世界で活躍する 国際派プロフェッショナル



人気ナンバー2のメロンパンは、抹茶やチョコチップ味もそろえる


カロスギル店はカフェも併設している

開店に当たり、藤原さんがこだわった点は、日本らしさの打ち出し方。韓国では、日本人形や招き猫などを飾り、日本スタイルをうたう居酒屋が人気だったが、Tokyo Panyaの内装は至ってシンプル。

「僕が目指すのは、日本の町中にあるごく普通のパン屋さん。インテリアではなく、パンの味で勝負したかったのです」。

しかし、思い通りの味を出すことには相当苦心した。当時の韓国では、日本の50パーセントほどの材料しか入手できなかった。加えて、乳製品のクオリティーも決して高いとはいえない。そんな状況下で、研究と試作を繰り返し、さらには日本よりも乾燥する気候をも考慮しながら使用する材料を厳選した。また、日本で身に付けたことをそのまま再現するのではなく、塩加減に敏感な韓国人好みの味付けにしたり、カロリーを抑える工夫をしたりと、リサーチしたことを生かす努力も惜しまなかった。試行錯誤の末、オリジナルレシピを完成させ、カレーパン、メロンパン、あんパンなど、20種類の商品を焼いて、店頭に並べた。

オープン当初、お客は1日10名程度だったが、「日本に行かずに日本のパンが食べられる」と喜んでくれるお客の声に手応えを感じたという。日本とほぼ同じ価格設定にしたため、高いと言われることもあったが、少しくらい高くてもおいしいものが食べたいという人たちの支持を得て、お店の存在は少しずつ知られるようになった。そんなある日、思いがけない出来事が起こる。

「朝からお客さんの入りが多くて、焼いても焼いても追い付かないほどでした。あまりにすさまじいのでお客さんに尋ねると、口をそろえてブログを見て来店したと言うんです」。

その前日、韓国で最も人気のあるブロガーが、「日本人が経営するおいしい店」として、藤原さんの店を紹介。これがきっかけとなり、別のブロガーやメディアからも注目を集め、Tokyo Panyaの名はたちまち世間に広まった。以来、投資の申し出やデパートからの出店依頼などが舞い込み、店舗数は拡大。あまりの忙しさに休みが1日しかない年もあったというが、Tokyo Panyaは現在、直営店とフランチャイズ店を合わせて18店舗を展開する、韓国を代表するベーカリーになった。




喜んでもらうことが原動力
成長し続けるパン職人でありたい

起業してからの7年間は、「韓国のパン文化と共に、成長してきた月日」だと藤原さんは振り返る。Tokyo Panyaオープン当時は、韓国で珍しかったメロンパンも、今や、多くの店で見掛けるようになった。また、海外の製菓学校で学んだ人、日本人や欧米人がパン屋を開くケースも増え、ソウルにはおいしいパンを並べる店が急増した。それに比例して、消費者の口も肥えてきている。

「パン作りの技術は、日本、韓国ともに日々進化しています。日本スタイルをうたうからには、常に新しい情報や知識、技術を仕入れる努力をしなければと思っています」。

今後の展開について尋ねると、間髪いれずに「世界に進出したい」と返ってきた。「世界」の中には、ニューヨークも含まれるが、今はパン文化が定着していない国で、パンのおいしさを広めていきたいと考えているそうだ。

「幼稚園児のころ、お皿にソーセージや卵焼きを載せて、父の顔を描いたことがあったんです。すると、すごく褒められて。その時、食べ物で何かを作るのは何て楽しいんだろうと、心が躍ったことを今でも覚えています。その記憶がパン職人としての僕の原点といえるかもしれません。一生懸命作ったもので人に喜んでもらうこと。それが、この先も持ち続けていたい目標です」。



毎朝6時半に始業。いつでも同じ味のパンが提供できるよう心血を注いでいる

取材・文・写真 園田夏香

マガジンアルク』2015年11-12月号掲載



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