取材・文 杉谷知子
第2回 竹蓋幸生先生
profile

千葉大学教育学部卒業。アメリカ・オハイオ州立大学大学院にて、文学修士、学術博士号を取得。ハワイ大学文理学部(修士課程)客員准教授、オハイオ州立大学社会行動科学部准教授、千葉大学教育学部教授、大阪大学言語文化部教授(併任)などを歴任し、現在千葉大学名誉教授。認知科学と情報理論、システム科学の考え方を用いた英語教育総合システムの開発を行う。CD-ROM教材「Listen to Me!シリーズ」、通信講座「ヒアリングマラソン中級コース」「同 ベーシックkikuzo!」など多数の教材制作も手掛ける。
※記事の内容は取材当時(2012年)のものです。
竹蓋幸生先生は、2014年にご逝去されました。心よりご冥福をお祈り致します。

3年続けて真の英語力を身に付ける

テープレコーダーを手作りして取り組んだ大学時代

高校時代はあまり英語に興味がなく、むしろ物理が大好きな青年だった竹蓋幸生先生だが、小学校の教師をしていた母親に教職に就くことをすすめられ、大学ではなぜか英語の教員養成課程に進んでしまった。大学での英語の授業は高校同様、ほとんどが文法訳読式だったが、ただ1コマだけ例外の授業があった。それが天野一夫先生による音声学の授業だ。


「天野先生の授業では当時高価で珍しかったアメリカ製のテープレコーダーとリンガフォンの教材を使って、発音の練習をさせられました。でもそれまでに発音練習もリスニング練習もほとんどやったことがなかったのでうまくできなくて、しょっちゅう怒られていました。あまりに指導が厳しかったので、パーツを買ってきてオープンリール式テープレコーダーを自作し、家で何度も聞いて発音練習をしたんですよ」。


「でもそれで終わりではなく、それからが苦労の連続でした」と竹蓋先生は当時を振り返る。例えば、天野先生の指示で半ば無理矢理参加させられたSES(Spoken English Society)という課外活動のクラブでは、スピーチコンテストに参加したり、外国人講師の講演を聞いたりすることを求められた。


「先輩たちが英語の講演を聞いてどっと笑うのに、私だけが、何がおかしいのか分からない。いつもみんなから一拍遅れてにやっと笑っていましたが、苦しかったですね」。

アメリカでのリスニング学習はテレビ番組で
竹蓋幸生先生

そうこうしながら大学を卒業し、中学校の英語教員になった竹蓋先生は、生徒たちに自分が教えられるベストの授業をしようと、ますます努力を重ねていく。


「新しいソニーのテープレコーダーを買って、教科書添付の音声テープや『アメリカ口語教本』の音声を暗記するまで聞いていました。だから授業には自分の教科書を持ち込まず、暗記した英語を聞かせながら授業をしていましたね」。


発音はきれいだし、先生自身が真面目に勉強に取り組んでいる良い先生だと生徒たちに評価が高かった竹蓋先生だが、「自分が英語を使ったことがないのに英語を教えていてもいいのだろうか?」と自問自答するようになる。やがて留学を決意した先生はフルブライトの留学生試験を受験。みごとに合格して、アメリカの大学院に留学することになった。


「ところがここでも聞き取れなくて苦労しました。授業は予習して講義の内容が分かっているから大丈夫なのですが、授業以外のナチュラルスピードの英語がまるで分からない。そこで徹底的にテレビを活用することにしました。スポーツ番組やドラマ、バラエティー番組など、自分が好きで興味を持てる番組をとにかく続けて見るようにしたところ、半年ぐらいで徐々に聞き取れるようになりました。でもきちんと聞き取れるようになるには、最終的には3年かかりましたね」。


竹蓋先生のリスニング学習のポイントは、内容的に興味を持てる同じテレビ番組を毎週繰り返し試聴したことである。


「テレビでは音が分からなくても、映像から推測できる部分がたくさんありますから、言葉の前後関係や使われている場面の知識などを活用して内容を推測していったわけです。それ以外に、一般常識や以前に集めた情報などをできるだけ活用して理解する『トップダウンの情報処理手法』も併せて使いました」。


テレビを見る時には辞書は使わない。そして最初はまったくわからなくても、あきらめずに続ける。頑張って聞き続けているうちに、リスニング力は確実にアップしてくるという。


※まず全体を捉え、事前に人間が持っている知識・経験をもとに情報処理を行う情報処理手法

学習効率が高い「3ラウンド・システム」

竹蓋先生はアメリカで音声学とあわせて認知科学やシステム科学などを学び、帰国後、大学で研究を進めた結果、1990年ごろに「3ラウンド・システム(3R)」と呼ばれる指導理論・指導法を開発する。これは、ほかの指導法よりも2~3倍、条件によっては10倍近い効果が上がるとされる学習法で、実際に3R教材を3年間使って勉強した意欲ある大学生のTOEICスコアが、平均で490点から800点まで上がったという結果も出ている。



「3ラウンドでウォームアップ」

3Rは1000時間ヒアリングマラソン(HM)の中で「3ラウンドでウォームアップ」として紹介されている。現実に即した音声素材を教材として使い、互いに関連するように作られた学習作業を段階的に行いつつ、1つの教材を3回断続的に学習していく学習法で、ラウンド1では大まかに内容を理解し、ラウンド2では正確で詳細な理解を、ラウンド3では話の要旨をまとめたり、言葉の背後や行間にあるメッセージをとらえたりすることを目指す。


「HMを効果的に使おうと思ったら、まず忠実に指示を守りながら3ラウンドでウォームアップの教材を確実に勉強してください。初級レベルの方は教材の聞き取りを目指して、この教材が簡単過ぎると思うレベルの方は、3Rという学習法を学ぶつもりで取り組んでほしいと思います」。


竹蓋先生は、HMの他の素材などでも3R学習法を使って学んでみてほしいと言う。


「その際、すべての教材を均等に聞く必要はありません。自分の興味の持てるジャンルの教材をいくつか選んで、それを少なくとも3~4回、注意深く聞いてください。その時にも分からなくても諦めないこと。教材は分からないからこそ価値があるのです。70~80パーセント聞き取れたら満足して、次号の教材を待ちましょう」。


そして、「1000時間ヒアリングマラソン」の場合、1000時間の達成はあくまでひとつの区切りであり、新たなスタート地点だというのが竹蓋先生のアドバイスだ。


「1000時間を終えたら、そこを出発点にしてもう2年間真面目に勉強してみてください。2年目には聞き取った音声を頭の中で追うサイレントシャドーイングを、3年目には聞いて覚えた興味のある表現を独り言で言ってみるようにしましょう。4語前後で意味のあるチャンク単位で独り言を言っているううちに、スピーキング力が身に付きます。そんなふうに学習を重ねていけば、3年後には真に使える英語力がついていると思いますよ」。



  1982年の開講以来、のべ120万人以上にご受講いただいている通信講座「1000時間ヒアリングマラソン」。教材は、旬の素材を使って毎月新たに作られます。また、取り上げられるトピックも、ニュースや映画のほか、ドラマ、インタビューなどバラエティー豊か。だから、楽しく飽きずに無理なく英語学習を続けられます。

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