監修 松澤喜好


第72話:英語の来る(come)とフランス語の来る(venir


「来る」のイメージを持つ語根“venire

松澤:今回は「語源ランキングトップ50」 で第27位にある“venire”(来る)です。活用形は、venio veni ventum(1人称単数現在、完了形、過去分詞形)です。“venire”は、フランス語ではそのまま venir(来る)という基本動詞として、ラテン語と同じような意味で使われています。これに対し、英語には come(来る)というゲルマン語(O.E.)があったために、ラテン語系の言語で使われる“venire”(来る)とは意味が異なっています。いつものように接頭辞・ラテン語・フランス語・英語に分けて一覧表を作成しました。

学生:下の表を見ると、確かにフランス語とラテン語ではほとんど意味が同じなのに、英語ではイメージが少し変化していますね。

接頭辞 ラテン語 フランス語 英語 解説
. venire(来る) venir(来る) venue(法・犯行地、裁判地、開催地) 英語には come(来る)があるので、“venire”は venue にわずかに影響した程度にとどまっています。
ad-(…に、前に) advenire(到着する、現れる) advenir(生じる、偶発する) adventure(冒険) 「…に(危険を冒して)やって来る」というイメージがあります。英語では、来ることよりも「危険を冒す」という意味が強くなっています。英語の advent(キリストの降臨)も同じイメージがあります。
circum-(周りに) circumvenire(包囲する) circonvenir(丸め込む) circumvent(出し抜く、計画して包囲する) 「迂回しつつ、相手より先回りして行く」というイメージです。
con-(ともに、完全に) convenire(集まる、出会う) convenir(適している、都合がよい) convene(会議に人が集まる)
convenient(便利な)
「人がともに集まって来る」というイメージがあります。コンビニエンスストアは「人が集まるところ」というイメージです。
de-(…から離れて) devenire(到達する) devenir(…になる)
※英語の become と同じ意味
関連する英語はありません。 「離れて来る」というイメージから「(親から離れて)将来は何かになる」という意味になりました。
e-=ex-(外に) evenire(現れる、起こる) evenement(出来事) event(出来事) 「外に来て、何かが起こる」というイメージがあります。
in-(うちに、強意) invenire(発見する、出合う) inventer(発明する) invent(発明する) 「新しいことが、偶然または故意にやって来る」というイメージから「発明する」という意味になっています。
inter-=ex-(間に、中に向かって) intervenire(干渉する) intervenir(干渉する、口出しする) intervene(干渉する) 「間に割り込んで来る」というイメージから「干渉する」という意味になっています。
prae-=pre-(あらかじめ、前に) praevenire(先に来る、追い越す) prevenir(前もって知らせる、予告する) prevent(未然に防ぐ) 「あらかじめ来る」というイメージから「前もって知らせることによって、危険などを防ぐ」という意味になっています。
pro-(外へ、前の) provenire(出現する、前に来る) provenir(…から来る、…に由来する) provenance(起源、出所) 「前に来る」というイメージから「由来する」という意味になっています
re-(元に、再び) revenire(戻る) revenir(戻る、再び来る) revenue(所得、収益) 「元のところに来る」というイメージから「戻る」という意味になっています。revenue は投資に対して「戻ってくるお金」を指します。
sub-(下から) subvenire(助けに来る) subvenir(補助・援助を与える) subvene(救済に現れる)
subvention(救済、補助金)
「下から支えるために来る」というイメージから「救済に現れる」という意味になっています。
super-(さらに、超越) supervenire(…を越えて来る) survenir(不意に来る、突発する) supervene(続いて起こる、併発する) 「さらに来る」というイメージから「(追加的に)続いて起こる」という意味になっています。

松澤:2500年前のラテン語と現代のフランス語がほとんど同じということは、感慨深いですね。これからは“venire”を come と同じ感覚で、親しみをもって接していくといいでしょう。

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