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現役通訳者のリレー・コラム

第一線で活躍する現役の通訳者の方に、この仕事を目指したきっかけや日々の通訳業で感じる思い、
仕事へのポリシーなど、リレー形式で書き綴っていただきます。

【第11回】通訳者になる方法

2020年の東京オリンピック開催が決まったこともあり、通訳という仕事に対する関心が高まっているようです。私が教えている大学でも、学生から「先生、どうしたら通訳になれますか?」という質問をよく受けますし、インターネットの掲示板などでも、似たような投稿が増えている気がします。このような質問を投げかけてくる若者の気持ちは、よくわかります。なぜなら、「通訳者になる方法」は、一通りではないからです。

通訳者になる方法

私自身、通訳という仕事に興味を持ちはじめたころは、一体どうやったらなれるのか、見当もつきませんでした。医者や弁護士など、大学で専門を学んで、試験に合格するという明確な「なり方」が広く知られている職業と違い、通訳者になるのに唯一絶対の道はありません。通訳案内士(通称:通訳ガイド)を除き、国家資格も存在しません。

では、どうしたら通訳者になれるのか。このシンプルな問いに答えることは、進路に悩む若者だけでなく、通訳者を将来のキャリアの一つとして考えている多くの人にとっても、役に立つのではないかと考えました。最新の動向を探るため、各分野で活躍する10人の通訳者に実際に聞いてみることにしました。その詳細は、近著「通訳になりたい!ゼロからめざせる10の道」(岩波ジュニア新書)にまとめましたが、ここでは、いくつかのパターンを紹介したいと思います。

通訳学校に通う

通訳学校に通う

まずは自分の例から紹介します。私は通訳者になるまえ、新聞社で記者として働いていました。仕事は充実していましたが、30代になり、長い将来を考えた時に、40代で多くが取材現場を離れる新聞社の仕事が、自分にとって一番幸せな働き方なのか、疑問を感じるようになりました。そこで、頭の体操として、自分に新聞記者以外にどんな仕事があるのか、探してみることにしました。本や雑誌を読み、インターネットで情報を収集するなかで、選択肢の一つとして浮上したのが、通訳という仕事でした。

通訳に関心がある皆さんの多くが経験していると思うのですが、通訳者になる方法について書かれた記事のほとんどが、もっとも一般的な方法として、民間の通訳学校に通うことを挙げています。実際に私も、会社帰りに週に2回、サイマル・アカデミーに通うところからはじめ、「卒業オーディション」と呼ばれる選考を経て、サイマル・インターナショナルの専属通訳者になりました。プロになってから現場でお会いした通訳者の多くも、サイマルやインタースクール、ISSなど、通訳エージェントが運営する通訳学校の卒業生でした。

今回、本を書くにあたってインタビューをさせていただいた10人の中でも、通訳学校で学んだことがある人が半数以上でした。例えば、NHKなどで活躍されている放送通訳者の方は、最初に通った通訳学校で、掲示板に張ってあった受講生向けの仕事に手を挙げたのが、はじめてお金をいただいた通訳体験だったそうです。社内通訳者としてビジネスの現場で働いている別の通訳者の方は、通訳学校を卒業後、その学校を運営していた通訳エージェントに登録し、派遣の仕事を紹介してもらって通訳としての第一歩を踏み出したと語っていました。いまだにこの方法は、通訳になるための一つの「王道」と言えます。

得意分野を生かす

通訳のジャンルによっては、その分野に関連のある経験を積んで、そののちに通訳者になるというパターンもあります。ある中国生まれの医療通訳者の方は、もともとは大学で歯学を学んだ歯科医でした。日本に留学して、日本人と結婚し、子宝に恵まれたため、一時は働くことから遠ざかっていましたが、日本語と中国語の能力と、医療の基礎知識があったおかげで、子どもが手を離れたあとに医療通訳者としての道が開けたそうです。

松下佳世さん
Profile/

フリーランス会議通訳者。朝日新聞のニューヨーク特派員(国連担当)などを務めたのち、サイマル・インターナショナルの専属通訳者に。通訳の仕事と並行して、立教大学大学院異文化コミュニケーション研究科で通訳翻訳研究を学び、博士号を取得。

現在は国際基督教大学と立教大学で学生を指導する傍ら、サイマル・アカデミーのインターネット講座でプロを目指す通訳者の育成にもあたっている。通訳者としての得意分野は、国際政治・外交、教育、ならびにメディア関係全般。

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