家族・友人

日本人の人間関係は本当に冷たいのか!?

回答:葦原恭子(東京学芸大学講師)、河内千春(早稲田大学講師)

Q.  なぜ子どもと親が一緒にご飯を食べないのですか。(イタリア)
A.  たしかに家族の生活リズムがバラバラでそろってご飯を食べない家庭もあるようです。父親(あるいは母親)の通勤時間が長いために、朝まだ子供が寝ているうちに、出かけなければならなかったり、毎日残業で帰りが遅かったりすることも理由の一つでしょう。一方、子どもたちは子どもたちで、夜は学習塾へ通ったり、受験勉強(あるいはゲーム)をしたりしていて忙しく、朝はギリギリまで寝ている習慣がついてしまっている子もいるようです。でも、もちろん、家族そろって食卓を囲む家庭もたくさんありますよ。
Q.  日本では浮気は許されているのですか。(韓国)
A.  日本のテレビドラマでは、「浮気」あるいは「不倫」をテーマにしたものがあり、皆さんも一度は見たことがあるでしょう。では、日本では「浮気」や「不倫」が認められていて、皆に受け入れられているのでしょうか。決してそんなことはありません。ただ、日本で「浮気」は犯罪かというと、刑法に「姦通(かんつう)罪」の規定がないので、犯罪には当たりません(戦前の旧刑法では女性のみに適用される「姦通罪」がありました)。民法上では、配偶者に対する裏切り行為として離婚や慰謝料請求の理由となることもあります。
Q.  日本人はどうして家族を大切にしないのですか。(中国・韓国)
A.  一般的に、日本の若者が成人し、経済的に自立するということは、両親からの独立を意味します。結婚して、新しい家庭を築けばなおさらです。でも、だからといって家族の愛情がなくなってしまうわけでは、もちろんありません。過度に干渉しあわず、程よい距離で相談に乗ったり、本当に困った時には助け合ったりするという愛情表現の仕方もあります。日本人も皆さんのお国のやり方とは違った形で家族を大切にしているのですよ。
Q.  なぜ夫婦がお互いを「パパ」「ママ」と呼び合いますか。(国籍不明)
A.  日本語では、他の人に呼びかける時は、「あなた」の代わりに「~さん」と名前で呼びかけます。ところが、結婚した夫婦は2人だけの時はまだしも、第三者の前で名前を呼び合うのはちょっと恥ずかしいと感じる人がいるようです。また、日本の家庭は子どもを中心に考える傾向があるので、子どもが生まれると子どもの視点を経由した呼び名の「パパ」「ママ」を使い始めます。その際、個人としての自分より、父、母としての自分を強く意識するようになり、夫婦間でも「パパ」「ママ」と呼び合うことが多くなるのです。
Q.  息子はお父さんの前でタバコを吸えますか。(韓国)
A.  日本でもたばこを吸える場所と吸えない場所の区別はありますが、韓国のように目上の人の前でタバコを吸ってはいけないというルールはありません。コンパの席などで、大学生が教授の前で堂々とタバコを吸うこともあります。お酒も同じで、韓国のように目上の人の前でお酒を隠しながら飲むということはありません。父親の前でタバコを吸ったとしても「体に悪いからやめろ」と言われるくらいでしょう。また、子どもの前でたばこを吸う母親を見た時、「子どもの健康に悪いのでは」と思う人は多いですが、道徳的に悪いと思う人は少ないようです。
Q.  妹や弟が、姉や兄より先に結婚してもいいのですか。(韓国)
A.  以前は、長男、長女が先に結婚すべきであると考える親も多く見られました。特に近所の人がお互いの家族構成をすべて知っているような田舎では長男や長女がなかなか結婚しないと、「あとがつかえているから」などと言われたものです。しかし、現在ではそのようなことを気にしない人がどんどん増えています。子供たちが成人した後は、兄弟姉妹の年齢の上下には関係なく、結婚が決まった人から結婚することがほとんどでしょう。
Q.  女性が育児か仕事かを選ばなければならないのはなぜですか。(フランス)
A.  昔の日本には、子育てを含めた家の中の仕事は女性の仕事という考えがありました。今でも男性が自分の奥さんを「家内」とよぶこともあるのはそのためです。働く女性の育児をサポートする法律や社会制度の整備も遅れており、近年になって、育児休暇や子育て後の職場復帰など、子育て支援のしくみがようやく整えられつつあるという状況です。このような中で女性は、物理的にも精神的にも追い詰められ、結局、育児か仕事のどちらかを選ばざるをえなくなっているのです。
Q.  友達と会うのにニ、三週間も前から約束するのはなぜですか。(中国)
A.  日本では、9月か10月ごろになると書店や文具店の店頭に翌年用の手帳の売場ができ、手帳がたくさん売られます。それほど日本人は「予定好き」・「計画好き」なのです。また、「急な誘いは相手に迷惑かも」という考えもあるようです。いくら親しい友達同士でも「今日の午後会わない?」とか「今からあなたの家に行ってもいい?」というのはちょっと唐突で、失礼にあたると感じてしまう人が多いのです。
Q.  高価なプレゼントやお土産を送るのは迷惑ですか。(韓国)
A.  もちろん日本人にとっても、心のこもったプレゼントやお土産はうれしいものです。でも、何かをもらった時に多くの日本人は「お返ししなければ」と考えます。次に会った時に前回のお礼を言うことはもちろん、もらったものと同じくらいの価値があるものを相手に「お返し」としてあげることがマナーのようになっています。もしそれが高価なものだったら、(あなたがそんなことを期待していなくても)高価な「お返し」をしなければと思う人が多く、かえって精神的にも経済的にも負担になってしまうことがあるのです。
