IJET-29大阪レポート

「1日中座りっぱなしの人達に、
健康的な良い姿勢を取り戻すミツヴァテクニック」

Posted August 10, 2018
講演日時:6月30日(土)13時~14時

登壇者:岡部俊江 OKABE Toshie

写真:岡部俊江さん

東京都出身。4歳でクラシックバレエを始める。バレエのワークショップへの参加を機に出会ったAmelia Itcush先生、そしてMitzvah Techniqueの開発者であるNehemia先生に感銘を受け、自身も学ぶためカナダに移住。Mitzvahトレーニング講師として、トロントにスタジオを構えプライベートレッスンで教えるかたわら、ジョージブラウンカレッジやトロント大学などでも指導している。最近は、夏季を中心に東京や神戸でインストラクター指導や、ワークショップを開催している。

「Mitzvah Technique」とは、一人ひとり異なる体のクセやパターンを取り除き、心身ともに緊張をほぐしていくエクササイズ。人間は長時間、同じ姿勢を続けていると、筋肉や交感神経が緊張し、肩こりや首、腰の痛みなどトラブルの原因になる。体を鍛える通常のエクササイズとは違い、最終的に子どもの頃の元気な体の感覚を取り戻すのが狙いだ。

1日中座りっぱなし生活が、将来のリスクにつながる

写真:岡部俊江さん

最初に、岡部さんから「1日8時間くらい、座って作業をする方はどれくらいいますか?」という問いかけがあった。会場の参加者のほとんどが手をあげた。人は睡眠時間を除いた1日約16時間を活動時間に充てているが、その大半を現代人は座って過ごしている。とくに翻訳を仕事にしている人はどうしても座る時間が多くなりがちだ。

「8時間座っていると体の中のあらゆるものが滞ります。皆さんはパソコンの前に座っていることが多いですか?首を突き出すようにして画面とにらめっこしていると、重たい頭を支える首が緊張します。緊張すると血流が滞り、脳に酸素が行きづらくなります。神経も圧迫され手や指がしびれることもあるでしょう、血流が滞ると体の末端へ流れにくくなり、繊細な機能である目や耳に異常をきたすことになりかねません。姿勢が悪いので胸も落ちてきます。すると肺活量が落ちます。内臓全体が下に下がり、男性ならヘルニア、女性は便秘の症状を訴える人が増えます」

胸が落ち、腰が前に出た姿勢で膝を曲げた場合、膝に無理な力が加えられ膝を痛める原因にもなる。また股関節が硬いと、膝や足首の関節も固まりがちになるという。

悪い姿勢をやってみせながら解説する岡部さん。心当たりのある参加者たちはそわそわと落ち着かない様子だ。

背骨に優しい、座り方

写真:岡部俊江さん

「このような状態でジョギングをしたり、ジムに通っても、逆に体を痛めることになりかねません」

人の背骨はS字カーブを描いている。座った時に姿勢が悪くなっていくのはごく自然なことだという。しかし、それでは首や肩、腰に負担がかかる。そこで、首や腰の関節の使い方を覚えて背骨をまっすぐに保つようにすると問題は大幅に改善されるという。岡部さんが参加者に促したのが、背骨に優しい座り方。椅子は座面が平らで、背もたれが肩甲骨をカバーしない高さ椅子が理想だそうだ。

まず椅子に浅く座り、頭を下げて背中を丸める。5秒くらいそのままでいると首も背中もリラックスさせる。岡部さんは、まず首だけ起こして前を向かせた姿勢を体験させた。次に、背骨全体をゆっくり伸ばしながら体を起こした姿勢を体験させた。いつも姿勢が悪い人の場合、最初の背中を丸めたまま首だけ起こした姿勢が楽なのだという。

背骨にとって楽な座り方の姿勢とは、腰を前にずらして背もたれに寄りかかる座り方だ。背骨を伸ばす格好でストレッチ効果もあり気持ち良いが、顔を起こそうとするため普段滅多に使わない首の前の筋肉を緊張させることになり、長時間この姿勢を保つのは不可能なのだ。

背中を伸ばし、胸を大きく開くエクササイズ

写真:岡部俊江さん

次に、縮こまって緊張している体を活性化するストレッチが紹介された。背骨を思い切り丸めて思い切り伸ばすストレッチで、背中を柔らかくし体全体をリラックスさせるのだ。

  1. 浅く腰かける。足裏はべったり床につける。
  2. 頭を前の方へ垂らす。腰を倒し背中を丸め、背骨を一番伸ばした状態に。10秒ほどそのままにする。
  3. その姿勢のまま、座骨を椅子の奥までずらしていく。下から背骨を背もたれに寄りかかりながらゆっくり起こし、最後に胸を大きく開く。
  4. 座骨を少し前に滑らせながら、背もたれに寄りかかる。顎を引き目線は水平に。
  5. 1から4までを3回繰り返す。

参考:http://www.betterposture.ca/basic_enter.htm

身体に無理をかけていない動きであるのが実感でき、終わった後に気持ちがいい。

立ち方と、バランスの改善エクササイズ

写真:岡部俊江さん

次は体を手で支えつつ、片足立ちするエクササイズだ。バランスを整えるエクササイズなのだが、以下の3で立ち足側の腰を引き上げるのがポイント。この時、上げている足の骨盤が自然にさらに持ち上がる動きが大事という。

  1. 片手を窓枠などに軽く置き、足は股関節幅でまっすぐ立つ。膝に力を入れない。
  2. 片足の腿をあげて膝を曲げ、足首はリラックスしてぶら下げた状態で、片足立ちになる。
  3. 頭のてっぺんを天井の方向に伸ばし、立ち足側の腰をぐっと上に引き上げる。
  4. 足を変え、同様の動作を繰り返す。上手に立ち足を引き上げられるようになったら、その場で20回程度足踏みをする。

赤ちゃんの姿勢が理想

写真:岡部俊江さん

Mitzvahとはヘブライ語で「自分がした良い行いが自分に返ってくる」という意味だそう。イスラエル出身で、Mitzvah Techniqueの開発者であるNehemia先生が名付けた。先生はシナイ半島で暮らす遊牧民たちの姿勢が良く、腰痛に悩む人もいないことに気づいた。原因を探るうち、遊牧生活がゆえにほぼ毎日、決まった椅子やベッドで眠らないためだということがわかってきた。彼らの生活をヒントに「姿勢を変える」こと、特に「歩く」時の骨盤の動きと連動する動作が、全身の余計な緊張を緩めるメカニズムを持っているとした。これをMitzvahメカニズムと名付け、エクササイズに体系化したのがMitzvah Techniqueだ。

岡部さんは4歳からクラシックバレエを始め、すでに11歳の頃に足首に激痛が走るなどの症状をかかえていた。当時通っていた鍼治療の先生にバレエの動きを見せたところ「痛むのは当たり前」と言われた。初めて悩みをストレートに受け止めてもらえたことで心の負担が軽くなり、正しいトレーニング法を模索するようになった。同時に身体構造に関心を持つようなったという。

「軸のしっかりしたコアのある体が大切です。背もたれがないのに背筋が伸び、背骨の上に頭がのった、赤ちゃんが座った姿が理想です」と解説した上で、岡部さんは「体を活性化させるために、まず頻繁に姿勢を変えることが大切です。まず毎日の姿勢を意識してみましょう」と訴えた。

Mitzvah Technique Downtown Studio
http://www.betterposture.ca/

カナダの日系テレビ放送で紹介された際の映像