2005年3月7日
第195話:ちょっと無謀なタイ語会話レッスン
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 ここ最近、というか、まだ2週間しか経っていないのだが、ワタシはある人にタイ語を教えている。タイ語の個人レッスンというやつだ。週末の時間を使って、タイ語会話の初歩の初歩からスタート。初歩の初歩とはいっても、ワタシはネイティブではないので、発音に狂いがないように教えなくてはいけないから、ほんの少しだけ緊張させられる。

 ワタシの生徒となっているその人は、仕事の関係で知り合った日本人男性Mさん。Mさんとはそれまでに仕事がらみで何回か顔を合わせていて、会って2回目に、「ヒトミさん、僕がタイ語習いたいって言ったら教えてくれる?」と言われていたのだが、ワタシは適当に聞き流していた。なぜかというと、ワタシは知り合ったタイ人からは「日本語教えてくれる?」と言われ、日本人からは「タイ語教えてくれる?」と言われてたのだが、そういうふうに言い出す人に限って、実はあまり本気で勉強する気がないのが充分わかっていたからだ。もし、本気でその言葉を自分のものにしたかったら、ワタシに個人レッスンを仰ぐよりも、語学学校に通った方がずっと手っ取り早い。Mさんの「習いたい」も一種の挨拶みたいなものだと思って、「やるんだったら真剣にやらないとイヤですよ」と答えたりしていたものの、具体的に話を詰めることはしなかった。そのうち、そう言ってたことも忘れてしまうだろうと思っていたからだ。

 ところが、顔を合わせるたびにその話が出て、しまいには、「占いによると僕は、『2月が習い事を始めるには最適』らしいので、タイ語レッスンの件宜しくお願いします」というメールが来てしまった。「へえ、実はかなり本気で言ってたんだ」と感心するとともに、それなら教えがいもあるかなとちょっとやる気もわく。ワタシ自身、タイ語は比較的真面目に勉強したので、どうせやるならとことんやろうよ!くらいに思っているところがあるのだが、まずはMさんがどの程度のレベルで、それをどの程度までもっていきたいのかをヒアリングすることにした。

 Mさんはバンコクに住んで1年数カ月。最初の3カ月は英会話学校でレッスンを受けて、そのあとすぐに仕事を始めてしまったのでタイ語学校に通った経験はない。「なんでまたタイで英会話を習ったわけ?」と聞くと、「タイ語はタイでしか使えないし、英語の方が汎用性があると思ったから」との答え。それでは、今なぜ“タイ語”なのかというと、「日常生活の中で、普通のタイ人が話しかけてきてくれることが多々あるのに、自分は相手の言っていることが聞き取れないし、どう言ったらいいかわからなくて会話が成立しないから」なのだそう。別に仕事で使いたいとか、使う必要に迫られているとかいうこともない。Mさんの職場のタイ人スタッフは英語で意思疎通が図れるからだ。

 Mさんのタイ語志望動機は、一見なんの変哲もない理由のように思えるかもしれないが、ワタシはこういうふうに思えることが実はいちばん大事なのではと思う。言葉とはそもそもコミュニケーションツールであって、誰かと話したい、話せたらいいなあという素朴な欲求が原動力なのだと思う。試験で何点取るためとか、資格を取るためとか、それもその目的を達成することができれば充実感が得られるとは思うのだが、頑張って勉強した言葉で、話したい相手とコミュニケーションを取れたときの方が、シンプルに感動できるのではないだろうか。

 さて、ヒアリングの結果、Mさんはまったくといっていいほど文法を知らず、また単語の数も恐ろしく少ないことがわかった。彼のリクエストに応じて、シチュエーション別に使いそうな会話や単語をピックアップして、それを丸覚えするという、“ヒトミ式・ちょっと無謀なタイ語会話レッスン”がスタートすることになった。もちろんMさんの当初の要望通り、初回は2月26日に設定した(笑)。

 この“ヒトミ式”、何が無謀かというと、タイ語学習でセオリーとされていることを一切勉強しないのだ。というのも、Mさんはワタシと同い年。申年生まれのワタシたちは四捨五入するともう40歳なので、新しいことを学習するための記憶力も万全とは言い難い。なので、タイ語の声調の種類だとか、タイ文字や発音記号だとか、暗記科目系のものは一切覚えずに、耳で聞いたままをそのまま丸暗記して、それを何度も繰り返すことによって身に付けていくという方法を取ることにした。幸いなことに、Mさんはカラオケ上手なせいか、ワタシの発音した音をそのまま繰り返すことができる。あとは、日常生活で覚えた例文をできる限り多く使うことで、「習うより慣れろ」的に上達していってくれることを期待するばかりだ。

 タイ語レッスンの話を聞きつけて、会社の同僚がMさんにタイ語でいろいろ話しかけてくれるらしい。レッスンは週1回で決して多くないのだが、あとの6日で意識的にタイ語を使って、覚えることの大変さよりも、通じたときの楽しさや感動を早く手にしてほしいなあと密かに祈っている。ということで、このエッセーでその後日談を披露できるように、Mさんには真面目に頑張ってもらわないと、ね?

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