『できる日本語 初級 本冊』 3日で1課を進める場合
漢字は、ひらがな、カタカナをひと通り学んだ3週目ごろから学習がスタートします。準拠教材『漢字たまご』を教材として、1日30分程度、2日で1課のペースで進めています。課の学習が終了したところで、副教材『わたしのことばノート』を使ってことばの学習を進めます。 校内ではこのほかに、課のスモールトピック(ST)が終了したときなどの切れ目に読み教材を使っています。STと話題が合った内容であれば本冊の「やってみよう」の流れに入れることもあります。読み教材は学習項目のレベルに合わせて選んでいます。 本冊内にも「聞いてみよう」「チャレンジ!」「やってみよう」「もう一度聞こう」など聞く機会は多いのですが、聴解練習として聞くものではありませんので、STや課の終了時などのタイミングで他の初級聴解教材を適宜、使用しています。 作文は「やってみよう」や「話読聞書」から発展させて行っています。 課の進度に合わせて、副教材『わたしの文法ノート』を文法の定着と運用力の強化のために、主に自宅学習用として使用しています。 このようにして、漢字や語彙などの言語的知識を増やすだけでなく、話す、読む、聞く、書くといった言語技能を学生が身に着けていけるよう、学生の様子をしっかり見極めながら、日々、工夫を重ねています。 副教材『わたしのことばノート』の各国語訳はありますか。残念ながら今のところありません。ただ、初出の語彙は練習の中で提示していくので、学習者にとって、あまり負担がないのではないかと思われます。副教材『わたしのことばノート』では『できる日本語 初級 本冊』で扱っている語彙を自分で整理して、覚えられるよう工夫がされているので、ことばを楽しく学習することができます。 実際にこの教科書を使った教師や学習者の感想を聞かせてください。これまでに寄せられた先生方や学習者の声をいくつかご紹介します。 〔先生の声〕 ◆「できる日本語」を使い始めてから、(自分は今までなんてバラバラな授業をしていたんだろう)と反省しました。場面が大切とは思っていたけれど、導入で提示する場面はバラバラで、これでは学習者はついていくのに大変だったんじゃないかって反省しました。そして、何のためにその文型を教えているんだろうという視点が欠けていたことに今頃気づきました。 ◆私はこれまで、目の前にいる学習者が言いたいことを本当に聞くことができていたんだろうかとつくづく思います。今「できる日本語」を通じて、学習者と毎日、新しい発見の連続です。 ◆とにかく学習者がよく話すんですね。それはこの教科書にそういう仕掛けがあるからだと思いますが、「できる日本語」に出会って、私自身の考え方が変わったことも大きいと思います。それまでは、やっぱり「教えよう・教え込もう」としていたんでしょうねえ。 〔学習者の声〕 ◆「できる日本語」は自分で考えないといけないから、最初はちょっと大変でした。でも、慣れてくると、話すことが全然怖くなくなりました。クラスメイトといろいろなことを話すことができて、面白いです。 ◆ルームメイトは、他の教科書を使って勉強しています。それで、この間「勉強している長さ(学習期間)は同じなのに、どうしてそんなに話せるの?」とルームメイトに言われました。 ◆日本人の友達と会うときも、「できること」がいっぱいあるから、ぜんぜん心配しません(※補足:その課の行動目標がはっきりしていることを意味しているのだと思います)。それに、「できること」が多いだけじゃなくて、文法とか、ことばとかもちゃんと勉強するから、安心です。 きっと楽しい授業になるし、さまざまな活動ができるだろうと思いますが、私に使いこなせるか心配です。「できる日本語」シリーズは、これまで何年もの間、日本語学校の現場で試用した後に出版されました。明らかに学習者の発話量は増え、学習者同士、学習者と教師、教師同士の「対話」が増えました。それは、このシリーズが「人とつながる力」を大切にし、「自分のこと/自分の考えを伝える力」「伝え合う・語り合う日本語力」を身につけることを目的にした教科書だからです。