取材・文 杉谷知子
第6回 引野剛司先生
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甲南女子大学文学部教授。「ジャーナリズムの英語」「アメリカ文化・社会論」などを担当。元毎日新聞社英文毎日編集部長。著書に『VOAで学ぶ ニュース英語の攻め方』(アルク)など。
※記事の内容は取材当時(2012年)のものです。

ニュース英語で教養を高め、英語の総合力をアップする

キリスト教会のEnglish serviceに通った大学時代

英語を話せるようになりたいと思ったのは大学1、2年生の頃。「自分には他に取りえがないので、せめて中学の頃得意だった英語がものになればと軽い気持ちで勉強を始めました」。


そこで、先生は大学の友だちに誘われて、神戸のあるキリスト教会のEnglish service(英語話者向けの英語による礼拝)に出席することに。

「友だちも英語好きで、礼拝後のrefreshments(茶菓で歓談)の時間を目当てに通っていたんですね。私はそれまでに外国人と英語で話をしたことがなかったので、どのぐらい聞き取れるのか、どのぐらい話せるのか、試してみたかった。興味津々で出かけたものの、当然ながら、英語の礼拝はちんぷんかんぷんだし、会話など全くできませんでした」。


引野先生はその後2年間、ほぼ毎週日曜日、このEnglish serviceに通い続けた。「内容をきちんと正確に聞き取れることは一度もなかったけれど、外国の人と会っても臆することがなくなったし、簡単な会話はできるようになりました」。さらにこの友人にならって『英文毎日(Mainichi Daily News)』の購読を始めたり、FENを流し放しにしておいたりするなど、英語に触れる機会を増やすように心掛けたそうだ。

大学院留学で実践的なリスニング力を身に付ける

大学卒業後、引野先生は毎日新聞社に入社し、『英文毎日』の記者となる。そして3年目、フルブライト留学生として、アメリカ・オハイオ大学のSchool of Journalism大学院に留学した。会社から1年限りの留学休職をもらっての留学だった。


「最初の3か月ぐらいは、授業の内容ほとんどわかりませんでした。習うより慣れろで、もう毎日がOn the Job Training。焦らずに少しずつ積み重ねていくうちに、半年ぐらいたったときには、気が付くと授業が分かるようになっていました。留学時代は24時間英語のなかで生活することが楽しくてしょうがなくて、この1年間で実践的なリスニング力が大幅に向上したと思います」 。

ボキャブラリーとリスニングは表裏一体

帰国後、引野先生は『英文毎日』の仕事に復帰する。東京本社の『英文毎日』編集部長をしている頃に、ヒアリングマラソン(HM)に『英文毎日』の記事が転載されたことをきっかけにHMとの付き合いが始まり、現在はHMのニュースセクションの解説を担当している。


「聞くこととボキャブラリーは表裏一体だと思います。つまり、ボキャブラリーがどれだけあるかで、リスニング力が決まってくるということですね。よく学生に言うのですが、[読んで分かる単語]→[聞いて分かる単語]→[書いたり話したりするときに使える単語]という順で、単語数が少なくなってくる。だから、リスニング力やスピーキング力をアップしようと思ったら、まずは読んで分かる、聞いて分かる単語を増やしていくべきだと思います」。


そのためにはいろいろな内容や素材、さまざまな話者の英語にふれることが大切だ。そしてニュースは知らない単語の宝庫であり、常に新しい話題にたくさん出合うことができる。「ニュースに出てくるのは新しい単語や話題ばかりで難しそうだと思うかもしれません。でもね、ニュースに出てくる単語や表現にはあるパターンがあるんですよ。例えば、交通事故のニュースなら、そこで使われている基本的な状況の説明や語彙などはだいたい同じ。それを把握すれば、次からは聞き取れるようになります。そうやっていろいろなジャンルのニュースの英語を聞いていくと、語彙力もリスニング力も高まるはずです」。

簡潔かつ簡単な表現の英語ニュースが役立つ

引野先生ご担当の「ニュースの斬り方」 ニュースを使って聞く力をアップするとともに情報や知識をアップデートできる。

新人記者1年目のころ、当時の編集長から言われた言葉が引野先生は今でも忘れられないという。


「『今の君は英語の記事が書けないだろう。なぜ書けないか。それは言葉を持っていないからだ。例えば、経済なら、企業の記者発表の記事や景気の記事、公定歩合に関する記事などいろいろな記事があるが、それぞれに表現があり、型がある。君がこれからしなければならないことは、そうしたさまざまなニュースの表現の型を徹底的に自分の引き出しに入れていくことだ』と言われたんです。それを実践して、ジャンル別のノートを作って、単語や表現、型などを覚えていきました」。


そうした自分の経験から、できるだけ簡潔、簡単な英単語を使い短いセンテンスで書かれたニュース記事を使って、英語力を付けていくことをすすめている。「当時、私は『TIME』を定期的に読んでいたのですが、国際情勢を知る上ではとても役に立ちましたが、英語学習と言う点では実用的ではありませんでした。『TIME』には凝った表現が多くて、覚えても実際には使えないんですね。むしろAPなど通信社やVoice of Americaの英語ニュースの方がいいと思います」。


そしてニュースから学んだ単語や表現、あるいは話題そのものを日常会話の中で使うことで、英語での世間話のレベルがぐっと高くなると引野先生は言う。


「欧米の人は、日常会話の中でインターナショナルな話題がどれだけできるかで、その人の教養を推し量ります。今、世界で起こっていることを普段のコミュニケーションに自然に取り入れることができるように、HMなどを使って学んでいくといいでしょう。いずれにしても語学学習は継続が命です。上達の仕方には個人差がありますが、ゆっくりでも確実に力は付いていくもの。同じものを何度も繰り返し聞くことが大事だと思います」。



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