食べ物

聞かれると答えられない食べ物の話

回答:葦原恭子(東京学芸大学講師)、インターカルト日本語学校、沢木みずほ(薬食フードライフ研究家)

Q.  ごはんはスプーンで食べませんか。 (韓国)
A.  韓国では器を置き、匙(さじ)ですくって食べますが、日本で匙が普及するのは江戸時代以降です。また、主食の麦・粟・稗などの雑穀は箸では口に運びにくかったため、茶碗を持つようになったのでしょう。
Q.  どうして納豆を食べますか納豆はおいしいですか。 (イタリア)
A.  納豆は大豆を納豆菌で発酵させた食べ物です。キムチ、ヨーグルト、チーズなど世界には気候風土や食生活に合った発酵食品が数多くあるので、納豆だけが特別なわけではありません。日本には、大豆の発酵食品は古代からありましたが、江戸時代に庶民の食べ物として定着しました。江戸の朝に響き渡る納豆売りの声は、町の風物詩でした。
Q.  赤飯にはどんな意味がありますか。 (アイスランド)
A.  弥生時代に日本に伝わってきたお米は、「赤米」という、赤い色をした品種で、今のお米の原種です。当時、米は大変貴重なものだったため、収穫された米で炊いた赤いごはんは、神様へのお供えものでした。これが赤飯のルーツです。その後、白米が主流になりましたが、おめでたいときには、赤い色を出すために、ささげやあずきを入れたお赤飯を炊くようになりました。
Q.  日本ではキムチのような辛いものは食べないのですか。 (韓国)
A.  甘み、塩味、うまみは人間が本能的に求める味ですが、酸味、苦み、辛みをおいしいと感じるためにはトレーニングが必要です。韓国やインドでも、子どもの頃に、薄味からスパイシーな味、辛い味へと、徐々に味覚を慣らしていきますよね。近頃では、キムチは日本でも普通に食べられるようになりましたが、もともと日本の食文化は、薄味で、素材そのものの味を味わうものだったため、刺激的な食べ物はあまり好まれなかったようです。
Q.  食事中にあまり話をしないのはなぜですか。 (フランス)
A.  禅僧道元が精進料理を作る者の責任と食べる者の心構えを記した『赴粥飯法(ふしゅくはんぽう)』に、食事中は話をしてはならないとあります。これが庶民の生活にも影響を与えました。日本では、食事は一人ひとり箱膳でいただくものだったことも関係あるでしょう。食卓を囲んで、会話を楽しみながら食事をするというスタイルが定着したのは、第二次大戦後のことです。
Q.  イタリア料理店が多いのはどうしてですか。 (台湾)
A.  地理的に近い、中国や韓国の料理とは違った意味で、確かに日本にはイタリア料理店がたくさんあります。海産物や麺類(めんるい)、米を多く食すること、調理に水をたくさん使うことなど、食文化に共通点があるためでしょう。日本人が無理なく食べ続けられるパスタの具は、ごはんのおかずにもおいしい。そばやうどんに近い料理なのですね。
Q.  日本のデザートは甘過ぎるように思うのですが......。 (韓国)
A.  料理にみりんや砂糖を使う日本食では、食事で十分な甘みがとれるため、食後に甘いデザートをいただくという習慣はありませんでした。また、日本の伝統的な甘みは、ほかのアジア諸国と同様、豆を原料としたものが多く、これらは甘さを抑えた、さっぱりとしたものです。日本のデザートに甘いものが多いと感じるのは、食生活の欧米化によるところが大きいように思います。
Q.  麺を食べるときに、どうして音をたてますか。 (国籍不明)
A.  麺を食べるときには、音をたてたほうが、おいしさが増す、粋であると思われています。細かい食事の作法が定められた禅寺でも、音をたてて麺をすすることは許されていたといわれています。しかし、会席ではタブー。日本と同様に麺文化が発達しているタイでは、音をたて麺をすすることは礼儀に反すること。レンゲに麺と具をのせて一口ずつ音をたてずにいただきます。
Q.  どうして割り勘にしますかいつも割り勘ですか。 (韓国)
A.  メンバーや状況にもよりますが、対等で親しい間柄を表すという意味や、合理性から、日本では割り勘が好まれています。忙しい都市生活では、「お返し」が負担になるため、その都度精算してしまう、という意味もあるようです。この習慣は、江戸末期に活躍した戯作者(げさくしゃ)、山東京伝が始めたため、当時は「京伝勘定」といわれ、彼は「しっかり者」の代名詞だったそうです。
Q.  お酒を注ぐときはいつもあふれさせますか。 (国籍不明)
A.  本来、お酒は神様に捧げる大切なもので、あふれさせたりこぼしたりすることはありませんでした。居酒屋で、客寄せのためや、お得感を出すために、始まったのでしょう。
Q.  ごはんの上におかずを乗せ、丼で食べるのはなぜですか。 (韓国)
A.  どんぶりのルーツは室町時代の精進料理「芳飯」。その後、江戸時代になって、芝居小屋で供されたウナギ丼が火付けとなり、庶民に広がったと推測されます。出稼ぎの単身男性が多かった江戸の町は屋台が花盛り。せっかちな江戸っ子気質にもマッチしたようで、簡単便利などんぶりはあっという間に広がりました。定番の親子丼は明治生まれです。ラーメンやサンドイッチなど、主食とおかずを組み合わせたプレートは世界にありますね。
