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翻訳業界を知るトビラ
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映像翻訳とは

映像翻訳とは、映画、テレビ番組、DVDやBlu-Ray、インターネットの動画配信などに代表される映像コンテンツの外国語情報(音声)を日本語に翻訳すること。その手法は、字幕翻訳、吹き替え翻訳、ボイスオーバーなどに分けられます。

ジャンルの特徴と仕事の流れ


字幕翻訳

音声は原語のまま残し、日本語の字幕を映像上に表示する方法です。翻訳者は、制作会社などから送られてきた映像素材を確認しながら、台本(スクリプト)に印を入れて、1枚の字幕にどこまでのセリフを入れるか、区切っていきます(ハコ書き)。このハコ書きに合わせ、今度は字幕専用ソフトを使って、区切ったセリフが実際の映像のどこからどこまでなのか、長さをチェック(スポッティング)。字幕を出すタイミングを指定します。

こうした作業をもとに翻訳作業にかかりますが、すべてのセリフを訳すのではなく、字数制限のなかに、必要な情報を盛り込んでいくのが特徴です。観客がひと目見て意味がわかるよう、漢字やひらがな、言葉の並びに至るまで熟考してセリフ作りをします。

納期のめやすは、60分ドラマで5日ほど、映画本編なら10日ほど。翻訳原稿は、スポッティングリストと合わせてクライアントに納品します。翻訳原稿が実際の映像にのせられた仮映像ができたところで、翻訳チェック。修正を重ねて仕上げます。



吹き替え翻訳

映像の原音を日本語のセリフにする方法です。字幕翻訳との大きな違いは、話者の口の動きや息つぎ(ブレス)などに合わせ、セリフをすべて日本語に移し替えること。翻訳者は映像を確認しながら、セリフの長さを調節します。

仕上がった翻訳原稿を制作会社などのクライアントがチェックし、修正を重ねて仕上げます。仕上がった台本は、声優などのキャスト表とともに製本され、アフレコ作業にはいります。アフレコ音声が実際の映像にはめ込まれた仮映像をもとに、訳の最終チェックを行います。



ボイスオーバー

映像の原音はかすかに残しつつ、日本語のセリフをかぶせてのせる方法。作業の進め方は、基本的に吹き替え翻訳と同様です。


作業の仕方

基本的に、制作会社から送られてきた素材を翻訳者が自宅で訳し、納品しますが、ニュースや報道番組など、映像が届いてから放送するまでに間がない素材に関しては、放送現場で仕事を進めることも。また、シリーズ番組などは、複数の翻訳者が担当することも多く、翻訳者たちは訳語の統一、情報の共有をはかるためにメーリングリストなどを活用してチーム作業を行います。

扱う原語はさまざまですが、たとえばスペイン語素材の映像でも、英語のスクリプトがついている場合などは、英語の翻訳者に仕事が依頼されるケースもあるようです。また、番組によっては、海外の番組をそのまま放送するのでなく、日本の番組内で編集し、映像素材として利用するケースも。その場合、オリジナル番組の内容を把握するため、制作サイドが翻訳者にオリジナル全体の翻訳を依頼することがありますが、これを素材翻訳(ベタ訳)といいます。

最近の傾向

BS・CS放送の多チャンネル化、DVDやBlu-rayの普及、そしてWeb発信の動画映像の増加などにともない、翻訳需要は安定増。映画、ドラマから、スポーツ、ニュース、ドキュメンタリー、リアリティ番組など、扱う素材も多種多様です。

映画産業では、劇場用映画でも吹き替え版が以前より増え、また、DVDやBlu-rayの特典映像などの翻訳需要が伸びています。特典映像の翻訳は新人に任されることも多い分野。キャリアをここからスタートさせた先輩翻訳者も少なくありません。

ドラマでは、韓国ドラマが堅調のため、優秀な韓国語翻訳者がまだまだ求められているところ。アジア圏でみると、台湾ドラマなども今後は増えてきそうです。また、最近では企業のPRやIR活動に映像を使用する機会が増え、ビジネス関連の映像翻訳需要も伸びてきています。