Q.  なぜ家族や親しい人とキスやハグをしないのですか。(イスラエル)
A.  恋人や夫婦は別として、日本人にはキスやハグなどで愛情や親しさを表現する習慣がありません。人前では特にそうです。また確かに「愛してる」という人も多くありません。でも友人や家族に対して愛情や親しさを感じていないわけではありません。直接的な言葉や行為よりも、相手のためにいろいろなことをしてあげたり、間接的な優しいことばで愛情表現をしたりするのが普通なのです。実は、元々日本には「愛」という言葉もありませんでした。近代になってキリスト教が日本に紹介されてから、徐々に浸透してきた新しい概念なのです。
Q.  父親の転勤にどうして家族がついていかないのですか。(国籍不明)
A.  家族と離れて父親が一人で転勤することを「単身赴任」といいます。いちばん大きな理由は、子どもの教育問題でしょう。子どもがいる日本の家庭では子どもの生活を中心に考える傾向があるので、転校で子どもの勉強が遅れたり、せっかく親しくなった友達と離れ離れになったりすることを心配して、父親の生活が少し不便になっても一人で転勤することになってしまうのです。母親もまた、夫との夫婦の生活よりも子どもの将来を優先する人が多く、そのような人は夫の「単身赴任」に賛成するのです。
Q.  日本では、年に何度か家族が集まる機会がありますか。(アイルランド)
A.  離れて暮らしている家族や親戚が集まる機会といえば、お正月と八月半ばのお盆ですね。日本人にとってのお正月は、キリスト教国のクリスマスと同じで、家族で静かに迎える日です。会社や学校は年末年始の一週間前後は休みとなります。(キリスト教徒ではない若い日本人にとって、クリスマスは恋人どうしがロマンチックなデートをする日です) お盆は、もともとは先祖をおまつりする夏の行事で、この時期にも休みを取る会社員も多いです。都会に住んでいる人たちが休みに故郷へ帰ることを「帰省」といいます。
Q.  なぜ他人の前では家族を低くして話すのですか。(韓国)
A.  日本には「ウチ」と「ソト」という考え方があり、家族や同じ会社の人は「ウチ」で、自分と同じグループと考え、「ソト」の人と話す時は、謙譲語を使って話します。「ソト」の人に対する尊敬を表すためで、相対敬語といいます。韓国語にも敬語がありますが、これは目上の人に必ず尊敬語を使うというものですね。絶対敬語といいます。ですから日本の会社では「ソト」から、「社長はいらっしゃいますか」という電話がかかると、「社長は今、おりません」と謙譲語を使いますが、韓国語では「社長様は今、いらっしゃいません」といいます。
Q.  どうして日本の男性は育児を手伝わないのですか。(ポーランド)
A.  日本には「子育ては女性の仕事」という考え方が根強くあって、男性の仕事が忙しいことを言い訳にして育児を奥さんに任せきりの家庭 も珍しくありません。でも最近では、積極的に子育てを手伝うお父さんも増えてきたようです。また、社会のあり方も「男女協同参画」の考え方が広まりつつあり、少しずつですが男性の育児休暇の制度なども取り入れられはじめています。
Q.  なぜ長男、長女が大事にされるのですか。(国籍不明)
A.  昔は、長男は家の後継ぎということで大事にされていました。男の子がいなければ長女が家を継ぐということになります。今は、どの子も平等に育てられることが多くなりましたが、初めての子どもは親にとって何もかもが新しい経験ばかりなので、手間をかけてしまうのでしょう。2人目に比べると写真やビデオが多く残っているので、弟や妹は「お兄ちゃんやお姉ちゃんばかり大事にされている」と言われてしまうようです。
Q.  結婚すると女性の名字が変わるのはどうしてですか。(国籍不明)
A.  今の日本の法律では、結婚の時に夫婦どちらかの苗字(姓)を選ぶことになっていますが、男性の姓が98パーセント選ばれています。これは昔の「家」という考え方が残っているからです。結婚して姓が変わることに喜びを感じる女性もいますが、結婚してからも仕事を続ける女性が増えてきて、姓を変えることが不便になってきました。それで、仕事の時だけ旧姓を使い続ける女性や結婚届を出さない女性も増えてきています。
Q.  日本の老人はどうして一人だけで暮らしていますか。(中国)
A.  昔、人生50年と言われていた時代は、子供を育て上げた頃に自分の人生も終わってしまいましたが、今の日本人の平均寿命は80歳以上です。また、女性は男性より長生きなので、女性が一人残ります。子供や孫と一緒に暮らすのを好む人もいますが、一人の方が気楽な生活を楽しむことができるので、一人暮らしをするのです。
Q.  どうして日本の妻は夫を主人と呼ぶのですか。(国籍不明)
A.  日本語では他の人に自分の夫のことを話す時に「主人」と言います。昔から使われていた言葉と思われがちですが、ある調査によれば、1950年代頃から使われ始めた言葉だそうです。結婚して夫の姓を名乗り、「うちの主人が……」と話すことに幸せを感じている女性もいますが、主人という言葉に男尊女卑を感じるから使いたくないという人も増えてきました。

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