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Lesson17 メディカルコミュニケーションの魅力と可能性

執筆 押味貴之
Lesson17 メディカルコミュニケーションの魅力と可能性

2006年7月1日、旭川医科大学にて「医療英語セミナー:医療英語って何?」が開催されました。全国各地から、実にさまざまな背景を持つ90名の方の参加を受けて大盛況のうちに閉会となりました。このセミナーのテーマとなったのが「医療英語(Medical Communications)」という新たな専門分野です。日本ではまだまだ馴染みの薄いこの「メディカルコミュニケーション」という言葉ですが、一体どのようなものなのでしょう? 今回は、この「メディカルコミュニケーション」について、その魅力と今後の可能性についてご紹介します。

多岐に渡る「メディカルコミュニケーション」の分野
「医療英語セミナー」では、東京医科大学国際医学情報センター准教授のラウール・ブルーヘルマンス先生に「メディカルコミュニケーションの世界」と題して、メディカルコミュニケーションの概要とその魅力、そして今後解決していかなければならない課題と方向性を提示していただきました。ここではその基調講演の内容を基に、この新たな専門分野を簡潔に紹介させていただきます。 「メディカルコミュニケーション(Medical Communications)」というのはその名の通り、「医療におけるコミュニケーション」のことです。そしてこれに従事する「メディカルコミュニケーター(Medical Communicators)」は、「医療におけるコミュニケーション(言語)のスペシャリスト」として、さまざまな領域で高い専門性を持って活動することが求められています。

具体的には、医師や看護師が書く学術論文の翻訳や校閲、国際学会での会議通訳や日本語を話せない患者さんへの医療通訳、学術雑誌の編集やコンサルタント、医療者への医学英語の教育(医学情報の収集法や学術発表の方法等を含む)や、さらには患者さんへの医学教育といったものが含まれます。

このようなものは、「医療における国際語」である英語を母国語としない、日本のような国だけに必要だと思われがちですが、実際にはそうではありません。アメリカに Mayo Clinic(メイヨークリニック)という大きな医療法人がありますが、ここでは医師の学術論文の校閲を行う専門のスタッフが30名以上常勤しています。医学生物系の学術論文の統一規格としては「Vancouver Style」という世界基準がありますが、彼らはこれを熟知しているだけでなく、論文の提出先となる各学術誌の規格に合わせた校閲を行います。彼らの質の高い仕事のおかげで、Mayo Clinic の医療スタッフは「論文のスタイル」ではなく「研究内容」に集中することが可能となり、結果として Mayo Clinic 全体の研究成果は飛躍的に向上しています。このほか Mayo Clinic では患者教育を専門に行なうスタッフ、さまざまな言語の医療通訳スタッフ等も多数常勤しており、病院全体として質の高い「メディカルコミュニケーション」のサービスが可能となっています。


本格的な学問分野に向けた課題と取り組み
それぞれの領域で高い専門性が要求されるこの「メディカルコミュニケーション」ですが、実は多くの課題を抱えています。 第一に、公式の教育カリキュラムの不在です。メディカルコミュニケーターの多くは言語系か自然科学系どちらかの学部出身で、「コミュニケーション(言語)」や「医療」のどちらか不得手となる領域を「独学」で学んでいます。そのため質の高い人材の育成が困難となり、また優秀な教員の不足にもつながっています。

次に、社会的地位の低さです。その仕事の重要性や専門性に対し、十分な社会的地位や収入が得られないために、優秀な人材がこの分野を職業として選択する際の大きな障害となっているのです。具体的には、学術論文の翻訳者・校閲者の名前が出版の際に明記されない場合や、病院での医療通訳が無報酬であることなどがこれに当たります。

これらの課題の克服に向け、徐々にではありますが、さまざまな取り組みが行われています。その中の一つに「日本医学英語教育学会(JASMEE)」があります。これは、医療者を対象とした「医学英語教育」を研究している学会ですが、それと同時にこの「メディカルコミュニケーション」という分野の発展のためにさまざまな活動を行っています。(日本医学英語教育学会) 具体的には、2008年3月から「医学英語検定試験」というものを行います。これは当初、研修医マッチングプログラムに合わせて、医学生の「医学英語能力」を測定するために考案されたものなのですが、幅広く「医療翻訳」や「医療通訳」など、「英語メディカルコミュニケーション」に携わる方もその対象となっています。4級から1級までの試験で、医療英語に関心のある方ならどなたでも受けることができますので、「英語メディカルコミュニケーション」の分野に興味のある方は、ぜひ受験されることをお薦め致します。(「医学英語検定試験」に関する情報は、このコラムでも順次紹介していきますのでお楽しみに!)

  医療における「コミュニケーション」の重要性は、ますます高まってきています。日本ではまだまだ認知されていない「メディカルコミュニケーション」ですが、今後は本格的な学問分野として、学部や大学院等で教育が行われていくように、私も頑張っていきたいと思っています。



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