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翻訳業界を知るトビラ
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通訳とは

通訳とは、異なる言語を話す人々が互いにコミュニケーションできるよう、言葉上のサポートをする仕事。おもに、企業などビジネス現場で活躍する「ビジネス通訳」、国際会議などでの発言、発表を伝える「会議通訳」、ニュースなど報道番組の内容を伝える「放送通訳」、司法、医療などの現場で活躍する「コミュニティ通訳」があります。

また、「通訳案内士(通訳ガイド)」と呼ばれる仕事もありますが、これは、来日した外国人に同行し、外国語で日本の名所などを案内する仕事。他人の言葉を訳すのでなく、自身の言葉でコミュニケーションをはかります。語学系で唯一の国家試験である「通訳案内士試験」に合格した人のみが、「通訳案内士」として仕事を受注できます。

おもな手法


逐次通訳

話者がある程度まとまった長さの内容を話したら、通訳者がそれをまとめて訳します。話者と通訳者が交互に発言する方式です。



同時通訳

話者の話す内容を聞きながら、同時進行で内容を訳します。逐次通訳よりコミュニケーションの時間が短縮できます。



ウィスパリング

基本は同時通訳と同じ手法ですが、聴き手の耳元でささやくように内容を伝えます。


ジャンルとその特徴


ビジネス通訳

ビジネスの現場で発生するさまざまな会談、交渉、プレゼンテーションなどの通訳を行います。社内通訳者をおく企業もありますが、案件ごとに派遣会社やエージェントから通訳者を派遣するケースも多く見られます。

逐次通訳の仕事が多いこともあり、内容によっては新人が登用されるチャンスもあります。ただし、通訳者の出来しだいでビジネスの成功が大きく左右されることもある現場だということは、肝に銘じておきたいところです。



会議通訳

国際会議やシンポジウム、講演会など、多数の出席者に対し、話者のスピーチの内容を通訳する仕事です。通訳者は専用のブースから話者の音声を聴き取り、同時通訳で内容を聴衆に伝えます。非常に高度な技術が求められることもあり、トップクラスの通訳者が担当します。このため、会議通訳者は、花形通訳者と呼ばれることも。政府高官やCEOなどのVIP付き通訳も行います。



放送通訳

国内外のニュース番組などで、ニュースの内容を同時通訳で他言語に変換して伝えます。海外ニュースを日本語にする場合と、日本のニュースを外国語にする場合があります。最近では、生放送に対応しての同時通訳が主流ですが、海外のニュース番組など、時間差で放送するようなときには、ニュース素材を事前にチェックし、メモを用意しながら放送時に通訳をする「時差通訳」の方式をとることもあります。



コミュニティ通訳

海外からの外国人移住者が増加したこともあり、生活の場面で言葉のサポートをする必要性も高まっています。簡単な日本語はできても、複雑な状況には対応できない、そんなときに活躍するのがコミュニティ通訳者です。

とりわけニーズが高いのは、病院などの医療現場で、患者である外国人と医師・看護師等とのコミュニケーションをサポートする「医療通訳」、犯罪に関わったり事件に巻き込まれたりした外国人と司法担当者とのやりとりをサポートする「司法通訳」の2つ。そのほか、学校や自治体との交渉時などにも通訳者を介してコミュニケーションをとるケースがあります。



通訳案内業(通訳ガイド)

来日した外国人に付き添って、観光やビジネス目的での旅行、訪問にさいしての案内を行う仕事です。旅行添乗員の業務を外国語で行うものと考えていいでしょう。国家資格である「通訳案内士」として働くには、国家試験に合格することが必須条件。

英語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、中国語、イタリア語、ポルトガル語、ロシア語、韓国語、タイ語の10カ国で受験できます。試験では、語学力に加え、日本地理・歴史、産業、経済、政治、文化に関する一般常識力も試されます。。


最近の傾向

通訳業界を俯瞰すると、世界的不況の影響で、金融、製造業などの分野では需要が低迷したものの、医薬や化学分野などでは需要が安定しており、全体的に見れば堅調といっていいでしょう。今年は日本がAPEC議長国ということもあり、国際会議も増えています。

ただ、クライアント側のコスト削減の影響もあり、業種によっては、求められる通訳者が二極化しているという見方もあります。トップクラスの通訳者には安定需要があるものの、それ以外では、経験の浅い(金額の安い)通訳者が好まれ、中間を支える通訳者の仕事が減りつつあるようです。そのため、中堅通訳者のなかには、金額を下げてオファーを受ける人も出てきています。

通訳ガイドの現場を見ると、ここのところの円高の影響で、来日する外国人観光客が減少するなか、中国人観光客の増加が目立ちます。英語の通訳案内士に比べ、中国語の通訳案内士の数はまだまだ少なく、一部では需要に追いつかない状況です。

収入の目安

通訳者のギャランティーは、クライアントが支払う金額からエージェントの手数料等を引いた額で計算され、基本的に半日(4時間以内)か1日(半日~7、8時間)単位で支払われます。不況の影響で、半日、1日という支払い方法を見直そうというエージェントもあるようですが、ほとんどの場合、この2つの単位で支払われます。

