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回答 水谷信子(明海大学教授)

 10 教師には演技力が必要だと言われましたが......。

Q
  日本語教師養成講座で実習をしています。実習の指導をする先生から、教師には演技力が必要だと言われましたが、どのようにしたらいいかよくわかりません。
 
A
 

 演技力というのはどういうものか、人によって考えが違うかもしれませんが、日本語の教師にどんなことが要求されているかという観点から考えてみましょう。たぶん、その先生のおっしゃるのは、学習者によく理解し納得してもらうように日本語を与えることだと思います。日本語を与えるというのは変な言い方のようですが、教師が日本語を話して学習者に聞かせ、見せるときの姿勢です。テキストに書いてある通りに正しく発音しても、コンピューターのことばのように機械的であっては、学習者に伝わりません。
 たとえば、「そうですか」という短い返事でも、相手の言ったことの内容によってずいぶん違ってきます。
  ――きのう、むかしの友達に会って、たくさん話をしました。
というような楽しい内容だったら、弾んだ声で「そうですか」と言うでしょうし、
  ――ペットが死んでしまったんです。
というのを聞いたら、沈んだ声で「そうですか」と言うでしょう。つまり、「そうですか」というごく短い文でも、場面や感情抜きでは口にすることはないし、同時に顔の表情や体の動きも場面や感情によって変わってくるのです。
 学習者は賢明で、こうしたことをよく理解してくれるものです。わたしはごく入門期の学習者にも、いろいろなことを言って「そうですか」と答えさせます。教師が何か言って学習者が答えるだけでなく、学習者同士で何か言っては「そうですか」という練習をさせるのです。学習者はおもしろがって練習します。あるときわたしが「あした試験をします」と言うと、学習者はいっせいに大げさにため息をつきながら「そうですかア」と言っては、わたしの驚く顔を見て大笑いをしました。このような練習は一度やれば、学習者は感情を込めて話すことに慣れますから、繰り返して練習しなくてもいいようです。
 「そうですか」はひとつの例ですが、文を発音して聞かせるとき、実際の場面を思い浮かべながらやることが大切です。つまり、「生きた」ことばを伝えようという誠意と熱意が教師には必要なのではないでしょうか。

 
 

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