ぜひ目の前にいる学習者やこの教科書を使う同僚の先生方といろいろ語り合ったり、それぞれの思いを伝え合ったりしながら、周りの人とコミュニケーションを楽しんでください。「できる日本語」を使って教えることで、日本語教育がますます楽しくなります。そして、いつの間にか「使いこなせている」はずです! 使い方について1課を何時間くらいで進めていけばいいですか。著者の学校では1日の授業時間が4コマ(1コマ50分)なのですが、その中で教科書を使っての授業は2.5コマから3コマです。だいたい1課が8コマ〜9コマぐらいのペースで進めています。学習者の既習度、課によっても若干ペースは異なると思います。日数にすると、1課が2日半から3日というペースになります。 「話してみよう」「チャレンジ!」など、既習項目で発話させる場面がたびたび出てきますが、その目的は何ですか。「話してみよう」には2つの役割があります。1つはそれまでに習った文型や学習項目を使うこと、もう1つは課全体のイメージ作りをすることです。 これまでの教科書の多くは、一段ずつ直線階段を上がるような形で作られています。つまり、その課が終わった後も、繰り返しながら復習していくように作られていないのです。一方、「できる日本語」では、らせん階段を上るように、それまでに習ったことを繰り返し使いながら進みます。その役割をするのが「話してみよう」です。 さらに、こうした既習項目で話をしながら、学習者は「その課で学ぶこと」についてイメージを膨らませていきます。このように「話してみよう」には、2つの役割が与えられています。 また、「チャレンジ!」では、状況イラスト・コマイラストを見ながら「こんなとき日本語で何と言うのだろう」と考え、自分の持っている日本語でまずチャレンジをしてみます。これは日本語で話す動機になります。チャレンジをした後にCDを聞くことによって、学習者自身が発見し、気づきになり、学習意欲を高めることにつながります。具体的な流れについては『できる日本語 初級 教え方ガイド&イラストデータCD-ROM』をご覧ください。 「チャレンジ!」の場面設定や求められている会話は想像できますが、モデル文がないし、学習者に発話を促せられるかどうか不安です。多くの教科書では、モデル文が明確に示されています。でも、それによって、モデル文に依存しすぎてしまうケースが多々見られます。 「できる日本語」シリーズでは、学習者自身の「こんなとき何と言うだろう」と考え、自ら気づくことを大事にしたかったので、最初にモデル会話を文字で示すことはしていません。しかし、状況イラスト・コマイラストからどんな会話がされているかは想像していただけると思います。スクリプトがないと心配……という方は本冊付属CDのPDFデータをご覧ください。 また、「チャレンジ」のコマイラストで学習者にどこを注目してもらったらいいのか、どんな問いかけをしたら学習者から発話が引き出せるのか、という点が不安な方には『できる日本語 初級 教え方ガイド&イラストデータCD-ROM』が参考になると思います。実際の教室でのやりとりをもとにした例が紹介されています。 代入練習などの単純なドリルが少ないような気がするのですが……。導入された学習項目がスムーズに発話できるように練習する部分として、『できる日本語 初級 本冊』と『できる日本語 初中級 本冊』には「言ってみよう」があります。「言ってみよう」は本冊と別冊に分かれています。別冊では単文レベルでの練習、本冊では学習者が遭遇するであろう場面・状況での会話を練習します。練習する量は学習者によって、またクラスによっても変わってきます。別冊で足りなければ、目の前にいる学習者に合わせてキューを考えたり増やしたりしてください。また、口頭練習だけではなく書くことでも定着をはかる場合には、副教材『わたしの文法ノート』が参考になります。 課で学習した文型を復習したいときはどうしたらいいですか。文法解説などはありますか。文法解説は今のところありませんが、本冊巻末の「ポイント一覧」には視覚的にも分かりやすくまとめてあります。「ポイント」とは各チャレンジで扱う学習項目で、教科書の「チャレンジ!」「やってみよう」ページ右下に番号で示されています。