料金は、おもに通訳者の経験や仕事の内容によって決まります。新人であれば1日あたり20,000円台がめやす。トップクラスでは新人の3倍以上というケースも珍しくありません。

通訳案内士の場合も、半日、1日単位でギャランティーが支払われます。エージェントによって値段は異なりますが、半日で20,000円台、1日で30,000~40,000円前後がひとつの目安となっているようです。

プロになるには

ビジネス通訳者のなかには、社内通訳者として仕事をしている人もいますが、一般に、通訳者のほとんどはフリーランス。複数のエージェントに登録するなどして、仕事を得ます。高度で専門的な技術が求められる業種なので、ボランティアやアルバイト等で多少の通訳経験があっても、学校で技術をしっかり磨きながら自立を志す人が目立ちます。

学校によっては、在学中からレベルに応じてスポット的な通訳業務のオファーが来ることも。地道に経験を積んだのちにエージェント登録し、本格的に仕事を増やしていくようです。未経験者でも、まずは派遣会社に登録し、スポット的に通訳関連の仕事をして経験を積むケースもあります。

通訳案内士の場合は、試験合格後に各都道府県の自治体に登録し、資格を証明する免許を交付してもらいます。日本観光通訳協会、全日本通訳案内士連盟などでは、新人のための研修や講義などを行い、仕事を得るためのサポートをしています。研修後、旅行会社や人材派遣会社などのエージェントに登録し、仕事を得ます。

通訳者に求められる資質


語学力・理解力

外国語を自在に扱う職業のため、「帰国子女のほうが有利では?」と考える人も多いでしょうが、海外経験がなくても優秀な通訳者として活躍している人は、実際、少なくありません。裏を返せば、帰国子女だからといって簡単にできる仕事ではないということです。

外国語はよくわかっても、それを日本語に訳す力量がなければ、正確な意味を伝えることはできません。現場によって求められる日本語も違ってくるため、状況に応じた適切な日本語が使えるよう、日ごろから意識して勉強する必要があります。

端正な日本語や敬語を自在に使いこなすのは、案外難しいもの。言葉に関してつねに敏感に吟味を重ね、聴き手に不快感や戸惑いを与えないことも重要です。

また、相手の言いたいことは何なのか、長いスピーチのなかで幹となる基本情報をしっかりつかみ、分析する理解力も非常に大事です。



コミュニケーション力・判断力

ビジネスシーンでは、対人コミュニケーションが円滑に運ぶよう、気配りすることも重要。企業では、上司を立てて部下が発言することもしばしばですが、そうした人間関係をいち早くつかむことで、場の雰囲気が和む場合もあります。一般企業に勤めた経験があれば、そうした対人関係も理解しやすいでしょう。

人と人とのコミュニケーションには、さまざまなハプニングがつきもの。そうしたさいに、あわてず、臨機応変に対処できる通訳者ほどありがたがられます。また、物腰がていねいで、明るいというのも大事なポイント。実際、クライアントから「あの通訳者さんが来てくれると、場が明るくなって顧客の受けもいい」という評価を受け、続けて仕事の指名が来たという例も聞かれます。同じレベルの技術はあっても、木で鼻をくくったような態度の通訳者と、場の雰囲気をよく読む通訳者では、後者のほうが仕事のオファーも多いようです。通訳が人と人とをつなぐコミュニケーションの仕事であるという最たる証拠でしょう。

また、非常に基本的なことですが、現場でスタッフや関係者にあいさつすることも重要です。仕事の緊張感のせいか、こうした社会人としての基本マナーをすっかり忘れてしまう通訳者も、なかにはいるようです。



情報収集能力・調査力

前述に加え、通訳のパフォーマンスの質を支える大きな要素が、情報収集と調査能力。仕事のオファーをもらったら、期日までにとことん調べる姿勢が大切です。クライアントから会談の情報、講演の内容などの簡単なレジュメ、資料をもらったら、それをもとに周辺情報を集めますが、学術会議などでは、かなり専門的な話題になるため、事前勉強の量もはんぱではありません。また、事前資料に不備・不明点があることも案外多いもの。疑問はそのままにせず、クライアントやエージェントに積極的に問い合わせるような柔軟性もほしいところです。

当日、急な変更で議題が変わる、話者が予定外の話や質問をするといったアクシデントはつねに想定内。少しでも多くの情報・知識を蓄えておけば、そうした際にも臨機応変に対応できます。

また、当日の交通機関が乱れて、予定時間に現場に入れないといったアクシデントを防ぐため、1時間ほど余裕を見て現場入りするという通訳者もいます。通訳者にとっては当日のパフォーマンス結果がすべて。さまざまなリスクを想定して動けることが大事です。


通訳案内士に求められる資質

基本的に通訳者と大きく変わりませんが、加えて大事なのは、日本を代表して日本のよさをつたえる「大使」であるという意識をもつこと。顧客が日本での滞在を快く楽しめるような、もてなしの気持ちはつねにもちたいものです。また、通訳案内士はツアーコンダクターの役割も重視されます。観光目的でも、ビジネスツアーであっても、スケジュール管理は基本中の基本。事前にツアーのルートを確認する、リスクに備え、トラブルにも適切に対応するなどの能力が求められます。

文:彌永由美



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