番外編

まだまだたくさんある外国人の大疑問

回答:岡本佐智子(北海道文教大学教授)

Q.  若者はなぜ短く省略した日本語を使いたがるのですか。(国籍不明)
A.  日本語は3拍か4拍のことばがリズムの基本です。長いことばは言いづらいので、短く省略し、ことばの省エネ、つまりことばを経済的にするのです。特に若者は短時間で効率よく情報交換することと、ことばに勢いをつけることを好みます。さらに、仲間内だけに通じることばで連帯意識を図るので、短縮語を作って多用する傾向があります。
Q.  日本人を誘ったら「また今度」と言われました。「今度」っていつですか。(国籍不明)
A.  「また今度」は相手の面子(めんつ)に配慮した婉曲(えんきょく)的な断り方ですから、今度はないと思ってください。将来、縁があったら、という意味です。「縁」は巡り合わせですから、次回の確率はかなり低いのです。もし、断りの理由が説明された場合や、代わりの日時の提案があれば、機会を見てもう一度誘ってみてください。
Q.  テレビで共通語は関西弁なのですか。(国籍不明)
A.  地域内の方言はその地域では共通語ですが、日本全国の共通語の規範は「標準語」です。例えば、近畿地方で話されていることばには京都弁や神戸弁などたくさんありますが、近畿地方内で話されている共通のことばは近畿方言、いわゆる関西弁(主に大阪ことば)と呼ばれ、近畿地方で放送されるテレビでは近畿方言が多用され、その地方の共通語として定着していきます。全国放送の番組に頻繁に方言が登場しても、方言は特定地域内の共通語にすぎません。
Q.  「ニホン」と「ニッポン」はどう使い分けるのですか。(国籍不明)
A.  一般に「ニホン」は日本国内での使用や日本の伝統的なことを表すときに使います。一方「ニッポン」は外国と比べたり、国名を強調するときに使われます。例えば、オリンピックでは「ニッポン」ですが、野球の日本シリーズでは「ニホン」です。また、日本語は、戦時中のアジアで同化政策として「ニッポン語」名で強制学習させていたことから、現在では「ニホン語」といっています。
Q.  じゃんけんをするときに、なぜ「最初はグー」と言うのですか。(国籍不明)
A.  「じゃんけん、ポン!」の掛け声では、タイミングが揃(そろ)わず、ばらばらになってしまうので「最初はグー」で始めよう、と言いだしたのがドリフターズというお笑いグループでした。彼らがその方法を、1980年代の超人気テレビ番組「8時だヨ! 全員集合」で放送したことから全国的に広まりました。
Q.  日本の洗濯機はどうしてお湯が出ないのですか。(韓国)
A.  日本の生活用水の約80%は「軟水」です。このため洗濯は冷水でも問題がありません。ところがヨーロッパ、アメリカ、韓国などの水は「硬水」といって、カルシウムやマグネシウムが多く含まれています。硬水での洗濯は、冷水では汚れも落ちにくく、洗剤も溶けにくいことなどからお湯を使っています。洗濯機もドラム式というパワフルなたたき洗いが主流です。
Q.  運動会のときなどに、頭に鉢巻を巻くのはなぜですか。(国籍不明)
A.  勝利や成功に向かって、頑張るぞと気合いを入れるとき、鉢巻をします。鎌倉時代に武士が戦いのときに「烏帽子(えぼし)」が鉢(頭)から落ちないように頭に布を巻きました。それが戦いには欠かせなくなりました。今でもストライキなどで見掛けます。
Q.  日本の幽霊にはなぜ足がないのですか。(国籍不明)
A.  昔の幽霊には足はありましたよ。「牡丹灯篭」のように足音を立てて現れる幽霊の怪談話もあります。幽霊には足がない、というイメージを作りあげたのは、江戸時代に円山応挙という画家が描いた足のない幽霊の絵に始まります。足を描かない幽霊のほうが、恐怖感があることから広がりました。
Q.  日本にはまだ侍はいるのですか。(国籍不明)
A.  西洋に「騎士」がいないように、侍もいません。でも、江戸時代に形成された侍の精神である「武士道」を大切にしている人は少なくありません。特に、礼儀正しく、正直で、質素倹約をし、自分を犠牲にしてでも忠誠を尽くす、金銭よりも名誉を重んじる、などといった価値感は、今も美学とされています。
Q.  サインするとき、名字を丸で囲むのはどうしてですか。(国籍不明)
A.  日本は印鑑(はんこ)社会です。そのため、手書きでも印鑑のように名字に枠をつけることで本人証明をしようとするものです。江戸時代には屋号の一文字を○(まる)で囲んだり、四角の角の部分だけを付けて通称表記していました。マルで囲む表記方法は、秘密を「マル秘」のように、今では特別な意味を持つことばを省略するときに使っています。
