キャリアアップのためのTOEICが
今や趣味となり、講師としても活躍中

取材・文 鈴木香織

藤枝暁生さん

7年で550点 → 990点達成
藤枝暁生さん(会社員)

大学卒業後、損害保険会社に入社。現在は企業向けコンサルタントとして、企業のBCP(事業継続計画)や自然災害のリスクアセスメントを担当。仕事環境の変化をきっかけに、21年ぶりに英語学習を始め、実力測定のためにTOEICを受験するようになる。ブログ「RabbitのTOEIC満喫生活~990の高みへ!」で学習や受験の記録を発信中。



キャリアの武器として英語に着目

藤枝暁生さんが英語学習に関心を持ったのは2005年。大学の教養課程での授業以来、実に21年ぶりだった。そのきっかけは、仕事環境の変化だ。01年に勤務先の会社が合併し、05年には営業部門から管理部門へ異動になった。業務内容が大きく変わったこと、また社内での自分のキャリアプランを考え直したことから資格取得を思い立ち、思案の末に目標を英語に定める。

「管理部門に異動してから、英語での情報収集力の大切さを痛感したんです。英語力を磨けば、キャリア上の武器になると思いました」。

勉強するからには、その成果を測る目安が欲しい。そう思った藤枝さんは、書店の語学書コーナーで、TOEICの存在を知る。

「級別に分かれている英検と違って、どの級を受験するか迷う必要がないし、テストの実施回数が多いのも気に入りました」。

久しぶりの英語学習、しかも、もともと得意科目だったわけではない。初受験はある程度準備してからにしようと考え、目標を1年半後の07年の3月に決めた。週末に机に向かい、TOEIC対策の問題集を解いたり読んだりして内容を理解し、平日に通勤時間と昼休みを使ってリスニングパートの音声を聞く、という学習スタイルを続けた。

こうして迎えた初受験。しっかり準備して臨むのだから、700点は取れるだろうという藤枝さんのもくろみは、残念ながら外れてしまう。

「550点しか取れませんでした。それで、『何としてでも独学でスコアアップするぞ』と決意したんです。スクールなど、他者に頼ってスコアアップしたら、それまで1年半続けた勉強法が間違っていたことになる。それは嫌だ、という意地がありました」。

リスニング対策で読むスピードがアップ

藤枝さんの“三種の神器”
・ウォークマン
1.0倍速から1.75倍速まで徐々にスピードを上げて聞き、スピードに慣れるようにしている。「スマートフォンでは倍速で聞くと音が割れてしまうので、ウォークマンがいいんです。倍速トレーニングは満点獲得のために必須です」
・電子辞書
最近調べた語がリスト状に記録されるヒストリー機能を復習に使い、重宝している。複数の辞書を一度に引ける一括検索も多用

目指すスコアを取れなかった原因は、学生時代の、言わば「昔ながらの」勉強法から抜け切れなかったことにあると藤枝さんは言う。

「文を後ろから“訳し上げる”癖が直らず、英語を語順通りに理解するスタイルになじめなかったんです。そのせいで、リスニング問題が悲しいくらい聞き取れませんでした」。

そこで当面は、リスニング対策に集中することにした。具体的には、読んで理解した英文を繰り返し聞き、音読するという勉強法だ。

自分で発音できない音は聞き取れない、と聞いたからです。ただ、スコアはなかなか伸びませんでしたね」。

初回受験の後は、13回くらい続けて600点台を取ったと言う。700点台を継続的に取れるようになるまでのこの時期が、一番苦しかったそうだ。それでも毎月の受験は欠かさなかった。

スコアが順調に伸び始めたのは、勉強開始から4年ほどたったころ。そこで気付いたのは、リスニングの勉強ばかりしているにもかかわらず、リーディングのスコアがぐんぐん伸びていることだった。その現象を、藤枝さんはこう分析する。

リスニングの勉強に集中している期間は、英語の語順でしか英語に触れていない、と言っても過言ではありませんでした。そして、一度しか流れない音声に食い付くようにして、意味を取ろうと必死になっていました。そうすると、英語を読む時も自然と、英語の語順で意味を取るようになっていて、読むスピードが格段に上がっていたんです」。

発信力を高めるTOEIC勉強法

藤枝さんの“三種の神器”

・韓国のTOEIC模試本
日本語がないのが気に入っている。「和訳や解説が丁寧な日本の学習本だと、親切過ぎて面白みがないんです。わからないところを自分で調べるのが楽しいので、700点ぐらいから上の人にお薦めします」

スコアが850点を超えたころから、藤枝さんの生活にTOEICの影響がさらに強く表れ始める。まず、TOEIC学習者の集まりに参加するようになり、情報交換をする勉強仲間が増え始めた。そして職場では、英語力が評価され、日常的に英語を使う部署に異動になった。

TOEIC L&Rはリスニングとリーディング、つまり受信力を評価するテストのため、たとえスコアが高くても、書いたり話したりする発信力は弱いままの人が多い、という意見も聞かれる。しかし、藤枝さんはスコアアップに伴って発信力も高まり、職場でもその力を生かしてきた

「発信力が高まらないのは、勉強法の問題ではないでしょうか。私の場合はリスニング対策として音読、オーバーラッピング、シャドーイング、そして最後は暗唱までしていました。狙ったわけではありませんが、結果的に発信力のトレーニングにもなっていたみたいです。ただ問題を聞いて解いて、を繰り返していたら、仕事で英語を話す場面になっても、対応が難しかったでしょう」。

そして14年4月に、とうとう満点を獲得。その後、職場のIPテスト(団体特別受験制度)でも満点を取り、周囲に知られることとなった。以来、自分を見る周りの目が変わった気がすると笑う藤枝さん。

「英語を使う仕事が回ってくるのはもちろんですが、それよりも、“一目置かれる”感覚があるんです。今の部署に異動できたのも、公平な指標であるTOEICで満点を取っていたからこそだと思います」。

一方社外では、満点を取る直前から先述の学習者の集まりで講師を務めるようになっていた。

「私は独学でしたが、スコアアップを目指すなら、やはりTOEICのことをよくわかっている人に教わるほうが絶対に効率的です。勉強する人を自分なりにお手伝いしたいと思うようになりました」。

より良い指導法を研究するため、満点獲得以降も毎回、受験し続けているのだという。

TOEICと出合い、さまざまな活動に携わるようになった藤枝さん。勤務先でも当初のプラン通り、“英語が武器”となった実感がある。

「英語を使う仕事が回ってきた当時、“ピンチ!”と思いましたが、今振り返るとあれはチャンスだったとわかります。今後は、TOEICを通じて若い人たちがそうしたチャンスを生かす手助けをしていきたいですね」。


マガジンアルク』2017年7-8月号掲載
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