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回答 水谷信子(明海大学教授)

 13 文章中の「このように」と「そのように」のルールは?

Q
  日本語能力試験1級の生徒さんから、文章中における「これ」と「それ」の使い分けについて聞かれました。「このように」でに「そのように」でもいい時と、どちらかでないといけない時があるようですが、何かルールがあれば教えてください。
 
A
 

 いわゆる「こそあど」については、入門期にものを使ったりして練習するのですが、そのあとはあまり問題にしないという傾向があるようです。ご質問の場合は文章中の場合ということですが、話しことばでも文章の中でも基本的な用法は変らないと思いますので、まず、入門期にどんな指導をしたか思い出してください。

 自分の手元にあるものには「こ」を使いますから、手にもったボールをさして「これは」とか「このボールは」と言いますね。それを相手に渡してしまうと、「それは」「そのボールは」となります。この、相手に帰属するものには「そ」を使うという原則は、話の中や文の中でも同じです。「きのう昔の友達に会いました」という話を聞いた人は「そうですか。その人はどんな人ですか」と聞きます。話を続ける場合には「きのう昔の友達に会いました。その人はお医者さんをしています」というように「そ」で続けます。これは、始めの文で言ったことを、もう相手に渡してしまったものとして「そ」で言及するからです。一方、人を直接引き合わせる時には、自分の手元に属することですから、「こちらは川上さんです」のように「こ」を使います。

 書き言葉的な文でも原則的には同じで、先行する文で述べたことはもう読み手に属するものと考えて「そ」を使いますが、その内容を自分の手元において検討するという姿勢なら「こ」を使います。次の例は最近の新聞の社説で風力発電について論じたものです。

......風力発電の適地は北海道と東北に多い。それなのに北海道電力は「新たな募集は当面しない」、東北電力も「今後は未定」という。こんな調子では、2010年度に風力を昨年度の6割以上にまで普及させようという政府自身の目標達成はおぼつかない......(2004年2月15日朝日新聞[社説])

前の文に密接に関係する場合には「それなのに」と「そ」を使っていますが、問題を手元に引き寄せて検討する姿勢を示すときは「こんな」となります。もし、「そんな調子では」と言ったら、どうなるか、考えてみてください。

 
 

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