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世界で生き残るために翻訳者がとるべきコラボレーション戦略

写真:齋藤ウィリアム浩幸さん

講演者:齋藤ウィリアム浩幸さん SAITO Wiliam Hiroyuki
Profile

米国生まれ。日系二世の起業家、ベンチャー企業支援コンサルタント。10歳で商用ソフトウェアのプログラムを始め、大学在学中にI/Oソフトウェアを設立。指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功し、2004年会社をマイクロソフトに売却。その後、日本に拠点を移しベンチャー支援のインテカーを設立。2011年ダボス会議(世界経済フォーラム)の「ヤング・グローバル・リーダー」のメンバーに選出される。後に、ボードメンバーに就任。日本では2012年、日経ビジネス「次代を創る100人」に選ばれる。2013年より内閣府参与科学技術・IT戦略担当。

ビジネスのグローバル化や情報通信技術の劇的な発達にともない、翻訳者をとりまく環境もまた、時々刻々と変化している。今後のキャリアを考えるうえで、どのような視野を携え、自らのビジネスを広げていくべきか模索している人も多いだろう。

自身も起業家で、指紋認証をはじめとする生体認証暗号システムの開発で成功をおさめてきた齋藤ウィリアムさんは、現在はベンチャー企業支援コンサルタントとして活躍するかたわら、内閣府で科学技術・IT技術戦略分野も担当。これまで翻訳・通訳業界とは「発注者」の立場でかかわる機会が多かったそうだ。セッションでは、技術者、そして投資家という視点に立ち、今後、言語コミュニケーションの分野が世界市場でどのような変貌を遂げていくのか、最近のトレンドなどをふまえながら、オーディエンスとも自由に意見交換をしていく形でプレゼンテーションが行われた。

写真:齋藤ウィリアム浩幸さん

低コスト・高技術化が進む世界市場

翻訳業界に限らず、グローバル・ビジネスは低コスト・低価格を追求したアウトソーシングが進んでいる。翻訳について言えば、中国やタイ、インド、ベトナムといったアジア諸国での安価な翻訳サービスが定着してきており、近年ではさらに低価格でアフリカ・ケニアへのアウトソーシングが実現。ビジネスは、より「低コスト」へと流れていく傾向が強いと齋藤さんは語る。

また、情報通信技術が発展したことで新サービスも続々と登場・定着し、翻訳業界にも新たな影響を及ぼしている。例えば、ネット上でのクラウド・ソーシングを利用した低価格の翻訳サービスサイトは、開設当初は品質面での課題があったものの、利用者からのフィードバックをもとに翻訳者の質を底上げすることで、翻訳の質もレベルアップが進んでいるようだ。

機械翻訳・自動翻訳の分野で例を挙げるなら、Googleでは、これまでもGoogle翻訳ソフトを提供してきたが、このほど翻訳カメラのWord Lensを買収し、カメラが写した文字を別の言語に置き換えて表示するソフトを作成。将来的にはメガネなどのウェアラブルな形でも利用されるという。翻訳の精度は、現段階では大まかな内容が把握できる程度ではあるが、こういった自動翻訳分野のイノベーションは「ディープ・ラーニングと深く結びつくことで、もっとすごくなる」というのが齋藤さんの分析だ。

とくに、画像処理、音声認識、自然言語処理の分野におけるコンピューターのディープ・ラーニングが進めば、まとまった文章を、より人間に近い発想で言語化する機能もレベルアップする可能性が高い。将来的には、本を読む際に、活字を目で追いながらそのまま原語を別の言語に置き換えられる技術も実用化されるだろう、という。

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