世界で活躍する 国際派プロフェッショナル

グローバルに活躍する日本人プロフェッショナルが語る、仕事、自分自身、言葉……。


ペルーのスラムに微笑みを
編み物で女性の自立を支援する

女性自立支援ボランティア 鏑木玲子さん/ペルー


リマのスラムで「先生」と呼ばれる日本人女性

ペルーの首都リマの中でも犯罪率が高く、貧困層が多くを占めるカラバイヨ区。街の東側に広がる砂山には粗末な小屋が無秩序に並び、仕事を求めて移り住んだ地方出身者たちが身を寄せ合って暮らしている。こうしたスラムは繁華街から遠いため、幼子を抱えた母親は働きに出ることもできない。夫は日雇いの場合が多く、収入も不安定だ。貧困は暴力を生み、やがて家庭を崩壊へと導く。しかし自立する手段を持たない女性たちは、自らを取り巻く負のサイクルから逃れられない。

そんな貧困地区の女性たちに「先生」と呼び慕われているのが、日本人ボランティアの鏑木玲子さんだ。69歳を迎えた今も毎日のようにカラバイヨへと通い、女性たちに編み物や刺繍を教えている。鏑木さんが手芸を指導しているのは、ペルーのNGOソシオ・エン・サルー(以下ソシオ)の下部組織として結成されたグループ、「ムヘレス・ウニダス」だ。現在13名の女性がペルー特産のアルパカ毛を使ったニット製品や小物を製作、日本を含む世界各国で支援者を通じ販売されている。



運命の出会い そしてもう一度社会へ

鏑木玲子さん
1945年仙台生まれ。上智大学大学院文学研究科卒業後、渡韓。カトリック系ハンセン病施設で奉仕活動中、後にWHO(国際保健機関)事務局長となる医師の李鍾郁氏と出会い結婚、共に世界各国で暮らす。2002年に結成されたグループ「ムヘレス・ウニダス」で、ペルーの貧困地区に暮らす女性に編み物や刺繍を指導。手芸作品の製作・販売を通して貧しい女性たちの自立を支援している。
鏑木さんたちの作品が購入できるサイト:Maite(マイテ)

語学が得意だった母の影響で英語に興味を持ち、大学ではイギリス文学を学んでいたという鏑木さん。大好きな手芸の技術も、手先が器用だった母に教わったという。そんな母が大学在学中に急逝、彼女を悲しみの淵から救ったのはカトリックの教えだった。

卒業後ボランティアを始めた韓国のカトリック系ハンセン病施設では、主に通訳や英文代筆などを任された。「年に1000通を超す手紙を書かされましたよ。院長の代筆だったので、それらしい言葉を選ばなければならないのが大変でしたね」。鏑木さんの英文ライティング能力は、この期間に飛躍的に伸びたそうだ。

しかし横暴な院長と施設運営の実態に辟易した鏑木さんは次第に体調を崩し、渡韓4年目には点滴で栄養を取るほど心身ともに衰弱してしまう。そんな時に出会ったのが、ボランティア医師として同施設を訪れていた李鍾郁(イジョンウク)さんだ。李さんは「点滴では健康にならない。ちゃんと食べなきゃダメだ」と、鏑木さんを焼肉屋へと誘ってくれたそうだ。「それがね、お肉が食べられたんですよ! それまで水だって喉を通らないくらいだったのにね」。李さんとの馴れ初めを語る鏑木さんの笑顔に、懐かしさが浮かぶ。

1976年に2人は結婚。韓国に2年半暮らした後、夫の感染症研究のためハワイに移住した。その後李さんはフィジーでWHO(世界保健機関)に就職。フィリピン駐在を経て、95年ジュネーブのWHO本部に異動する。2003年、事務局長に就任した李さんは、その後の人生を感染症対策に捧げた。また、鏑木さんも妻として夫を支え続けた。

しかし、一人息子の独立を機に、鏑木さんはもう一度外へ出たいと思うようになる。専業主婦として恵まれた生活を送るより、奉仕の道を望んだのだ。

「私はもともと何かにチャレンジするのが好きなんです。家でじっとしているのは性に合わなかった。社会との接点を失いたくなかったんです」。鏑木さんの想いを聞いた李さんは、アフリカほど危険ではないが、同じく貧困問題を抱える国の一つであるペルーのソシオに相談。こうしてムヘレス・ウニダスが立ち上げられた。02年、鏑木さんはスイスとペルーを行き来しながら、亡き母から受け継いだ技術をカラバイヨの女性たちに教えることになった。57歳の時だった。


大好きな手芸で誰かの役に立てたらうれしい »


ムヘレス・ウニダスの女性たちと(手前右が鏑木さん)


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