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回答 水谷信子(明海大学教授)

 17 「おがんばりください」がおかしいのはなぜ?

Q
  授業で「謙譲語の例文を考えなさい」と指示したところ、ある学習者が、「試験におがんばりください」という文章を書きました。謙譲語で、「おがんばり」という表現は、私はおかしいと思うのですが......。
 
A
 

 「おがんばりください」がおかしいと感じることは大切です。なぜおかしいのか、そこから考えていくといいと思います。どういう言い方ならおかしくないのでしょうか。まず形から言いますと「お~ください」という形、あるいは文型は、だれが、どんな時に、だれに対して言うのか、それを考えてください。「(椅子に)かけて」より「かけてください」のほうが丁寧、それより「おかけください」はもっと丁寧で、言われたほうはいい気持ちになります。実際に使われるのは、店員がお客に言うような場合でしょう。これは相手を敬う尊敬表現で、謙譲語ではありません。

 謙譲語あるいは謙譲表現は、自分が行うことを相手より低い立場から表すということですから、「渡しましょう」に対して「お渡ししましょう」というようなものが謙譲表現です。一つの語で言えば、「あげる」に対する「さしあげる」、「行く」に対する「まいる」のような語です(謙譲語は単独の語ですから、「謙譲語の例文」ではなく、「謙譲語を使った例文」と言ったほうが正確です)。この出題の意図に沿った例文なら、「結果がわかったらすぐお知らせします/お知らせにまいります」のようなものが適当でしょう。

 「お~ください」という尊敬表現は、すべての動詞に当てはまるのではなく、尊敬の意味と合わないものは「おかしい」のです。尊敬表現は相手を「かっこいい」人として表現するものですから、「がんばる」つまり汗水たらしてあえいでいるような姿とは合いません。同じように「お盗みください」とか「よだれをお出しになる」のような「かっこわるい」動作に使うのはおかしいのです。

 なお、例文を作らせるのは、かなり練習を積んでからのほうがいいでしょう。とくに敬語などは、理解が不十分なうちに例文を作らせると、むだが多くなります。

 
 

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