Q.  居酒屋では必ず「お通し」が出てきますか。(中国)
A.  お店に入って最初に出される「お通し」は、そのお店の料理に対する姿勢を表したものです。また、お酒を出してから注文された料理を出すまでの時間の埋め合わせの意味もあります。ところが、最近では間に合わせのものですませ、客単価を上げようとする店が増えたことは残念です。ちなみに、関西では「突き出し」といいます。
Q.  お寿司にはわさびを付けないといけませんか。(韓国)
A.  古代から、わさびには殺菌効果があることが知られていました。刺身や寿司など、腐敗が早い生ものを食べる際に、わさびを付けることで、食中毒から身を守るという意味があります。わさびは風味が飛んでしまうので、醤油には溶かず、直接具につけて食べるのが薬効を生かした賢い食べ方です。
Q.  味付けが濃いのはどうしてですか。(韓国)
A.  関東は味が濃く、関西は薄味といわれています。卵焼きなどは、一般に関西はだしを効かせた塩味、関東は砂糖味が好まれます。武家文化で一汁一菜が基本の関東や、寒い地方では、少ないおかずでごはんがたくさん食べられるよう、味を濃厚にする傾向がありました。食文化の地域性が際立っている国として、イタリアやベトナムが挙げられますが、日本も、関東、関西に限らず、地域によってさまざまな特色のある食文化が残っています。
Q.  日本のレストランではどうしてテイクアウトできないんですか。(韓国)
A.  多くの国では、レストランで食べきれなかった料理を持ち帰るということは当然のように行われています。しかし日本では、店が拒否したら持ち帰ることはできない、ということになっています。店で食べるために出している料理であること、もし何か食中毒などの事故があった場合に責任がとれないこと、などがその理由だそうです。
Q.  どうして日本人は抹茶が好きなんですか。(香港)
A.  茶葉の粉末をお湯で溶かしてかきまぜて飲む飲み方は、12世紀に中国から輸入され、その後日本独自の文化として花開きました。お茶には、ビタミン、カテキン、アミノ酸などの栄養や食物繊維が含まれていて、美容と健康にとてもいい飲み物です。抹茶は粉末なので、少量で無駄なく栄養成分を体に取り込むことができるし、いろいろな食品に利用されていて、日本では身近な味となっています。
Q.  日本料理の味付けに、甘いものが多いのはどうしてですか。(国籍不明)
A.  日本料理は、淡白な味付けをして素材のうま味を引き出すのが特徴です。そのため、少しの甘味をつけることで素材の良さが引き出せると考えられたのではないでしょうか。また、「ご飯、汁物、おかず、漬物」というのが典型的な庶民の料理で、甘いデザートなどはありません。体に必要な糖分をとるためには、料理に砂糖を使う必要もあったようです。
Q.  レストランの料理の量が少ないのはどうしてですか。(韓国)
A.  日本人はどちらかというと小食だというのが、一つの理由だと思います。外国で、量が多くて食べきれずに料理を残す日本人をよく見掛けます。また、外国では食べきれずに残してしまったときに、持ち帰ることがよくあるようですが、日本のレストランでは、持ち帰りができるところはあまりないことも理由の一つだと思います。残してしまったら捨てることになるので、もったいないですよね。それで、一品の量があまり多くないのだと思います。
Q.  風邪を引いた時、鍋焼きうどんを食べるのはどうしてですか。(韓国)
A.  風邪を引いたときには、発汗作用があって、体の温まるものを食べるといいといわれています。また、風邪のときはエネルギーも消費するので、エネルギーを補給できるごはんやうどんなどを食べ、水分を多目に取ります。鍋焼きうどんは、普通のどんぶりに入っているうどんに比べて冷めにくく、エネルギーや水分もとることができるので、風邪を引いたときによく食べます。
Q.  日本人はどうしてしゃぶしゃぶのスープを飲まないんですか。おいしいのに。(台湾)
A.  しゃぶしゃぶのスープは捨てるわけではありません。しゃぶしゃぶは、まず、うすいスープでお肉に火を通して食べます。すると、お肉のだしが出ます。お肉のだしが出たら、次に野菜を煮て、食べます。そしてお肉と野菜のだしの出たスープで、うどんを煮たり、雑炊を作ったりします。しゃぶしゃぶのスープを飲まないのは、最後においしいうどんや雑炊を食べるために、とっておくからなんです。
Q.  どうして冬でもレストランでは氷入りの水を出すんですか。(国籍不明)
A.  和食の店では暑いときは水、そうでないときはお茶を出すところもあります。しかし、洋食の店ではほとんどが水ですよね。これは西洋では食事の前には温かい飲み物を飲まないことからきているのだと思います。では、冬に氷の入っている水が出てくるのはなぜかというと、水は冷たいほうがおいしいからだと思います。水道の水をコップに注いでそのまま出す店は、きちんとしていない店だという印象があるのかもしれません。
Q.  食事の時、お皿や茶碗を持って食べるのはどうしてですか。(韓国)
