HOME > 日本語・日本語教師 > 日本語Q&A > ことばの仕組み(文法) > 「手を触れないでください」は、本当は「絵を触れないでください」「手で触れないでください」では?

ことばの仕組み(文法)

分類:助詞(を)

「手を触れないでください」は、本当は「絵を触れないでください」「手で触れないでください」では?
 まず、ご指摘の「絵を触れる」というのは、文法的におかしいと思います。もし「絵を」という名詞句をお使いになりたいのであれば、「絵を触らないでください」という言い方になるでしょう。「触れる」と「触る」は同じ漢字を用いますし、そのことに引きずられて言えるように思われているのではないでしょうか。

 「触れる」は、「〈対象〉ニ〈身体部位/物〉ヲ/ガ/デ触レル」というふうに用いられる動詞です。〈身体部位〉の例としては「絵に手を触れる」、〈物〉の例としては「伝線に街路樹の枝が触れる」が挙げられます。

 では、美術館の表示ではなぜ「手が触れないでください」や「手で触れないでください」ではなく、「手を触れないでください」という言い方が選ばれているのでしょう。まず、「〈身体部位/物〉ガ触レル」という表現は、触れるか触れないかに動作主体の意志が関与していません。つまり意志とは関係なくたまたま触れてしまっているときにしか用いられません。したがって、命令形である上述「手が触れないでください」はどこで用いられるかに関わりなく、それ自体が文法的におかしい文であると言えます。

 一方、「手で触れないでください」という文は「手で」触れることを禁じている文であるとの読みが可能ですので、「それならば足でなら触れてもよいのか」などと反論が返ってきそうです。そのため、美術館などでは「手を触れないでください」という表現が選ばれるのでしょう。



ことばの仕組み(文法) トップへ



日本語Q&A トップへ






JSST

日本語会話力テスト

メルマガ登録

アルク日本語教育公式Facebookページ