世界で活躍する 国際派プロフェッショナル


多言語社会で身に付けたマレーシア流イギリス英語


ACT教育研究所は日本人が多く住むモントキアラ地区にある。ACTは、Atlas(地図)で現在位置を知り、Compass(コンパス)を使って正しい方角へ進み、問題の解決というTreasure(宝物)に導く、との意味が込められている

「予備知識ゼロの状態」でマレーシアでの生活が始まった。日本とは違い一歩外に出れば、マレー語(国語)、英語、中国語、タミール語の多言語社会だ。「ただ、英語がある程度できれば、マレー語ができなくても困ることはありませんでした」。マレーシアではイギリス統治時代に公用語だった英語が、今も広く使われているからだ。

「ここの英語は、マレー語や中国語の影響を受けたイギリス英語。米語との違いや特有の表現などには最初、戸惑いました」。

例えば「エレベーター」は「リフト」、缶なら「ティン」、ガソリンは「ペトラル」という具合で、言い回しも違う。マレー語や中国語など、話し手の母語が語彙に交じりがちなのもマレーシア英語の特徴だ。

日常のやりとりのためにも会話力を伸ばす必要を感じた坂本さんは、英語学校へ通い始める。最初の英語力診断では「筆記はほぼ満点なのに、面接の成績は中の下だったので、筆記試験を受けた本人かどうかを何度も確認されました」と苦笑する。約半年間通い、日本で学んだ英語を磨き直した。

同僚のマレーシア人女性と結婚したことも契機になった。夫人は日本語も話せるが、坂本さんの英語が上達するにつれ、会話はよりコミュニケーションが取りやすい英語になった。「一番効果があるのは、必要に迫られることかもしれませんね」と笑う。

もっとも、坂本さんは中学生の時から英字紙で大リーグの記事を読んだり、試合のラジオ中継を録音してスコアを記録したりしながら英語に触れていた。学ぶ目的が明確なら、後は使って慣れるのが一番だと実感したという。



マレーシアで学ぶ日本人親子をサポート

坂本さんが主宰するACT教育研究所では、約50人の日本人の子どもたちが学んでいる。99年の設立当初は日本人学校の児童・生徒が対象だったが、今ではインターナショナルスクール(以下、インター校)に通う生徒と入学希望の子どもたちが机を並べる。

複数言語を話す人が多いマレーシアでは、進学や就職でも海外に目を向ける人が多く、ここ数年はインター校が急増している。日本企業の駐在員は平均2~3年の滞在だが、滞在期間の長期化や他国への転勤に備えて、子どもの入学を希望する親も多い。

インター校では、主にアメリカやイギリスなどのカリキュラムを英語で学ぶため、それまで日本語環境にいた子どもにはハードルが高い。

「2年ほどで会話ができるレベルまでは上達します。ただし、読解と作文は、自然にできるようにはなりません。特に作文は、書いたものを添削してもらえる環境が必要です」。

つまずきやすいのはエッセイだ。「日本の学校で書く作文は、日記的なんです。その点、インター校で求められるのは意見の根拠。なぜ、どうしてを、決められた形の中で、どれだけ論理的に書けるかが決め手ですが、これは日本の学校ではあまり教えていません」。ACTでは、英語の文章の論理構成や説得力のある論述の仕方を指導している。

生徒の多くは、親の赴任でマレーシアに来た子どもたち。来たばかりで学校との英語のやりとりに慣れていない親から相談を受けることも多い。実際、子どもの学校生活や進学に悩む日本育ちの親が、必要な情報を短期間に集めるのは容易ではない。時には、英語にハンディがある日本人生徒でも試験で力を発揮しやすい科目の選び方や、効果的な勉強法などもアドバイスする。

「日本語でできることを英語でもできるようになる手助けをしています。専門用語が多い科目もありますが、数学や理科などは日本で勉強していたことがかなり役立ちます。インター校の歴史の授業では、通史ではなく特定の時代を学ぶので、年号や出来事を機械的に暗記するのではなく、歴史の流れを理解してその背景を説明する力が必要。勉強の仕方にもコツがあるんです」。

マレーシアに渡って30年。この地の野球文化の発展に貢献しつつ、ここで暮らす日本人親子の水先案内を続けている。



生徒の好きなこと、興味のあることを大切にしながら力を伸ばす指導には「野球のコーチ」の経験が生かされている

取材・文・写真 川崎典子

マガジンアルク』2017年3-4月号掲載



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