世界で活躍する 国際派プロフェッショナル

グローバルに活躍する日本人プロフェッショナルが語る、仕事、自分自身、言葉……。


ヨルダンの砂漠の真ん中で暮らす
シリア難民を支援する

NPO職員 佐々木弘志さん/ヨルダン


12万人が生活する砂漠の中の難民キャンプで支援活動

佐々木弘志さん
1986年ジャカルタ生まれ。慶應義塾大学、一橋大学大学院で開発経済を学び、NPO法人JENでインターンとして活動後、同団体に就職。2012年9月~13年12月ヨルダンに駐在。シリアからの難民が生活するザータリ難民キャンプで、JENの支援の立ち上げ時から国際機関との調整や支援実務に携わる。

※スハルトは、1965年の政変で権力を掌握。68年に大統領に就任し、インドネシアに独裁体制を築いたが、97年の経済危機をきっかけに暴動が発生。民主化運動が拡大し、98年5月に大統領を辞任した。

ヨルダンの首都アンマン近郊の砂漠に、政情不安の続くシリアから逃れてきた12万人が暮らす「ザータリ難民キャンプ」がある。

「難民キャンプというとバラックが並ぶ光景を想像されるかもしれませんが、ザータリは一つの都市。2012年7月に設立されてから難民が急増し、今ではモスクや学校もあり、食料品や衣料品などさまざまな店を経営する人もいます。砂嵐が起こると周囲が見えなくなるほどで、砂塵で喉や鼻が痛くなる過酷な自然環境の中での生活ではありますが……」とキャンプの様子を語るのはNGO団体JENの佐々木弘志さん。ザータリ難民キャンプ支援のプログラムオフィサーとして、12年9月にアンマンオフィスに赴任し、JENの支援の立ち上げ時期から活動に携わってきた27歳の若者だ。

「ジャカルタに暮らしていた中学生の時にスハルト体制の崩壊とその後の混乱※を目の当たりにしました。以来、開発途上国に関心を持つようになったんです」と語る。大学、大学院と開発経済を学び、次第に現地の住民と一緒にプロジェクトを進めていくNGOで活動したくなった。インターンをしていたJENでヨルダン派遣を打診されると「ぜひ行きたい!」と即答したという。

かくして、佐々木さんは、ザータリ難民キャンプで行う支援の責任者として、さまざまな国籍を持つスタッフと共に活動してきた。難民支援についての知識はあったとはいえ、いきなり現場経験ゼロで活動するのは、戸惑いの連続だったらしい。

「難民キャンプでは、刻々と変化する状況に臨機応変に行動することが求められるのですが、当初はなかなか判断できず悩みました」。

支援活動は国連機関のUNHCRや他のNGO団体と協力して進められるが、議論するうちに方針が大きく二転三転することもしばしば。アンマンオフィスにいるフランス人上司シリル・カッパイ氏に「どうしよう?」と手元の携帯電話からメールで相談することもあったそうだ。

頻繁に開かれる英語での会議では、支援の進め方や仕事の担当をめぐって各団体の思惑がぶつかり、タフな交渉の場となることが多いという。佐々木さんが仰天したのは各国出身のスタッフが英語の発音も文法もお構いなしに自らの主張をまくしたてる姿だった。

「日本人は英語の発音に引け目を感じて国際会議でなかなか発言しないといわれますが、他の国の人はそんなことは誰も気にしていない(笑)。驚いたのと同時に、自分の考えを強く主張しなくては駄目なんだと痛感しました。以来僕も遠慮せず、ばりばり発言しています」と笑う。




炎天下に現地スタッフと共にトイレのモニタリング

JENが担当してきた事業の一つがキャンプ内の水衛生の改善。過酷な避難生活における衛生環境の整備は人々の命に直結する緊急の課題だ。トイレなど生活に直結した水回りを管理する仕事をヨルダンの現地スタッフと共に進めていった。

「シリアの人はトイレで紙ではなく水を使います。しかしヨルダンは水資源が非常に乏しいので、節水しないとすぐ水が使えなくなってしまう。また水がない時は石で代用する習慣があり、使った石をトイレにそのまま捨てるので詰まらせてしまうことも多かったです」。

難民の多くは共同生活に慣れておらず、出身地がばらばらなため結束が弱いこともあって、さまざまなトラブルが起きていた。そこで水衛生施設を住民自らが管理する自治組織(ボランティア)を立ち上げたが、当初はなかなか機能しなかったという。支援団体に住民が期待するのは物資や金銭の援助で、ボランティア活動への関心は低かったのだ。

「ボランティアにお金を払うやり方もありますが、自発的な活動が育たない可能性がある。JENの支援活動は難民の自立を助ける自立支援。難民自身が中心となって活動し、支援団体はそれをサポートするという方針なのですが、こうした考えが理解されるまでには時間がかかりました」。


支援活動で求められることとは »


キャンプに暮らすシリア難民の家庭を一軒一軒訪問して、衛生環境を調査する。支援活動には複雑な面もあるが、常に心掛けているのは実直に向かっていくこと


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