第58話:旧約聖書の創世記(Genesis)と遺伝子(gene)
「生む、生じる」のイメージを持つ語根“generare”
松澤:今回は「語源ランキングトップ50」で第15位にある“generare”(生む、生じる)です。
学生:これまでは動詞を中心に語源を学習してきたので、動詞以外の品詞の話をしてくれませんか。
松澤:“generare”から派生した英単語は、generate(発生する)以外にはあまりないので、動詞以外の品詞についてもお話しします。Genesis というロックグループがあったのを知っていますか。genesis はもともとギリシャ語で、「誕生、起源」という意味です。ラテン語では genesis は「(誕生日の)星座」という意味になります。英語の Genesis は「旧約聖書の創世記」の意味です。大文字で書いたのは、創世記の意味で使うときはこのように書くからです。小文字の genesis は「起源、発生」という意味です。
学生:「生む、生じる」というのは、「生命の起源」というイメージも持っているのですね。何だか壮大なお話ですね。
松澤:このイメージを描きながら、いくつか単語を調べてみましょう。わかりやすいように表にしてみました。ラテン語の“generare”はもともとギリシャ語から来たので、ラテン語に関連する派生語動詞が少なくなっています。
| ラテン語 |
英語 |
解説 |
| generare:生命あるものを生じること |
generate:生じる、発生する |
英語では単に「生じる」ですが、ラテン語では、「生命あるものを生じること」という意味になります。 |
| generator:(父親など)子を生み出す者 |
generator:発電機、発生機 |
ラテン語も英語とつづりが同じです。ラテン語は「生物として子を生み出す者」のことです。 |
| generosus:生まれの高貴な |
generous:気前のよい、豊富な |
ラテン語ではあくまでも「生まれ」に関する意味があります。generosus は貴族も含めた高貴な家庭の生まれを指します。 |
| genialis:生殖の、婚姻の、多産の |
genial:気候など温暖な、心の温かな、生殖の |
ラテン語では「多産の」という意味です。英語では「成長に適した温暖な」という意味から「優しい、にこやかな」という意味に変わっていきました。 |
| genitalis:生殖の |
genital:生殖の |
ラテン語と英語は同じ意味を持ちます。 |
| genius:(人についている)守護神、非常に優れた創造性 |
genius:天才(人) |
ラテン語の genius は「守護神」という意味で、卓越した天性を持ち、繁殖力を人に与えるものと考えられていました。 |
| genuinus:天性の、生まれつきの |
genuine:本物の、正真正銘の |
もともと備わった天性から、本物のという意味です。 |
| genus:種類、生まれ、起源 |
genus:属、種類 |
英語では「生物学的な種類」を意味し、family と species の中間に位置する「属」に該当します。 |
学生:最近、話題のgene(遺伝子)という単語が見当たりませんね。これこそ“generare”を語源に持つと思ったのですけど。
松澤:残念でしたね。gene という英単語は、できてからまだ100年ほどしか経っていません。gene はラテン語から来たのではなく、ドイツ語から来ています。ドイツ語の Gen はずばり「遺伝子」を意味します。
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