社内公用語化で英語が不可欠のツールに
TOEIC対策を経て得たものは

取材・文 鈴木香織

野口麻利子さん

390点 → 805点達成
野口麻利子さん(会社員)

二松學舎大学中国文学科卒業。英会話学校でのスクールマネジャー、営業職を経て、IT企業に転職。オンラインショップや電子書籍の部署で営業職に就く。会社で英語の公用語化が進んだことから、TOEIC対策に取り組む。試行錯誤の末、2016年に目標スコアを達成。



英語の社内公用語化で職場が激変

大学時代に1年間、中国留学を経験した野口麻利子さん。卒業後に就職した英会話学校は、当時、台湾支社設立を検討中で、中国での経験を生かせるのでは、という期待を抱いて選んだ職場だった。英語は特に好きでも得意でもなく、外国人講師とのコミュニケーションは、日本語、もしくは英語の得意な同僚の力を借りて、何とか乗り切っていた。

そんな野口さんが英語と向き合うきっかけとなったのは、2007年に転職したIT企業で、社内の公用語が英語になると発表されたことだった。10年のことだ。当時は仕事で英語を使う機会はなかったが、この発表後、会議や社内の連絡業務などで、英語を使う機会が一気に増えた。全社員に対するTOEICの目標スコアが設定され、野口さんも11年3月に初めて受験する。結果は当時、社員の平均スコアとされていた約530点を下回る390点。何とかせねば、と焦った野口さんはまず、週末にTOEIC対策の講座を6回受け、早くも初受験の1カ月後に、625点までスコアアップを果たす。「時間配分など、受験のノウハウを学んだのが功を奏したんです」。

しかし、問題はこの後だった。スコアアップに気を良くし、その後、何も勉強しなくなったのだという。一方、社内ではTOEICのスコアアップを目指す機運が高まるばかり。IP受験(団体特別受験制度)を促す雰囲気も漂っており、野口さんも12年4月に再度、受験することに。そしてスコアは、大幅ダウンの425点だった。

同僚と励まし合いながら停滞期を乗り越える

野口さんがよく使用した教材
『TOEIC(R) TEST
英文法 出るとこだけ!』

(アルク)
TOEICの目標スコアが設定された後、社員の間で教科書のように使われていた本

12年の夏から公用語化が本格化。野口さんは週末の勉強を心掛け、忙しくて勉強できない時でも、毎月のTOEIC受験だけは欠かさないよう、自らに課した。スコアが600点台半ばで停滞していた13年の夏に、700点以下の社員は早朝出勤して英語の自習をするよう、会社に促される。それを避けるために、自宅で今まで以上に集中して勉強したところ、スコアは705点まで伸びた。

700点を超えたころから、英語との“付き合い方”が変わったと野口さんは語る。「700点以下のころは、リスニング問題を聞いてもストレスになるだけで、解説を読んでもよく理解できなかったんです。知らない単語を書き出すようにと言われたら、『え、全部ですけど』という感じでした。でも700点を境に、聞いて理解できる英語が圧倒的に増えてきました」。さらに仕事でも、事務連絡がスムーズにこなせるようになったという。「まずはベースとなる力を身に付けることが必要なんですね。教材は自分のレベルより少し難しいくらいがベスト。難し過ぎると壁にぶつかってばかりで、かえってやる気をそぐことに気付きました」。

勉強法も、より能動的なスタイルを取り入れるようにした。

「問題集で学習する時には、パート2は、余裕があればディクテーションをしました。同僚に勧められた勉強法です。この方法は仕事の英会話にも役立ちました。パート5は私にとって時間との戦いなので、ストップウオッチを使って解答スピードを上げる訓練をしました」。

しかし705点を達成した後、再び“中だるみ期”に陥る。「スコアが上がっては気が緩み、しばらくして焦って頑張るとまた少しスコアが上がる、というパターンの繰り返しでした」と苦笑する野口さん。

モチベーションの下がる時期を何度も経験している野口さんにとって、支えとなったのは一緒に勉強する同僚たちだった。「部長もマネジャーも新入社員も、同じ土俵で勉強できることに、スポーツのような楽しさを感じました。語学はとても公平で、誰でも、勉強した分だけ結果に出るんですね。それに、語学への取り組みにも、性格や仕事の仕方が表れるとわかりました。優秀な人は、仕事以外の苦手なこと、やりたくないことに関しても、自分に足りない要素を見極めて、計画的に取り組んでいくんです。仕事はできるけれど、英語の苦手な上司が、英語を克服していく様子を目の当たりにして、勇気をもらいました」。

次は自分で選んだ目標に向かって

野口さんがよく使用した教材
『TOEIC(R)テスト Part 5
できる人、できない人の頭の中』

(アルク)
TOEICの面白さに気付かせてくれた1冊。「楽しみながらTOEICについて学べるので、勉強したくない時にとても重宝しました」

仕事では、14年に電子書籍のサービス業務を担う部署に異動し、英語を使う機会がぐんと増えた。契約書は全て英語で、カナダにある本社とのやりとりや、社内にいる外国人エンジニアとの会話には、英語が必須だ。

そんな中、再び野口さんのエンジンがかかるのは、15年も半ばを過ぎたころだった。社員の平均スコアが800点を超え、700点前後で伸び悩んでいた野口さんはまたもや焦り、勉強時間を増やす。そして16年になってからは趣味の旅行とベリーダンスを“自粛”し、休日は極力、勉強に時間を割いた。その努力が実り、5月には目標の800点を突破することができた。

今では外国人の同僚との会話もかなり楽になり、ランチに誘ったり、ホームパーティーに招かれたりといった、以前にはなかった英語との関わりも増えたという野口さん。

「TOEIC対策の勉強は、英語の真の実力アップに役立たないという意見を聞いたことがありますが、そうは思いません。私は対策勉強をしたことで、英語でのコミュニケーションがずいぶん楽になりました」。

目標スコアを達成し、今後TOEICとはどのように付き合っていくのだろうか。「これからはやっと、会社に課されたスコアにこだわらず、自分が身に付けたい力の学習に取り組める気持ちです。今度はスピーキング力の向上が目標ですね。TOEICについては、実は全問、時間内に解けたことがないんです。今後はスコアよりも、全問解答を目標にして受験してみたいです」。

目標達成のご褒美として、近々海外旅行に出掛けるという野口さん。「今振り返ると、会社からいい目標を与えてもらいました」と語るすがすがしい表情には、英語の社内公用語化、そしてTOEIC受験を自分の糧にした、充実感があふれていた。


マガジンアルク』2016年9-10月号掲載
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