Q.  なぜ交通信号の「緑」を「青」というのですか。(国籍不明)
A.  1930年に日本で初めて信号機が設置されたとき、法令では緑色信号だったのですが、新聞が「青」と掲載してしまったことや、色の三原色の、赤・青・黄にあてはめると理解されやすかったために「青」信号が定着してしまいました。1947年には法令でも青信号と呼ぶようになりました。日本語の青を表す範囲は広く、「青りんご」や「青葉」など緑のものも青と呼んでいます。ちなみに現在の信号機は緑ではなく青緑色で点灯前は青になっている…はずです。
Q.  物を贈る時「つまらないもの」と言うのはなぜですか。(韓国)
A.  目上の人に贈り物をするときの謙遜を表すことばです。自分が選んだものが相手も気に入るとは限らないので期待しないように、という前置きの意味もあります。最近は謙遜の意味が消え、ことばだけの社交辞令になっています。代わりに「よろしければ」と言う人も増えています。本当に自信のあるものを贈るときは使われなくなってきました。
Q.  「お先に失礼します」と言うが、なぜ「失礼」なのですか。(中国)
A.  日本の会社のような集団主義的な社会では、目上の人にだけでなく、まだ働いている人がいるのに、自分だけが勝手にその場を離れて帰宅するのは礼を失すると思うからです。このように相手の状態に配慮した「さようなら」の代わりに、何らかの困難な環境にある人には「頑張って」、病気の人には「お大事に」などがあります。いずれも社交辞令の挨拶です。
Q.  日本人はどうして行列好きなのですか。(中国)
A.  行列はレジ、乗り物、トイレ、ATMなど日常生活の至る所にあります。日本では子どものころから集団生活のマナーとして静かに整列し、順番を守ることを学びます。飲食店や娯楽施設などでは行列数が人気の目安です。列の先においしいことや楽しいこと、いいことがあると期待しているので、長い待ち時間にも耐えられます。行列好きといわれるイギリス人も日本人も、最近は待つのが苦手な人が増えているようです。
Q.  日本にはカラスが多いのはなぜですか。(中国)
A.  日本ではすべての野鳥が「保護鳥」になっていました。ところが近年、カラスによる被害が増えはじめたため、狩猟免許のある人なら駆除できるようになりました。しかし、日本人にとっては古くからの童謡「七つの子」が今も歌われ、カラスが身近な野鳥として親しみもあるため、カラスとの共生方法が模索されています。
Q.  ゴールデンウィークは意図的に作られたものなのですか。(韓国)
A.  はい、そのとおりです。「ゴールデンウィーク」という名前は、1951年の五月連休に当時の映画会社が大勢の人に映画を見てもらおうとして作った造語です。その後、60年代~70年代の高度経済成長期には、日本人は働きすぎると世界の国々から非難されました。以来、政府が国民の祝日を増やすようにし、祝日が最も多い大型連休(黄金週間)が生まれました。
Q.  どうしたら忍者になれますか。(南アフリカ)
A.  残念ながら、今では忍者の専門職はなさそうです。隠密特使ではなく、ショーであれば、日光や伊達の「時代村」で、たまに芸能職員募集のオーディションがあるようですから、応募してみるという方法があります。あるいは俳優養成学校に入れば、忍者を演じられるアルバイトがあるかもしれません。運動能力も演技力も自信がないのでしたら、各地の「忍者村」でコスプレしてなりきる手があります。忍術を学びたいのであれば、三重県の伊賀上野や、滋賀県の甲賀で観光協会が毎年「忍者祭り」を催していますから、まず、その忍術学校や忍者道場に参加してみてはどうでしょうか。そこから忍者への道が開けるかもしれません。くれぐれも忍びの術を悪用しないように。あ、それから忍術を教えてくれる先生がイメージと大きくかけ離れていてもがっかりしないように。ニンニン。
Q.  どうして日本人は人間よりもワンちゃんに愛情をそそぎますか。(韓国)
A.  人間よりも愛情が深くなってしまうのは、日本人が生き物を擬人化する傾向が強いことから、特別な存在になってしまうのでしょう。犬は飼い主への服従が絶大で賢く、感情表現が実に素直です。顔を見ただけで尻尾を思いっきり振って喜びを表しますし、声をかければ、愛くるしい瞳で駆け寄ってきます。人とスキンシップすることを好み、人間のように口答えしたり、疑ったりしません。ときには飼い主を心配(しているように見える)してくれます。なによりも、可愛がれば可愛がるほど、その愛情に全身で応えてくれます。このように犬には幼児に近い特性があるので、擬人化されやすい動物の一つです。

