監修 松澤喜好


第62話:ducere([水、家畜などを]導く):第35話の続き


「(水、家畜などを)導く」のイメージを持つ語根“ducere

松澤:今回は「語源ランキングトップ50」で第21位にある“ducere”(導く)です。“ducere”のイメージは第35話ですでに説明しましたが、“ducere”もラテン語の派生語動詞が多いので、ラテン語・フランス語・英語の表で整理し直しました。第35話と併せて読んで、より強くイメージできるようにしてください。

学生:ラテン語・フランス語・英語を併記して学習するのには、だいぶ慣れてきました。毎回、これらの単語がよく似ているのに驚かされます。英語をこのようにしてマスターすれば、フランス語はその10分の1の勉強量でマスターできるという話も、本当だという気がしてきました。

松澤:そうはいっても、継続学習は必ず必要ですよ。さて、今回と取り上げた“ducere”は「導く」という意味があります。第35話では、「ローマ時代の石橋の上の溝」というイメージでとらえました。「水を導くもの」でしたね。“ducere”は、「水、家畜、人、商品をある場所から別の場所に導く」というイメージです。水の場合は「溝を作って導く」というイメージでしたが、家畜の場合は「引っ張って導く」というイメージで、人の場合は「誘って導く」というイメージがあります。

接頭辞 ラテン語 フランス語 英単語
ab-(離れて、遠くに) abducere(連れて行く、誘惑する) 関連するフランス語はありません。 abduct(誘拐する)
ad-=(…に) adducere(人や物をある場所まで導く、人をある気持ちにさせる) adducteur([ガスや石油などをパイプで引く]導水の)
※これは形容詞です。
adduct(内転させる)
※医学用語です。
con-(ともに) conducere(導き集める) conduire(連れて行く、案内する) conduce(ある結果に導く)
con-(ともに) conducere(導き集める)
conducere の過去分詞形は conductum
conduit(配管、ダクト)
conduite(行動、品行、操縦、指揮)
conduct(行為、振る舞い、先導する、案内)
de-(下に、減少して) deducere(導き降ろす) deduire(差し引く、控除する、…と推論する) deduce(推論する)
de-=dis-(ばらばらに、下に) deducere(導き降ろす)
deducere の過去分詞形は deductum
deduction(差し引き、控除、推論)
deductif([論理学]演繹による)
deduct(控除する)
e-=ex-(外に) educere(導き出す)
educare(育てる、教育する)
eduquer(…を教育する)
education(教育)
educe(結論を引き出す)
educate(教育する)
in-(内に、中に) inducere(導き覆う、布などを引っ張って覆う) induire(結論する、…から…を帰納する)
inducteur(電気を誘導する)
induce(勧誘する、説いて…をさせる)
intro-(内に) introducere(内に導き入れる、紹介する) introduire(導き入れる、紹介する introduce(導き入れる、紹介する)
prae-(先、あらかじめ、前に) praeducere(前面に導く) produire を参照してください。 produce を参照してください。
pro-(前に) producere(前面に持ち出す、生産する) produire(生産する)
produit(生産物)
produce(生じる、生産する)
product(生産物)
re-(元へ、後へ) reducere(後ろに導く、家に連れ帰る、引退する)

reduire(…を減らす) reduce(量、程度を減らす、縮小する)
se-(それて、外れて) seducere(わきに導く) seduire(…の心を捕らえる、…を魅惑する) seduce(正道から惑わす、悪へそそのかす)
tra-=trans-(向こう側に、横切って) traducere(向こうに導く) traduire(…を翻訳する、…を表現する)
traduction(翻訳)
traduce(中傷する、法を犯す)
transducer(エネルギー変換機)

学生:今回もフランス語と英語が見事に一致していますね。

松澤:フランス語の traduire は「向こうに導く」という語源から、「ほかの言語に翻訳する」という意味に使われるようになったのが面白いですね。英語の translation(翻訳)は translatus(運ぶ)です。フランス語では“ducere”(導く)を使って「翻訳する」というイメージを表します。英語では ferre(運ぶ)を使います。この辺りが面白いところですね。

学生:あれ、どうして latusferre になるんですか。

松澤:信じられないでしょうが、ferre の過去分詞形は latus になるようです。どうしてこうなるのかは、私にもわかりません。それでは、また次回。

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