監修 日向清人

***ビジネス英語通になるための25話***

第21話

■資本と資本金に関する誤解

 今回は、誤解の多い資本 (stockholders' equity, shareholders' equity, owners' equity) と資本金 capital stock の話です。誤解のパターンを強いて分類すれば2つあります。

  一つは資本や資本金を金銭と勘違いするケース。そもそも資本(わが国のバランスシート上は「資本の部」と言います)は、カネの具体的利用形態を示す資産 assets から、人様に返すべきカネ liabilities を差し引いて求める計算上の数字で、会社の財産とは区別して考える必要があります。

  資本金も抽象的なものです。日本では後述するとおり、債権者保護のために出資金を実際に払い込む必要がありますが、米デラウェア州の場合、株券を発行するまでは払い込みを要しません。またイギリスの会社法は、資本金を構成する発行済み株式が払い込み済みであれば paid-in (またはpaid-up) capitalとし、そうでなければ uncalled capital と区別するぐらいで、資本金イコール払い込まれた出資金という関係がありません。要求 call があれば払い込むよ、という約束だけでも資本金が成立しているのです。

  第2に、資本と資本金がよく混同されているようです。資本の中身は大ざっぱに言うと株主の出資金である資本金と、それを元に長年稼いできた利益剰余金(retained earnings、内部留保とも言います)の2つの部分から成り、その意味で資本金は資本の一部という関係にあります。繰り返しますが、資本は資本金と利益剰余金という2つの柱から成り、歴史のある大手企業であれば、後者のウエートがずっと大きいのが正常です。例えばスープで有名なキャンベル社のバランスシートを見ると、資本の部のうち資本金は1割に満たず、9割以上が長年稼いできた利益剰余金です。リターンで言えば、投下元本に対して2000パーセントを優に超える蓄積があることになります。

  ところで先述したとおり会社財産と混同されていることも関係しているのでしょうが、日本ではどういう会社かを言う時に、結構、資本金が引き合いに出されます。例えば業界紙でどこかの会社が取り上げられるときは、本社所在地、社長名と並んで資本金の額が出ていたりします。これに対してアメリカでは、売り上げや利益など収益力を前面に出し、過去に株主がいくら出資しているかということである資本金の額はおよそ問題にされません。

■日本で資本金が重視される理由

  それでは、なぜわが国では資本金が重視されるのでしょうか。原因は商法にあるようです。戦前にドイツ法を基につくられた商法では債権者保護を目的としており、投資家保護を重視する英米の考え方と対照的です。例えば資本金の額は英米の投資家から見れば、出資者がコミットしている金額というだけの話ですが、日本では、本来、自由に処分していいはずのもうけに制約を加える役目を果たします。もうけをコップの水に例えれば、日本では資本金という名のコップを用意した上で、コップからあふれた水だけ飲んでいいよという制度にすることで、配当可能利益を制限しているのです。

  法律の定める計算方法に従うと配当可能利益がないはずなのに、経理操作で違法配当をするのは、タコが自分の足を食べるとされることから、俗に「タコ配当」と言われます。当然ながら、配当可能利益に対する制限という考え方がない以上、これに相当するビジネス英語はありません。ただ、粉飾決算については window dressing があります。必ずしも違法ではない不当な経理操作には、イギリス人独特の皮肉を感じさせる creative accounting という「おしゃれな」表現もあります。

  いんちきな経理は financial shenanigans 、accounting gimmicks (accounting tricks と同じこと)と言い、これらを見抜くのは spot または uncover ですが、改まった場面では、falsification of accounts が普通です。日本語で「不正経理」に相当します。なお帳簿を改ざんするのは fiddle the books が、cook the books という面白い言い方も使います。改まった場面では falsify accounts といいます。


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