日本人は古くから犬に親しみを持ってきました。縄文時代の遺跡からは、丁寧に埋葬された犬の骨が発見されています。しかし、弥生時代から明治時代初期には、犬を食べていた人もいたのではないかとも推察されています。それでも奈良時代には番犬や狩猟犬の育成が始まっていますし、平安時代には貴族の間でペットとして犬を飼うことがブームでした。そのせいか、神社の守護獣も、中国伝来の獅子から、穏やかで優しい顔の狛犬になっています。江戸時代になると徳川綱吉の「生類憐みの令」によって、「お犬さま」として大切に飼われた歴史があります。また、干支に戌年があるだけでなく、犬が多産なので安産の守り神としても信仰されてきました。犬と人間の関係を描いた物語はほとんどが美談であることからも、犬は好意的なイメージで定着していることがわかります。
Q.  自動販売機のコーヒーは夏はどうして冷たいですか。温かいコーヒーも飲みたいですが。(イギリス)
A.  たしかに冬にはホットとコールドの混在だった飲料自販機が、夏になると、すべてコールドに切り替えられることが多いようです。これは日本人が熱いお茶や冷たい麦茶を季節に合わせていた習慣に準じています。

夏はのどの渇きを癒す清涼飲料としての購入目的が大半ですから、消費者ニーズに対応して、コーヒーもコールドとなるようです。そもそもコーヒーを「アイス」にして飲む発想も、自販機で缶コーヒーを販売するのも日本人が工夫した飲み方です。

日本人は年間100億本もの缶コーヒーを飲むそうで、お茶の国の日本人がコーヒー消費国世界第4位にあるのは、自販機による缶コーヒーの消費も大きいといわれています。それほど自販機設置数が多いわけですが、飲料自販機のなかでもコーヒーが最も大きな売り上げ割合を占めています。となると、多数派需要に対応してホットとコールドに切り替えることは販売戦略でしょう。

ちなみにウーロン茶も本家中国ではホットのみでしたが、日本のコールド式が逆輸入されて微糖入りで売られるようになっています。食文化は、その国の人々の嗜好に合わせて取り入れられていきます。コーヒーにこだわる人が増えているので、そのうち、一年中ホットコーヒーも飲める自販機も出てくることでしょう。

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