世界で活躍する 国際派プロフェッショナル

グローバルに活躍する日本人プロフェッショナルが語る、仕事、自分自身、言葉……。


“共通のゴール”に立ち返って
世界の貧困問題に取り組む

国連職員 田島麻衣子さん/アルメニア


「非」帰国子女系 国連職員として働く日々

田島麻衣子さん
新日本監査法人、JENを経て、2006年より国連WFP勤務。本部資金調達部を経て、07年ラオス企画担当官。11~13年、本部でモニタリング評価、14年6月からは組織の年次予算管理および分析に携わる。オックスフォード大学院修士課程修了。青山学院大学国際政治経済学部卒。高校2年時には、フェンシング都大会準優勝。ブログ

「国連で働いて8年。ラオスの学校給食のプロジェクトや援助の効果に関わる評価など、さまざまな仕事を経験してきました」と語るのはWFP国連世界食糧計画に勤務する田島麻衣子さん。現在は国連機関の駐アルメニア事務所代表を務めるパートナーと共に同国で暮らしながら、イタリア本部に向けて国連WFP全プロジェクトの年次予算管理および分析を行っている。お目にかかったのは、日本への里帰り中のことだった。

「国連には、テレコミューティング制度(※1)や1年、2年といった長期休暇制度があるんです。家族と離れて世界各地で働くケースが多いので、長期休暇を使って家族と過ごしたり、大学院に戻ったり、親の介護をしたりする職員も多いですね。私たちも別々の職場で働く可能性も高いので、お互いに休暇を取って、譲歩し合いながら人生を歩んでいくことになるのだと思います」とにこやかな表情で語る。

さまざまな国の出身者が働く国連の公用語は英語など6言語。世界各地の拠点では現地の言語も生活レベルでは必要になる。「グローバルな職業」の代表ともいえる国連職員は幼少期から海外生活経験が豊富な人が多いのでは……と想像してしまうが、田島さんは日本生まれの日本育ちだ。大学に入学した当時の田島さんの英語力は「文法は知っているが、聞くことも話すことも苦手」という、ごく一般的な日本の大学生のレベルだったという。

「国連では、かなり高度な英語力が必要ですが、頑張ればできるレベルだと思います。現に帰国子女ではない私が働いているのですから」。




人生に大きな影響を与えたフィリピンでの原体験

田島さんが国連に関心を持つようになったのは、大学生のころだ。「いろいろな経験をしてみよう」と仲間と一緒にバックパックを背負ってフィリピンを旅した時に巨大なごみの集積地「スモーキーマウンテン」を訪れショックを受けた。

「ごみの山の周囲に暮らす子どもたちの目が忘れられませんでした。生きるためには平然と人を殺してしまいそうな狂気と悲しみが合わさったような目。ピタリと閉じてしまった彼らの人生の可能性のために、自分にできることはないのかと思うようになりました」。

大学3年時に交換留学で行ったアメリカの大学では、留学生たちとの交流活動で「異なる文化の人と一緒に過ごす楽しさ」も経験した。こうした体験は「貧しい子どもたちのために何かしたい」「さまざまな国の人たちと交流して仕事をしたい」という思いとなり、「国連で働く」ことに関心が高まっていったという。

「フィリピンにはたった2週間滞在しただけなのに、その経験が私の人生の行動の原点になってしまいました。若い時って、ほんのちょっとした経験がその後の人生を左右する大きな影響力を持つことがあるのですね」と田島さん。

もっとも田島さんはその後一直線に国連に就職したわけではない。国連の正規職員になるには英語力はもちろん、修士以上の学位が必要な上に、関連業務の経験者しか採用されない厳しい現実があったのだ。

さらに交換留学から帰国すると就職活動も終盤で、就職の機会自体を逸しかけていた。「会計士なら、就職先があるのでは」と考えた田島さんは、試験勉強に励みアメリカの公認会計士の資格を取得。大手監査法人の国際部への就職を決める。給料も高く、就職活動としては成功だったが、本来の関心とは違う道を歩むことになった。

次第に「一回きりの人生だから本当にやりたい仕事をしたい」という思いが募り、2年ほどで退社することに。NGO団体で数カ月間、財務担当官を務めた後、国連職員を目指し、イギリスのオックスフォード大学大学院に留学。国際問題や開発の勉強をしつつ、英語力のブラッシュアップにも力を注いだ。

国連勤務の道を開いたのは外務省のJPO派遣制度(※2)だった。JPOとして採用され、ついに国連で働くことが実現したのである。ちなみに国連の採用担当の面接官が田島さんを高く評価したのは、会計士としてのキャリアとNGOでの職務経験だった。

「監査法人で働いていた時は、やりたいことができずに時間を無駄にしているという焦りがあったのですが、その時の経験が国連で高く評価されて驚きました。遠回りだと思っていることが、実は近道だったりすることもある。人生ってわからないですよね」としみじみと語る。


※1 インターネットなどを使用した在宅勤務。
※2 国際機関で働きたい若手の日本人(35歳以下)を支援する制度。国際機関にJPO(Junior Professional Officer)として採用された日本人職員の給与や派遣費用を日本政府が2年間負担。その間に実務経験を積み、正規職員としての採用を目指してもらう。


新米職員として直面した壁 »


学校給食プログラムに取り組んだラオスのオフィスで。ラオス、フランス、エチオピアなど、さまざまなバックグラウンドの人たちと共に働く難しさに直面した田島さんを支えたのは、学生時代に出会ったフィリピンの子どもたちの“目の記憶”だった


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