A.  日本の旅館などへ行くと、料理が一人用の小さいお膳にのって出てきます。昔は、一人分の料理をこのようなお膳にのせて、その前に座って食べていました。椅子とテーブルのときと違って、テーブルの下に足が入りませんから、口と器までがちょっと離れてしまいます。これだと食べにくいので、ごはんの茶碗やお碗を持って食べるようになりました。
Q.  どうして立ち食いの店で、立ってそばを食べるのが平気なんですか。(台湾)
A.  そば、にぎり寿司、てんぷら、うなぎのかば焼きなどは、今は日本の代表的な料理だと考えられていますが、江戸時代には貧しい人が食べるもので、地位の高い人や、お金持ちなどが食べるものではありませんでした。当時、江戸(今の東京)には地方から出てきた労働者がたくさんいました。その人たちのために、屋台のお店ができました。そのころの屋台にはテーブルや椅子がなかったので、立って食べていました。それが今も忙しくて早く食べたい人のために残っているのだと思います。
Q.  どうして餃子とご飯を一緒に食べるんですか。(台湾)
A.  餃子が一般的になったのは、第二次世界大戦が終わって、中国から日本へ戻ってきた人が餃子をお店で出すようになってからです。台湾や中国では水餃子が多く、主食と考えられているそうですね。しかし、日本では中に野菜や肉などが入った料理(餃子)は、主食ではなく、おかずだと考えられました。そこで、ごはんに合うように皮の薄い焼き餃子が一般的になったようです。
Q.  ご飯を食べるとき、いただきますというのはどうしてですか。(韓国)
A.  「いただく」は、もともと目上の人から物をもらったときに、それを頭の上に掲げる動作を表す言葉です。つまり、「いただく」は感謝の意を込めた「もらう」の謙譲語ということになります。
現代では、愛情を込めて食べ物を料理してくれた人、その材料を生産してくれた人たち、そしてその材料となった肉や魚や野菜などの自然の恵みに対して「感謝」の気持ちを込めて「いただきます」と言うのだというのが一般的な考え方でしょう。
最近、「レストランや学校給食などでは、お金を払って食べているのだから、そんな言葉は必要ない」という意見のお母さんたちもいるようですが、これは、極端な考え方で、このような人が出てきたということは、ちょっとさびしい気もします。
Q.  どうしてトマトとスイカを食べるときに、砂糖ではなくて塩をかけるのですか。(韓国)
A.  スイカに塩をかける理由については、「甘みを引き出すため」という理由が一般的なようです。人間の舌にある味覚神経は甘みや塩辛さなどの味ごとに別々に存在し、味によってその伝わる速度が異なり、塩辛さは甘みよりも早く伝わるそうです。ですから、スイカに塩をかけて食べると、塩辛さを先に感じ、その後、口の中に広がる甘みを引き立たせるというわけです。
トマトに塩をかけるのも同じ理由だと思います。ある新聞社が、「トマトに何をかけて食べますか?」というアンケートを行ったところ、「何もかけない」が1位で、次いで「塩」でした。(少数派としては、マヨネーズ、ソース、ドレッシングがありましたが、「砂糖」と答えた人はいなかったようです)つまり、トマトは野菜であり、サラダ感覚で食べている人が多いということでしょうか?
Q.  外国人向けへの日本料理紹介で「まんじゅう」がないのはどうしてですか。(アメリカ)
A.  「まんじゅう」は漢字で「饅頭」と書き、もともとは小麦粉を練った皮に肉などを詰めた中国の料理です。(中国では「マントウ」と発音します)
日本には1349年に、中国から帰国した禅宗のお坊さんとともに渡来した林浄因という中国人が伝えたという説があります。(650年以上たった現在でも、この人の開いた菓子店は続いています!)
当時の日本の仏教界では、肉食が禁じられていたので、肉の代わりに小豆で作った甘い餡を用いたといわれています。その後、この製法が日本全国に広がり、各地で工夫を凝らした甘い「和菓子」として発展しました。ですから、ルーツは中国料理ですが、「まんじゅう」は日本を代表するお菓子として、「マントウ」とはまったく違った形、味になったのです。
ちなみに、中国の「マントウ」は日本とは反対のはるか西方にも広がり、トルコやギリシャの料理「マントゥ」となりました。
Q.  どうして居酒屋ではお通しが出てくるのですか。(国籍不明)
A.  居酒屋に行くと、まだ注文をしていないのに簡単な料理つまり「お通し」を出されることが多いようです。
「お通し」の語源は、来店したお客さんの料理の注文が、間違いなく調理場に届いた。つまり「お通しした」という意味を込めて出される料理だからと言われています。それが、次第に注文する前に有無を言わさず出される料理のことを指すようになりました。関西では「突き出し」と呼ぶことが多いようです。
お通しには値段がついていることが多いのですが、現在では「席料」・[テーブルチャージ]の意味であることがほとんどです。ですから、断っても「お通し代」を請求する店もあります。

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