その一方で、DVDの低価格化や、世界不況の影響による番組プログラムの縮小化、放送局の予算削減なども見られ、仕事あたりのギャランティが下がる傾向も。仕事は増えたものの収入が伴わないというケースもあるようです。

収入の目安

ギャランティは基本的に、映像10分単位で計算されます。料金は、映像のジャンルや内容、翻訳者のスキルや経験に応じて異なり、10分あたり5,000円から25,000円の間を推移しているようです。字幕翻訳と吹き替え翻訳では、吹き替えのほうが手間のかかることもあり、やや金額が高く設定されています。

放送翻訳など、放送局に出向いて現場でコメントの吹き替えやテロップを作る作業をする場合は、現場での拘束時間に応じて支払われます。

プロになるには

制作会社によっては社内翻訳者をおいているところもありますが、一般に、制作会社は翻訳会社やエージェントを介して翻訳者に仕事を依頼する、あるいは、ほかの翻訳者の紹介で、直接新しい翻訳者に仕事を依頼するなどのケースが多いようです。

翻訳学校によっては、翻訳エージェントとの提携で、修了生がトライアルなどを受験でき、合格すればプロとして登録するシステムをとっていることも。学校選びのさいに、仕事にどうつながる可能性があるかを確認するといいでしょう。コンテストなどを利用し、実力をアピールして仕事につなげたという例もあります。

また、最初はコーディネーターやチェッカー、営業など、業界内の別の仕事につき、現場でさまざまな知識を身につけながら勉強し、翻訳者になったという人も少なくありません。現場での作業の流れを理解していると、仕事の勘がつくというメリットもあります。

求められる資質

映像翻訳には作業上の細かなルールが多々あるため、まずは学校などで専門スキルをしっかり身につけることが大事です。原語の理解力に加え、的確な日本語表現力も必須。放送禁忌用語などの常識はもちろん、最新情報を敏感に取り入れるような時代感覚も求められます。

また、放送素材が多ジャンルにわたるため、例えばブラジルのファッション特集の次に、メディカル業界リポート、犬のトリマー情報の仕事が来る、といったことも決して珍しくありません。プロ翻訳者ともなれば、「メディカルのことはわからないので」などと安易に仕事を断れないもの。内容に応じて徹底的に調査する根気と、期日内に的確に情報を集める検索能力が必要です。

どうしても調べ切れなかった点、オリジナル素材の内容に誤りがある点などについては、覚書の形で翻訳原稿に添付してクライアントに提出します。翻訳力に加えてこうした細かな作業もしっかりこなせる翻訳者は、クライアントにも信頼され、次の依頼もスムーズに来るようです。

最近では、ニュース性・即時性の高い映像素材がより多くなっているため、翻訳者にもより早く正確な訳を仕上げるスキルが求められています。さらに、ニュースなどの放送現場では、臨機応変さが重要ポイントに。場合によっては翻訳だけなく同時通訳的な能力も必要とされます。

また、前述のとおり、ひとつの番組を複数の翻訳者で訳すなど、チームで仕事をすることもあれば、制作現場で多くのスタッフと関わりながら仕事をすすめていく場合も。仕事を効率的かつ円滑に進めるための交渉力も必要です。翻訳を納品した後も、映像に合わせて訳をチェックするなどの作業が多いので、担当者とまめにメールなどで確認するといった基本的なビジネスマナーも備えておくと、次の仕事につながりやすくなります。

体調管理はいうまでもありませんが、スケジュール管理も非常に大切です。急な依頼も多いため、通常、仕事のオファーが来たら、期日の前半でなるべく集中して仕上げるようにし、空いた後半で急な仕事に備えるといった、まさにプロ技で仕事管理をしている先輩翻訳者もいます。

映像翻訳者を目指す人の多くは、志望動機に「映画が好きだから、海外のドラマが好きだから」あるいは「英語が好きだから」と挙げますが、「好き」だけの人は山のようにいます。そこから一歩踏み出すためにも、少しでも現場に近いところで技術を磨き、積極的にチャンスをつかむ姿勢とコミュニケーション力が重要です。特に映像分野は、ひとつのソフトが出来上がるまでに多くの人が関わる世界。コミュニケーション力は、実際の仕事の現場でも大きく役立ちます。

文:彌永由美


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