30代半ばで〝ゼロ〟からスタート
英語で人生の転換を図る

取材・文 鈴木香織

古川卓史さん

240点 → 800点突破
古川卓史さん(会社員)

高校卒業後、専門学校やアルバイトを経て、2009年からIT企業で契約社員として勤務する。社内の公用語が英語となり、正社員への登用条件としてTOEIC800点が課されるようになったのを機に、一念発起してTOEICに取り組む。一部TOEIC学習者・関係者のコミュニティーでは「ビリリーマン」の名で知られる。



社内に英語公用化の波が

机に向かってがむしゃらに勉強――こんな時期を、多くの人が10代後半から20代前半の学生時代に経験することだろう。しかし、古川卓史さんがこうした時期を生まれて初めて経験したのは、IT企業で契約社員として働いていた30代半ば。そして今、その“ガリ勉期”の成果をかみしめながら、人生の新たなステージに足を踏み出そうとしている。

そもそも机に向かう勉強は大嫌い。大学も受験しなかった。そんな古川さんが初めて真剣に取り組んだ勉強はTOEICだった。「2010年から社内の公用語が英語になって、カスタマーサービス部門で働く僕の周囲にも、じわじわと“英語の波”が押し寄せてきました。資料が英文になったり、同僚に外国人が増えたりして、英語の業務説明が理解できない、といった状況もたびたびありました。そんな時は周りの英語ができる人に聞いたりして、何とか乗り切っていました」。

TOEICスコアが正社員の昇格・昇給の要件となり、TOEIC受験を繰り返す同僚に囲まれ、古川さんも気乗りしないまま、12年1月に初受験する。契約社員が正社員に登用されるには800点が必要なので、一応意識はしていたのだ。「それまでも何度か申し込みはしていたものの、面倒くさくてずっと棄権していたんです。この時にやっと受験会場までたどり着きました(笑)。会場に向かう電車の中で、初めて過去問を見て、写真描写問題があることを知りました」。そんな“丸腰”状態で臨んだTOEICの結果は240点。このスコアが低いのか高いのか、当時は見当もつかなかったのだとか。ちなみにこの時のスコアシートによると、古川さんよりスコアの低い人は0%と記されていた。つまり最下位だったわけだが、そんな結果にも興味はなかったという。

TOEICのスコアアップで人生を変える決意をする

                           

古川さんが使用した教材
『新TOEIC®テスト900点 新TOEFL®テスト100点への王道』
(杉村太郎 著/ダイヤモンド社)
勉強方法や勉強への動機付けについて、大いに参考になった。この本がなければ、目標を達成するメンタルづくりができなかったと思う

          
                              

しかし、社内で高まるばかりの英語学習熱は、古川さんにも徐々に影響を及ぼしていたようだ。「特にこれという大きなきっかけがあったわけではありません。ただ、年齢や社内での待遇、自分の生き方について、これまでにないくらい深く考えるようになったんです。“なんとなく流される”人生はそろそろ終わりにしないと後悔するぞ、と思いまして。そこで、その流れを変えるつもりで、『TOEICで800点を取って正社員になる』という目標を立てたんです」。13年3月、35歳の時だった。

決意した翌日、古川さんは英会話学校に入学を申し込む。TOEIC対策のクラスを希望したものの、レベルチェックテスト後に「もっと簡単なクラスから始めましょう」と勧められ、週に2回の初級会話クラスに参加することに。そして同時期から、社内で週に1回開講されていたTOEIC対策の講座にも参加し始める。「予習や復習も必要でしたが、それ以前に、知らない単語ばかりだったので、教材に出てくる単語を片っ端からカードにして暗記しました」。

英語は中学校で不定詞を習ったころにつまずいて以来、しっかり勉強してこなかったという古川さん。どこから手をつければよいのか戸惑ったものの、英会話学校と会社の講座で勉強のリズムはできた。その中でひたすら単語を覚え、勉強方法を模索しながら、毎月欠かさず、TOEICを受験してスコアをチェックした。こうして半年ほどたつと、自分の弱点が見えてきた。「スコアが500点台後半で伸びなくなったころです。文法がわかっていないからだ、という確信があったので、英会話学校を辞めて、独学で文法を重点的に勉強するようになりました」。

   
    

不安やつらさは勉強で忘れる人生初のガリ勉期を経験

古川さんが使用した教材
『1駅1題 新TOEIC® TEST文法特急』
(花田徹也 著/朝日新聞出版)
勉強を始めて半年ほどたったころに、文法をマスターしないとスコアが伸びないと実感。この本で文法知識をたたき込んだ

このころの古川さんの1日の平均勉強時間は5時間。正社員を目指してTOEICのための勉強をする旨を上司と同僚に伝え、毎日18時には仕事を終えられるよう、配慮してもらった。そして終業後は社内の自習室へ直行し、終電まで勉強。週末も近所の図書館で朝から晩まで勉強していたという。

「全力で勉強しているという自負があったのに、特に最初のころはスコアがあまり伸びなくてつらかったです。でも、絶対に800点を取ると決めていたので、つらいとかやめたいといった感情は無視していました。ただ、永遠にゴールにたどり着けないんじゃないか、という不安はずっとありました。唯一その不安を忘れられるのは、勉強している時間でしたね。だからとにかく脇目も振らずに勉強したんです」。

古川さんが勉強そのものと同じくらい、エネルギーを注いだのが勉強法の模索だ。通勤時間やちょっとした隙間時間には、いつも勉強方法について考えていたという。「より面倒くさい、負荷のかかる方法で勉強すれば力が伸びると信じているので、そういう方法を思い付いては『あ~、でもつらそう、嫌だ~』と迷っている時間が結構長かったですね(笑)」。実行に至った勉強法の一つ、ボキャブラリー増強のための単語カードは約2500枚に達し、他にもPart3、4の問題を毎日暗唱したり、リーディングの問題を全て書き写したり、さまざまな方法を組み合わせた。そして14年12月に念願のスコア800点を達成。翌3月には正社員への昇格も果たす。

猛烈に頑張り、その成果を得たばかりの古川さんだが、今は別の目標が見えてきたという。「ゼロから始めた僕でもこれだけスコアアップできたのだから、誰にでもできるはず、というメッセージを多くの人に伝えていきたいです。そしてこれからも頑張り続けることで、周囲の人に刺激を与えたい。具体的には、さらなるスコアアップですね。会社では16年から全社員がTOEIC800点の取得を義務付けられるので、このスコアを持っていて当たり前、という環境になります。だからプラスアルファのスキルとして、アウトプット力、つまりライティングやスピーキングの力も伸ばしたいですね」。

最近、社員向け英語プログラムに関わる仕事を担当するようになったと語る古川さん。TOEICと共に歩む生活は、まだしばらく続きそうだ。


マガジンアルク』2015年9-10月号掲載
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