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キュウリとキューカンバ
●心配だったこと
1ヶ月の日本滞在を終えて、ブリスベンの我が家に帰ってきた。
不在中、とても気になっていたことがある。それは、実はオーストラリアにはかなり多い空き巣に入られていないかということでもなければ、車のバッテリーが上がってしまっていないかということでもない。庭に植えて、実をつける寸前までになっていた「地這キュウリ」のことである。
●キュウリを育てる
たぶん想像はつくと思うが、オーストラリアのスーパーで買えるのは、日本のかわいらしいキュウリではなく、ヨーロッパによくある巨大なキューカンバである。中華食材店でも、あるのはキューカンバだ。洋食で煮たりマリネにしたりするのはそれでもいいが、塩もみだとか一夜漬けにするには具合が悪い。というわけで日本の種が置いてある中華食材店で買ってきて、花壇の片隅に植えたのだ。
結果は上出来で、すくすくと育った。種蒔き後2ヶ月ほどで開花し、いまにも結実しようかというところで、僕は日本へと帰省した。
あれから1ヶ月。
細い身体で、けなげにも僕の帰りを待っていてくれるだろうか。それともあのごっついキューカンバを生み出す亜熱帯の容赦ない日差しに、志し半ばでついえてしまっただろうか。
●そして再会
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| これが元キュウリのキューカンバ。普通こういう場合タバコ一箱と比較しますが、今回は大きさが大きさなので免税店で買ってきたタバコ1カートンと比較してみました。 |
家について、すぐに庭に出た。
地面に這ったツタのところどころで、僕は見つけた。……キューカンバを。いや、長さ40センチ、太さ7〜8センチにまで育ちきって、黄色く変色してしまった元キュウリを。
おそらく彼らは2週間ほど前までは、一夜漬けや塩もみにピッタリのキュウリだったに違いにない。だが、亜熱帯の照りつける太陽がさらなる成長を促し、キューカンバへの道をたどることになったのだ。なんだかウルトラマンに出てくる、放射能で異常成長してしまった怪獣のような話だ。
種はキュウリなのに、できあがりはキューカンバ。「氏より育ち」である。
ふと、日本人の子として生まれ、オーストラリアで育っている僕の子どもたちのことが気になった。できることなら、キュウリの繊細さとキューカンバの大きさを兼ね備えてもらいたいのだが、親を見る限りそれは難しい注文だろう。
註……その後の調べで、この時期スーパーで売られる「レバニーズ・キューカンバー」というのが、日本のキュウリと大きさは似ていることが判明。昨日、ぬか漬けに挑戦してみましたが、なかなかでした。
タイムスリップ
●時差がない豪州
「オーストラリアは時差がなくていいですよ」と、常日頃から言っている。
州によって違ったり、サマータイムを導入している州としていない州があったりするが、いつでもどこでも日本とはプラスマイナス2時間以内だから、ほとんど時差がない、と言っても過言ではないだろう。
時差がないというのは、僕のように日本と連絡を取りながら仕事をしている者にとって、すこぶる都合がいい。急を要する用事で電話が必要なときに、「えっとぉ、今は先方何時かなぁ」と気にする必要がないからだ。
旅行などで移動する場合も、時差がないのはいい。先日、日本から豪州へ帰国する時も、夜成田から飛行機に乗って、眠って起きてブリスベンに着いた時には、ちゃんと朝だった。
●だが、しかし…
時差がないのは本当に楽だねえ、と妻と言いながら、空港のビルを出た。その途端に、気がついた。東京は冬でも、ブリスベンは夏であることに。
ビルのドアから出た瞬間、まるで温泉街の客引きのように、熱風が体中にまとわりついた。タクシー乗り場に向かうまでのわずか20メートルほどで、まるで歓楽街のポン引きのように、汗が体中に絡みついてきた。冷房が効いたタクシーに乗っている間は良かった。だが家に着いて降りた途端、まだ午前9時だと言うのにかなりの角度をつけて上がっている南回帰線の夏の太陽から、モロに脳天不意打ちを食らって、僕はクラクラした。
●時差よりもキツイもの
それでも調子に乗って炎天下で芝刈りした。案の定、日射病で寝込んでしまった。
当たり前である。普通なら数ヶ月かけて徐々に冬から夏に季節は移ろいゆくのに、わずか9時間弱でタイムスリップしてしまったのだから……。
「時差は最小……、季節差は最大。」そんな言葉が、もうろうとした僕の頭の中に響いている。
オーストラリアのベストシーズンは夏である。だが日本からのオーストラリア旅行のベストシーズンは、この季節とは限らない。
翌日、異常気象で、最高気温は39度に上がった。39度……。
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