巻末資料にある「ポイント一覧」の番号と対応しているので、その日に習った学習項目の復習に使うことができます。 また、副教材『わたしの文法ノート』は各課の最初に「ポイントチェック」という選択式の問題があり、課で学習した内容をチェックすることができます。さらに、それぞれの文型を復習できるような問題や総合的に使える問題なども用意されています。 本書の付属CDは、どんなふうに使えばいいでしょうか。授業では「聞いてみよう」「チャレンジ!」「やってみよう」「もう一度聞こう」のすべてでCDを使っています。例えば、「聞いてみよう」は、その課で学ぶことを「まず聞いてみる」というのが目的です。ですから、「話してみよう」で十分にその課をイメージ化してから、「聞いてみよう」に移るようにしています。CDを聞いた後は、学習者のレベルに合わせて、簡単な質問をしていきます。「今、わからなくてもいい。この課が終わると、分かるようになるんだ」という期待感を持たせるように持っていくことが大切です。 学習者の話によると、自習の時には、イラストを見ながらCDを聞いているそうです。そういう意味でも、イラストが多いので、勉強しやすいだろうと思います。 絵を見て場面を想像できない学生には、どんな工夫をしていますか。イラストを見て場面を想像できないということを避けるために、状況イラストに状況を表す文を4か国語(日本語を含む)でつけています。これまでクラス授業で使ってきた中では、学習者が場面を想像できなかったということはありませんでした。中には、教室で他の学習者の反応をヒントに理解を深めている場合もあるようです。タスクにチャレンジする前に、音を聞くということはしていません。どんなことでもいいので、何かしら学生が発話をしてから音を聞くようにしています。 教科書を「できる日本語」にする前とした後で、教師の授業準備は変わりましたか。はい、変わりました。もちろん文法シラバスの教科書で教えていたときにも、提出する文法項目ごとに教師それぞれが場面状況を考えて導入していました。関係性のない複数の学習項目を同じ日に学習することになるので、それぞれの文法項目の場面を考え、そこに関連を持たせる…となると大変でした。 「できる日本語」は、まず場面設定があり、その場面で必然性のある文法項目が学べるようになっているので、項目ごとに場面状況を設定する必要がなくなりました。その代わりに「やってみよう」や「できる!」などでは学習者や学習の住んでいる場所に合わせた教材を作成することに力を入れています。また「話読聞書」では、教師も自分自身のことや紹介文を読み物として書いたりしています。 ティームティーチングで使う場合、どうやって分担していますか。引き継ぎ/情報共有の工夫があれば教えてください。進度や学習者から出た発話を中心に引き継ぎをしています。「できる!」は1人の教師が進めるのではなくラインでクラスに合わせて計画を立てています。引き継ぎ、情報共有は電話または同報メールで行っています。学習者の作品・成果物などは、これまで以上に共有するようになりました(「共有したいという気持ちが強くなった」と言ったほうがいいかもしれません)。 学生の評価はどのようにしていますか。ペーパーでのアチーブメントテストを3課に一度行っています。語彙、文法を問う問題のほかに、運用できるかを問う問題も含まれています。各課の「できる!」をポートフォリオとして保存したり、パワーポイントやポスターを使っての発表をしたりしています。 短期生のクラスや地域の教室で使う場合など、課の順番にとらわれずに授業をしてもいいものでしょうか。はい、できないことはないと思います。ただ本当に未習の方が使用するときは初めからでなければ難しいと思います。既習だけれども話すことに慣れていない、習った文型文法を使えないという方にはどこから使っていただいても楽しくできると思います。その際は、その課で出てくる学習項目にとらわれず、学習者の発話から判断して、提出される項目以外にも広げていくことをおすすめします。
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