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回答 水谷信子(明海大学教授)

 6 「知りません」と「知らないです」の違いは?

Q
  「知りません」と「知らないです」に何か違いはありますか。何となく「~です」のほうが丁寧かなと感じるのですが。
 
A
 

 入門期の教科書では主に「知りません」を教え、「知らないです」は扱っていないと思います。中級や上級でも積極的には取り上げていないと思います。ところが学習者が日本人の若い人に接すると「知らないです」をよく聞くので、混乱を起こしがちですが、この二つの違いはほとんど説明されていません。

 「です」について辞書類の説明を見ますと、「断定を示す助動詞で、体言や用言の連体形につく」というように書いてあります。例として挙げてあるのは「これは本です」のようなものが主で、動詞や形容詞につく例は見当たりません。「です」は体言つまり名詞や代名詞につくのが基本です。用言つまり動詞や形容詞の連体形のほうはちょっと問題です。話し言葉では終止形と連体形は形の上で区別がありませんので、この定義はあまり役に立たなくなっています。

 「です」は体言につくものとしての地位は確立していますが、用言につくのは不安定な形なのです。昭和の初めごろまで「寒いです」「面白いです」のように形容詞に「です」がつくのを嫌って、「寒い日が続きますね」のように別の形にしたり、「面白いものですね」のように名詞をつけてから「です」をつけたりしました。「用言+です」は過去形が固定せず、不安定です。名詞のあとの「です」は「でした」になって「きのうはいい天気でした」と言いますが、「きのうは寒いでした」「行かないでした」には違和感をもつ人が多いでしょう。

 学習者に簡単に説明するとすれば、「行きません」のほうがきちんと決まった形であるのに対して「行かないです」は流動的な新しい形で、現象的には若い人に多く、保守的な人はあまり使わないという程度のことになると思います。どちらが丁寧かという問題も一概には言えないでしょう。「行きません」には改まった丁寧さがあるのに比べて「行かないです」は、「行く?  ――ううん、行かないよ」のようなくだけた話し方をしていた人が、「行かない」のあとに「です」をつけて即席に丁寧な形に変えたという印象があります。

 ただ、言葉は変わりますから、若い人に人気のあるこの「行かないです」が将来は「行きません」を駆逐してしまうかもしれません。

 
 

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