取材・文 杉谷知子
第9回 斉藤一弥先生
profile

カナダ・マギル大学博士号取得、同大学非常勤講師、カナダ・サイモンフレーザー大学特別研究員を経て、ロンドン大学バークベックカレッジ講師。研究分野は、第二言語習得、外国語教育、音声学。最新の心理言語学研究を基に、最も効果的で分かりやすい英語学習方法についてさまざまな論文を国際誌に発表している。
※記事の内容は取材当時(2012年)のものです。

年間1000時間ぐらいを英語学習に充てるのは理想的

英語学習の行き詰まりを留学生との会話で打破

「大学3年生の頃ですね、それまで楽しく続けていた英語学習に行き詰まりを感じたのは。映画を見ると、5割は聞き取れるのに残りがわからない。スクリプトを読まずにニュースを聞くと、核となる大事なところがやっぱり聞き取れない」。


大学入学後、ふと手に取った日常会話の単語集を見て、「受験英語と違って面白い!」と英語を勉強し始めた斉藤一弥先生だが、それまでやっていた学習法ではどんなに努力してもある一定ラインを越えられないというスランプに陥ってしまった。


「ちょうどそんなときに友人が日本に来ている留学生を紹介してくれて、彼らと英語で会話をするようになったんです。すると半年後ぐらいかな、リスニング力が格段にアップしていることに気付いた。越えられない壁はないんだなとそのときに思いましたね」。


最初は当然、相手の言っていることがなかなか聞き取れなかった。"Ahh...""Hmm..."というように相づちを打ち、大きなリアクションを取りながら、とにかく相手の話すことを聞き逃さないように真剣に聞くようにしたという。


コミュニカティブなプレッシャーの中で、相手の話を聞きながら、自分の頭で考え、なおかつ話すという作業が、リスニング力を高めるためには重要なのだと思います」。


学生など日本に住んでいる外国人の多くと話すときに鉄板の話題は「来日の理由」だと斉藤先生。どうして日本に来たのか、日本のどんな文化が好きなのか、何を学んでいるのか、どんな仕事をしているのか──そんなことを聞くと、必ず盛り上がるという。

斉藤一弥先生

「できればいろいろな人と話しましょう。特定の人とばかり話していると、その人の英語はほぼ分かっても、他の人の英語が聞き取りにくくなる。人にはそれぞれ単語や表現、アクセントなどクセがあるので、いろいろな人とさまざまな話題で会話を楽しむと、自分の中の蓄積が増えてくると思います」。


ただし、インタラクティブな英会話だけでなく、テキストや講座、ニュース、映画などを通じての英語学習も忘れないこと。その両方をやることで相乗効果が得られるはずだ。
「中でも私が活用したのは映画です。目で見る映像には、聞くだけの素材と違って、表情や身振り、口の動きなど、いろいろなモードが含まれている上に、映画にはストーリーがあって、分からない部分を自分でguessすることができる。私自身も好きな映画を何度も見てリスニング力を付けました」。

音声システムの違いを知ることが重要

大学卒業後、アメリカとカナダに留学した斉藤先生が博士課程に入る直前に出合ったのが音声学研究。ヒアリングマラソン(HM)では、最新の音声学研究を基にした「聞き取るための発音レッスン」のコーナーを担当している。



「聞き取るための発音レッスン」。※現在は連載終了。2016年4月号からは新連載「これで聞ける! 英語の音」で発音を学習できる。

「英語と日本語の音声システムは圧倒的に異なります。個別音も違うし、リズムも違う。日本語は「□→□→□→□」と均等なリズムですが、英語では音がくっついて「□□↑□↓□□□」などというようにリズム・イントネーションが不均一です。ひたすらリスニングするだけでこうした違いを理解すると、膨大な時間がかかってしまう。英語の音を習得するためには、『ふーん、こんな感じか』と曖昧に分かった気になるのではなく、テキストなどで音声を学んで、『なるほど、こうだからこういう音になるんだ』と英語の仕組みを理解する方が早道だと思います」。


単語のどこにストレスを置くかも大きなポイントとなる。斉藤先生自身もatomicのストレスを先頭のaの上に置いて発音し、相手に全く理解してもらえなかった経験があるそうだ(正しくはoにストレス)。


しかし、だからといって一から順番に全部勉強するのではいやになってしまう。そこで斉藤先生は日本人向けの効率的な英語音声学習法を目下研究中。
「発音についてランキング付けやレベル分けをして、日本人なら最低限これをやれば、英語の音が聞き取れ、発音でき、相手に通じやすくなるという発音学習法を確立してきたいと考えています」。


この発音学研究は今、海外でもホットな分野なのだとか。
「1990年代は単語にスポットが当たっていましたが、2000年以降は発音に焦点が移っています。TOEFLやTOEICにもこうした状況は反映されているし、日本でもおそらく今後、発音により重点が置かれるようになると思いますよ」。


「子どもは成長とともに無意識に言語を習得していきます。大人にその素地や技能がどれだけ残っているかについては専門家の中でも諸説ありますが、私はきっと残っていると考えています。でも大人の言語習得にはどうしても意識的に大量の良質なインプットを行うことが必要。私も大学生の頃、1日3時間は毎日勉強していましたし、やはり年間1000時間ぐらいは英語学習に充てるのが理想的でしょう」。


斉藤先生は、HMのすべてのコーナーでは科学的な研究に基づいた英語学習法が用いられており、しかもフランクで楽しい内容になっていると高く評価している。

「高水準の教材であるHMですが、ただ学ぶだけではもったいない。言葉はそもそも会話をするためのものですから、学習を発展させて、ぜひ自発的にインタラクティブな会話にチャレンジしてみましょう。インターネット上にはLanguage Exchangeの相手を探すサイトもあります。そうすることでますます英語学習が面白くなってくると思います」。



  1982年の開講以来、のべ120万人以上にご受講いただいている通信講座「1000時間ヒアリングマラソン」。教材は、旬の素材を使って毎月新たに作られます。また、取り上げられるトピックも、ニュースや映画のほか、ドラマ、インタビューなどバラエティー豊か。だから、楽しく飽きずに無理なく英語学習を続けられます。

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