監修 松澤喜好


第91話:英語の名前(name)とラテン語の名前(nominare


「名前をつける」のイメージをもつ語根“nominare

松澤:今回は「語源ランキングトップ50」で第44位にある“nominare”(名前をつける)です。活用形は、nomino nominavi nominatum(1人称単数現在、完了形、過去分詞形)です。今回はギリシャ語の語源も併せて解説します。ギリシャ語の「名前」は onoma(または onyma)で、英語では -onym というつづりになります。今回は、ラテン語の nominare(名前をつける)とその名詞形の nomen(名前)、ギリシャ語の onoma=onyma について説明します。

学生:ギリシャ語といえば、日本語にもギリシャ語がたくさん入って来ています。「トラウマ」や「エゴ」もギリシャ語が語源ですよね。ほかにも、星の名前をつけるときに α (アルファ)、β (ベータ)のように、ギリシャ文字が使われています。小学生のときに天文に興味があったので、ギリシャ文字をすべて覚えました。

松澤:よい経験をしましたね。自分が興味をもって覚えたものはなかなか忘れませんよ。これまではギリシャ語の接頭辞についてはあまり説明してきませんでした。今回はギリシャ語の onyma(名前)に付いている接頭辞を使って、ギリシャ語の接頭辞を解説します(表2)。

表1

接頭辞 ラテン語 フランス語 英語 解説
  nominare(名前をつける)
nomen(名前)
nommer(名前をつける)
nom(名前)
nomination(指名、任命)
name(名前をつける)
name(名前)
nomination(指名、任命)
ラテン語の nominare(名前をつける)がフランス語や英語にそのまま入っています。
ag-=ad-(…に) agnomen(添え名、業績を示す名) 関連するフランス語はありません。 agnomen(あだ名、添え名) ad-(…に[添える])+nomen(名前)」というイメージです。agnomen には「軍事的な業績を示すための添え名」という意味があります。
de-(強意、離れて) denominare(名づける) denommer(名づける、命名する) denomination(命名、名称) denominate(ある通貨単位で表す) denomination(命名、名称) この場合の de- は「強意」を意味します。「デノミ」という言葉は「通貨単位を切り下げる」という意味で使われていますが、de- を「下に」と誤って解釈したからだといわれています。もともとの意味は「ある貨幣単位で表す」です。
re-(再び、元に) 関連するラテン語はありません。 renommer(…を再び任命する、再選する)
renom(名声、有名)
renown(名声、有名) renown(名声)のもともとの意味は「再び名前を認めること」です。名声は何度も認知されて得られるものですね。
  nomen(名前) nom(名詞) noun(名詞) 「名詞」という英単語は、古いフランス語(アングロサクソン・フレンチ)の noun から来ています。この noun の語源はフランス語の nom で、nom はさらにラテン語の nomen から来ています。

松澤:下の表は、ギリシャ語の onyma=onoma(名前)からきた -onym というつづりをもつ英単語の表です。-onym はギリシャ語の語源なのでギリシャ語の接頭辞が付きます。

表2

接頭辞 フランス語 英語 解説
onomastique(固有名詞研究) onomast(固有名詞学者) onoma(名前)を研究する人・ことという意味で、フランス語や英語に入っています。
akro-(先頭、最初の部分) sigle(略号) acronym(頭文字語) akro-(最初の部分)+onyma(名前)」というイメージです。「頭文字語」とは USA のように頭文字を組み合わせて作った単語です。フランス語の sigleonoma が語源ではありません。
an-(…なしの) anonyme(匿名の)
anonymat(匿名、作者不明)
anonym(匿名、匿名者) anonymous(匿名の) an-(…なしの)+onyma(名前)」というイメージです。
anti-(反対の) antonyme(反意語、反義語) antonym(反意語、反義語) anti-(反対の)+onyma(名前)」というイメージです。antonyme の反対語は synonyme(同意語)、antonym の反対語は synonym(同意語)です。
auto-(自己の) 関連するフランス語はありません。 autonym(本名) autos-(自己の)+onyma(名前)」というイメージです。
epi-(由来) 関連するフランス語はありません。 eponym(名祖[種族]、地名の由来となった人物名) epi-(由来)+onyma(名前)」というイメージです。
hetero-(ほかの、異なった) 関連するフランス語はありません。 heteronym(同形異音異義語) heteros-(異なる)+onyma(名前)」というイメージです。同じつづりでも発音や意味が異なる単語に使われます。
homo-(同じ) homonyme(同形異義の、同音異義の) homonym(同音異義語、[生物学]同名) homo-(同じ)+onyma(名前)」というイメージです。
meta-(変化) 関連するフランス語はありません。 metonym(換喩[かんゆ]に使用される語) meta-(変換)+onyma(名前)」というイメージです。「換喩」というのは ringmarriage で表すというように、ほかの言葉で言い換えることです。
para-(脇の) paronyme(類音語) paronym(同語源の、同根語) para-(脇の)+onyma(名前)」というイメージです。似たような単語ということです。
pseud-(偽の、見せかけの) pseudonyme(ペンネーム、偽名) pseudonym(ペンネーム、偽名) pseudo-(偽の)+onyma(名前)」というイメージです。
syn-(ともに、類似の) synonyme(同義語、類義語) synonym(同義語、類義語) syn-(類似の)+onyma(名前)」というイメージです。

松澤:英語にはギリシャ語の onyma(名前)を語源にもつ単語がたくさんありますが、フランス語にはあまりないようです。英語は近代になってからもどん欲にギリシャ語を取り入れました。英語は柔軟に言葉を取り入れることで、表現の幅を広げています。

学生:英語には外来語がたくさんありますね。日本語から英語に入った単語もたくさんあります。karaokesushi などが有名ですね。

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