学院生のうち、3分の1以上をアメリカ国外からの留学生が占めます。翻訳・通訳部門であるGSTIは1968年創設。アメリカで唯一、英語・日本語間の翻訳・通訳プログラムを大学院レベルで提供する機関として知られています。少人数制で、基礎から実践まで徹底的に指導します。また、多言語環境でリレー通訳など国際会議に即した訓練を提供しています。さらに、翻訳支援ツールの利用やローカリゼーション管理を学習科目としていち早くプログラムに取り入れるなど、新分野への取り組みにも積極的です。
イギリスは、ここ数百年の歴史を牛耳ってきたヨーロッパの今や中心的な存在であり、英語表現やメンタリティの背景にあるヨーロッパ全体の歴史や文化に日常的に触れることができるのが大きな特長です。歴史的にアフリカや中東との関わりも深いため、幅広く厚みのある情報が入ってきます。またヨーロッパにはEU・国連事務所など国際機関が集中しており、毎年、欧州委員会と国連ウィーン国連事務所を訪れて、進行中の会議のブース内での通訳練習を行います。
翻訳および翻訳論の授業では、多分野の翻訳を行って経験を積むだけでなく、問題点の分析、解決策の種類・選択方法にも注目し、自分なりの系統だった翻訳ストラテジーを身につけるよう、訓練を積みます。最後の修士論文あるいは翻訳・通訳プロジェクトでは、それまでの訓練の中で浮上してきた疑問点について理解を深めるか、実際に訳を行うことで訓練の結果を発揮することになります。
Newcastle UniversityのSchool of Modern Languagesでは、フランス語、ドイツ語、スペイン語、ポルトガル語、中国語、日本語の言語・地域研究、映画学および翻訳・通訳の各分野の研究を行っています。翻訳・通訳部門では、Diplomaから修士号・博士号レベルまでの翻訳・通訳プログラムを網羅しています。修士プログラムで翻訳、通訳、翻訳・通訳、翻訳研究という4つの選択肢を持つ大学院はイギリスではここのみです。
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