世界で活躍する 国際派プロフェッショナル

グローバルに活躍する日本人プロフェッショナルが語る、仕事、自分自身、言葉……。


世界の映画人とのネットワークを広げ、映画祭の作品選びに邁進

映画祭ディレクター 矢田部吉彦さん/日本


映画祭ディレクターに向いているのは守備範囲の広い人

矢田部吉彦さん
矢田部 吉彦さん
東京国際映画祭 プログラミング・ディレクター

1966年、フランス・パリ生まれ。幼少期をヨーロッパで過ごす。日本の大学を卒業後、大手銀行に就職し、在職中に留学、駐在でフランス、イギリスに暮らす。帰国後、退職。海外の映画の配給・宣伝やドキュメンタリー映画のプロデュースを手掛ける。フランス映画祭に携わるようになり、2002年から東京国際映画祭のスタッフに。04年以降、上映作品の選定を行う作品部を統括。07年からはコンペティション部門の作品選定ディレクターを務めている。

「映画祭ディレクターは幅広いジャンルの映画を面白いと思える人、守備範囲のかなり広い人間が向いています」と語るのは東京国際映画祭でプログラミング・ディレクターを務める矢田部吉彦さん。コンペティション部門など3部門の作品選定を行い、全体の作品選定の統括も務める。

映画祭の核ともいえるコンペティション部門の15本を選ぶ際は、「産みの苦しみ」を経験するそうだ。「いったん選んでしまえば納得するのですが、そこに至るまではかなり悩みます。すごく優柔不断なんですよ。国際的にアピールする作品と国内の観客に楽しんでもらう作品という2つを柱に選定していくのですが、この2つは両立しない場合も多く悩ましい。最終的にはディレクターが自らのセンスで責任を持って選ぶことが大切だと思ってやっています」と作品選定の方針を語る。

実は矢田部さん、フランス生まれで小学生時代までヨーロッパで育った。以前は大手銀行に勤務という映画業界では異色の経歴の持ち主だ。映画が大好きで中学生のころから名画座に通っていたが、映画を仕事にしようとは思っていなかったという。

「大学時代はバブル絶頂期で、海外で仕事をしたいというおぼろげな希望から、大手銀行ならチャンスがあるのでは……といったあの時代特有の楽観的な気持ちで就職を決めました。でも、すぐに間違いに気が付きましたね。僕は数字が大の苦手だったんです」。

今の仕事には向いていない……と鬱々とした日々を過ごす中、行内の留学制度でイギリスとフランスで1年ずつ学び、その後ロンドンに3年駐在した。留学したイギリスの大学にはキャンパス内に映画館があり、新作から名画まで年間300本を超える映画を見まくったという。日本では公開されない映画にも面白い作品が数多くあることも知った。次第に「海外の面白い映画を日本に紹介する仕事をしたい」という気持ちが固まり、駐在を終え帰国すると、退職。退職金で自ら映画の買い付けをして、配給や宣伝を経験するうちにフランス映画祭を手伝うようになり、やがて東京国際映画祭のスタッフとして働くようになった。

「映画を紹介する映画祭の仕事に就けたのは僕にとっては僥倖(ぎょうこう)。なんといっても自分がいいと思うものを、こんな大きな規模で人に薦められる仕事って、他になかなかありませんよね」と笑う。



コンペティション作品選定はひたすら映画を見て評価する日々

コンペティション部門の作品選定では、毎年映画漬けの日々となるそうだ。14年の応募作品は92の国と地域から合計1373本。これを10名ほどのチームで手分けしながらひたすら見て評価していった。

「2時間の映画を見るには当たり前ですが2時間かかります。作品選定は決定的に時間との戦いなんですよ。夏休みシーズンに花火だ海だと人が行楽に出掛ける中、1日10~15本映画を見続ける毎日を送ると、自虐的な気分に陥りますね」と言いながらもその表情は楽しそう。映画祭ディレクターとは想像を超えた筋金入りの映画好きな人たちなのだろう。

なお応募作品だけでなく、積極的に注目すべき新作を探し求め、映画監督やプロデューサーにコンタクトを取るのもディレクターの仕事だ。

14年の出品作品『破裂するドリアンの河の記憶』は以前から面識のあったマレーシアのエドモンド・ヨウ監督の長編第1作だった。「ヨウ監督から長編映画を完成させたという連絡をもらい、すぐ見せてもらいました。30歳の青年なんですが、新人とは思えぬスケールで歴史とは何かを突き付けながら、美しく深い作品でしたね」。

ひたすら映画を見て評価する日々 »

『破裂するドリアンの河の記憶』上映後のQ&Aで司会を務める ©2014 TIFF


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