監修 松澤喜好


第99話:ラテン語の走る(currere)と英語の走る(run


「走る」のイメージをもつ語根“currere

松澤:今回は「語源ランキングトップ50」 で第50位にある“currere”(走る)です。活用形は、curro cucurri cursum(1人称単数現在、完了形、過去分詞形)です。

学生:いよいよ「語源ランキングトップ50」の第50位まで来ましたね。これまでは、語源学習は上級者向けだという先入観がありました。「語源ランキングトップ50」のおかげで、語源に馴染むことができ、英単語のもともとの意味がわかるようになってきました。

松澤:語源を正しく理解して、英単語をマスターすることがこの語源コラムの最大の目的でしたね。currere は「語源ランキングトップ50」では第50位ですが、非常に重要な基本単語です。したがって、下の表にあるようにたくさんの動詞が派生しています。ところで、英語の current という単語から何がイメージできますか。

学生:current といえば「電流」を思い浮かべますね。「流れ」というイメージですか。

松澤:英語の current は「流れ、電流」「現在はやっている、現在の」という意味があります。ラテン語の currere も「走る」という意味がありますが、液体や気体に対しても使われます。「液体が走る」ということは「液体が流れる」ということです。「はやり」も新しいファッションなどが多くの人に流れるように広まっていく様子がイメージできますね。

接頭辞 ラテン語 フランス語 英語 解説
  currere(走る) courir(走る) run(走る)
current(流れ、現在の)
フランス語の courir は英語の run と同じ意味で、フランス語でよく使われます。
con-(すっかり、一緒に) concurrere(共に走る、急いで集まる) concourir(同じ目的に向かって協力する)
concourant(努力や力が1点に集中する)
concur(同時に起こる、意見が一致する) concurrent(同時に起こる、並行の、調和・一致する) con-(一緒に)+currere(走る)」というイメージです。2つの事柄が一緒に走ると「同時に発生する」となり、同じ目的に向かって一緒に走ると「協力する」というイメージになります。
de-(下に) decurrere(下に走る) 関連するフランス語はありません。 decurrent(葉が付け根よりも下に伸びた) de-(下に)+currere(走る)」というイメージです。decurrent は大きな辞書にしか載っておらず、あまり使われない単語です。
dis-(隔離して、離れて) discurrere(別々の方向に走る) discours(演説、スピーチ)
disourir(長々と弁じる)
discourse(演説、スピーチ)
discursion(とりとめのない話)
dis-([別々に]離れて)+currere(走る)」というイメージです。演説はもともとは別々の方向に話が進む(走る)ものだったのですね。
ex-(外に) excurrere(走り出る、出撃する) excursion(遠足、小旅行) excursion(遠足、小旅行) ex-(外に)+currere(走る)」というイメージです。もともとは城の中などから外へ走り出すイメージがありました。
in-(内に、中に) incurrere(走り込む) incursion(敵国への一時的な侵入) incur(損失、危険などを被る・招く)
incursion(侵入)
in-(中に)+currere([敵などが]走り込む)」というイメージです。
inter-(間に) intercurrere(間に走りこむ、介入する) 関連するフランス語はありません。 intercourse(性交) inter-(間に)+currere(走り込む)」というイメージです。
oc-=ob-(…に向かって) occurrere(走り迎える) occurrence(単語の出現回数) occur(事故などが起こる)
occurrence(出来事)
oc-(…に向かって[迎えに])+currere(走る)」というイメージです。英語では「事が起こる(走る)」という意味で使われます。
per-(完全に) percurrere(走り抜ける) 関連するフランス語はありません。 percurrent([植物]葉の葉脈が全体に走っている) per-(完全に)+currere(走る)」というイメージです。英語 percurrent は植物学の専門用語ですが、葉脈が全体に走っているというイメージを描いているのが面白いですね。
prae-(あらかじめ) praecurrere(先駆、先導する) precurseur(先駆者) precursor(先駆者、前兆) pre-(あらかじめ、先に)+cursor(走った人)」というイメージです。先を走るのが先駆者のイメージですね。
re-(再び、あとへ) recurrere(走りかえる) recurrent(回帰性の、繰り返し現れる)
recurrence(反復、回帰)
recursive(回帰性の、繰り返し現れる)
recursion(反復、回帰)
re-(繰り返し)+currere(走る)」というイメージです。反復は何度も走るというイメージです。
suc-(下に) succurrere(下へ走る、救援に走る) 関連するフランス語はありません。 succor=succour(救助する) suc-(下に)+currere(走る)」というイメージです。下に走っていって、助けるということです。フランス語には cludere から来た単語はありません。

学生:日本語の先入観をなくせば、英単語のイメージがつかみやすくなりますね。最近、辞書を引きながらペーパーバックを読み始めました。以前は、辞書を引くのが面倒でしたが、語源コラムで語源を勉強したおかげで、ペーパーバックを読みながら辞書を引くのが楽しみになりました。ペーパーバックで知らない単語が出てくると、まず単語のイメージを描きます。次に、辞書で語源を調べてイメージが当たっているかどうかを確かめます。この方法のおかげで、かなりの単語が記憶できるようになりました。

松澤:よかったですね。半年間教えたかいがありました。次回は、第100話到達記念として、語源コラム全体を振り返ります。お楽しみに。

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