取材・文 杉谷知子
第8回 柏木厚子先生
profile

昭和女子大学人間文化学部教授。早稲田大学法学部卒業後、米コロンビア大学大学院修士課程修了。サイマル・アカデミー主任講師を経て現職。専門は英語教育学、応用言語学。
※記事の内容は取材当時(2012年)のものです。

1000時間のリスニングを体験することで英語力をステップアップ

聞き取りづらい英語は予備知識を仕入れることで克服

柏木厚子先生が転職を目指して留学したのは24歳のとき。

「最初に語学留学したイギリスでは、リスニングで特に苦労したことはなかったのですが、困ったのはその後に留学したアメリカの大学院でのことです。それは、ボストンなまりで聞き取りにくいとうわさに聞いていた某教授の授業。まさかねと半信半疑のまま授業に出てみると、本当にまったく聞き取れない。これはとてもショックでした」。


教授の話を理解できなければ、授業についていくことができない。柏木先生は授業を録音して家で聞くようにしたが、それでも何を言っているのか分からない。


「その先生の授業はしっかり予習をして臨むことにしました。予備知識があれば、少しは単語やフレーズが何となく分かるようになります。そして家でテープを聞きながら丁寧に復習する。そんなことを繰り返しているうちに、学期の終わり頃にはなんとか聞き取れるようになりましたね」。

英語の処理速度を上げることでリスニング力をアップ
柏木厚子先生

リスニングができないのは、脳が話される英語のスピードについていけていないからだと思います。話の背景を知らないし、ボキャブラリーも少ない。だから耳で聞いて聞き取れないものは、仮にそのトランスクリプションを読んでもよく理解できないはずです」。


ならば、リーディングの速度がアップすれば、リスニング力も上がるのではないか。そう考えた柏木先生はその頃からたくさん読むことを心がけるようにした。


「読むのはあまり難しくないもの。1ページに10回以上も辞書を引いていたら大変だから、読んでいてつらくならないものがいいですね。5冊読了したころには、リスニングがかなり楽になりました」。


たくさん本を読むというと、辞書を使わずに読む「多読」がいいのか? と伺うと、柏木先生からは「人それぞれですね」という答えが返ってきた。


「私は粘着質なんです(笑)。分からない単語があることがすごくいやなので、辞書を引きながら5冊読み切りました。でも反対に辞書を引きながら読むのが苦手な人もいますよね。だから自分に合った読書法で、ストレスなく勉強していく方がいいと思います」。


先生が担当した学生のなかには、高校で辞書を引かずに速読しろと指導されていたため、「先生、本当に辞書を引いてもいいんですか?」と聞く学生もいるとか。


「辞書を使わない多読・速読も一つの手法ですが、それだけでは正確な語彙力が身に付きません。辞書を使ってきちんとした意味や用法を学ぶこともやはり必要だと思います。日本の英語教育では、従来の文法訳読方式に対する批判からコミュニカティブ・アプローチへと重点が移っていますが、やはり両方とも大切だと私は考えています。例えば、文法やボキャブラリーをしっかり身に付けたうえで留学した学生は、海外でコミュニケーション力を培うことで、英語力がすごく伸びるんですね。反対に基礎をおろそかにして留学すると、英語力はあまり向上しません」。

脳という優秀なコンピューターを活用する

柏木厚子先生ご担当の「英語で歌おう!」。※現在は連載終了。

さて、アメリカ留学から帰国した柏木先生が就職したのは帰国子女ばかりが働く職場だった。彼らの自然かつ流ちょうな英語を前に、「私の4年間の留学は何だったの!?」と打ちのめされた先生は、日本にいながらにして「日本語を聞かない・読まない・話さない」生活を自分に課することにした。


「今思うと、少し変になっていたのかもしれません(笑)。でも2年間、できるだけ日本語で考えないようにして暮らしていたら、ある日、日本語の思考を通さずに英文がふっと出てきた。『え? 今の英語はどこから出てきたの?』とびっくりしました」。


その経験から先生は自分の脳を信用しようと思うようになった。


脳は本当に優秀なコンピューターなんです。ひたすら英語を放り込んでやれば、ちゃんと分析して理解して、アウトプットしてくれるようになる。英語の微妙なニュアンスの違いなど、今は分からなくても、1年後には本当に分かるようになります!」。


ただし、放り込むのはどんな英語でもいいわけではない。


聞き流しは絶対に効果がないので、興味を持って聞く、読むことができる素材を選んでください。ヒアリングマラソン(HM)は毎月とても面白い内容がそろっているので、脳に放り込むにはとてもいいデータです。トランスクリプションを見ないで70~80パーセント聞き取れるものを、意味を分かろうとしながらフォーカスして聞く。そしてわからない20~30パーセントを努力して聞き取ろうとして、もう一度聞く。最後にトランスクリプションを見て、もう一度聞く。こうすることで脳が微調整をしてくれます」。


そんなふうに1000時間聞いていると、必然的にリスニング力がアップし、自然な英語が口から出てくるようになる。柏木先生も「1000時間の効果はものすごくあると思います」と太鼓判を押している。


「1000時間って、実はそんなに大したことないですよね。1日2時間ずつ聞いたとしても500日。1年とちょっとです。HMの1年分の教材を500日かけて学習してもいいわけです。そのうちに、『あれ? こんな単語や表現がどこからか出てきた』という体験をきっとすると思います。『ああ、これ、HMのあのコンテンツにあった』と覚えているかもしれないし、どこで聞いたのかまったく分からないかもしれない。でも一度この体験を通過することで、英語力がぐんとアップし、学習も格段と楽しくなると思います」。



  1982年の開講以来、のべ120万人以上にご受講いただいている通信講座「1000時間ヒアリングマラソン」。教材は、旬の素材を使って毎月新たに作られます。また、取り上げられるトピックも、ニュースや映画のほか、ドラマ、インタビューなどバラエティー豊か。だから、楽しく飽きずに無理なく英語学習を続けられます。

詳細・お申し込みはこちら>>


1000時間ヒアリングマラソン活用法 トップへ

  • アルコムワールドで日記を書く

メルマガ登録