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医薬翻訳教育関係者に聞く 医薬翻訳への道を拓く「考える力」と「書く力」
安定した需要がある医薬翻訳の仕事。ゼロから目指すなら、まずはスクールに通って専門的な知識とスキルを学ぶ必要がある。何を、どれくらい勉強すれば道が拓けるのか。そこで求められる資質とは何か? 翻訳者として長年活躍し、治験翻訳講座の講師を務める有馬貫志先生にお話を伺った。
 

「文系出身、翻訳経験ナシ」でも道は拓ける!
右肩上がりの成長を続ける医薬翻訳。これを支えているのが治験をはじめとする製剤開発関連のドキュメントの翻訳だ。アルパ・リエゾンは、この分野に特化した翻訳学校。学習領域を明確に示すため『治験翻訳講座』とネーミングしたのは代表の有馬貫志先生である。

治験関連の文書は、基礎研究段階のデータから治験後の承認申請書類まで製剤開発のプロセス全体と深く関わっている。治験翻訳講座は、そのすべてを網羅。受講生には製薬会社や治験関連企業の社員のほか、医療関係者もいる。

「そういう方が全体の約4割。医薬以外の分野で翻訳の仕事をしている受講生の割合もほぼ同じ。残る2割は翻訳も医薬の勉強も初めてという方々です」(有馬先生)。高度に専門的な知識とスキルが必要となる仕事だが、「まったくのゼロからでも心配は要りません。医薬や健康に興味があり、この分野で仕事がしたいという強い気持ちがあれば動機としては十分です」(有馬先生)。

大切なのは「論理的に考え、簡潔に表現する力」


有馬貫志先生
アルパ・リエゾン株式会社代表

治験の文書をきちんと理解するには、やはり治験の手順や専門用語など「背景知識は不可欠。でも,その部分は学習でカバーできます。資質として求められるのは,考える力と書く力」と、有馬先生は語る。

考える力は知的作業の基盤となるもの。翻訳は、考える力をバックボーンに「知識を集め、書いてあることを論理的に理解・整理し、誰が読んでもわかるように別の言語で表現する仕事」(有馬先生)だ。

翻訳は文を作る仕事だから、書く力も必須だ。私たちが普段使っている自然言語はたくさんの"あやふやさ"を許容しているが、治験翻訳ではあやふやさを徹底して排除し、読み手にクリアに伝わるよう簡潔に書く力が求められる。

「本当にクリアに理解できていないと簡潔に書くことはできません。書く力も、読む力や背景知識も、論理的に考える力に支えられている」と、有馬先生。

講義は、単に知識やスキルを教えるのではなく、訳した経緯や意図を受講生に訊ねながら考える練習をすることで実践力を培う場となっている。自分の考えを整理して伝える練習の一環としてディスカッションも重視。世代やバックグラウンドの異なる人とコミュニケーションすることで、多様な意見や語彙・表現も吸収できる。

「治験」特有の訳語
一般的な意味と治験で使われる場合とで意味・訳語が異なる単語がたくさんある。 その一例を、有馬先生にいくつか教えていただいた。
  1. Control group → 対照群
  2. Incidence → 発現率
  3. Investigator → 治験責任医師
  4. Investigator's Brochure → 治験薬概要書
  5. Protocol → 治験実施計画書
  6. Serious Adverse Event → 重篤な有害事象
  7. Sponsor → 治験依頼者
  8. Study center → 治験実施医療機関
  9. Study visit → 来院日
  10. Wash out → 休薬

修了生の多くが製薬会社や翻訳会社で活躍

医薬の世界に興味があり、調べたり論理的に考える作業を厭わなければ「知識ゼロからの受講でも大丈夫。考える力に裏打ちされた表現力があれば必ず伸びます」(有馬先生)。受講生の年齢は30~50代が中心だが70代の方も。

2005年の開講以来、受講生は年々増え続け、修了者の多くが製薬会社や翻訳会社で活躍している。もちろん、翻訳者として独立して仕事を受けている人も。「仕事獲得をバックアップするため翻訳会社や人材派遣会社、人材紹介会社との連携も強化していますが、幸いなことに仕事は大量にある。あとは実力次第」と、有馬先生。

医薬の世界は日進月歩。プロになった後も勉強は続く。「終わりがないという意味でも、やりがいがある仕事です」(有馬先生)。

アルパ・リエゾン株式会社代表

アルパ・リエゾン株式会社代表

東京校で12コース、大阪校で10コースを開講。実践、上級レベルの講座では、実際に仕事で扱う治験文書を教材に使用。医薬知識を含めた翻訳技術を総合的・体系的に学ぶことができる。開講時期は春と秋の年2回。

http://www.chiken-honyaku.com/

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